現代社会では、仕事や人間関係などにより、うつ病やストレス、不安を抱える方が増えています。このような目に見えない心の問題をより良い状態に導いていくのが、心理カウンセラーという職業です。
心の問題は、職場や学校、家庭といったさまざまなシーンで起こる可能性があり、心理カウンセラーの活躍の場は広くなっています。
そこでこの記事では、心理カウンセラーにはどのような業種や職種があるのかについて解説するとともに、それぞれの活躍の場や仕事内容についても紹介します。心理カウンセラーの仕事について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
心理カウンセラーの業種は何がある?
心理カウンセラーと聞くと、「心の病気を治す専門家」といったイメージがありますが、カウンセラーの活躍の場は大きく広がってきており、さまざまな分野で活躍しています。
まずは、心理カウンセラーが活躍する分野を業種別に紹介します。
医療分野
医療分野で活躍する心理カウンセラーは、精神科や心療内科だけでなく、内科や小児科などの患者とも関わる機会が多いです。医師や看護師と連携しながら、患者の心理的なケアやサポートを行います。
また、患者本人に限らず、患者の家族の心理的なサポートや相談を受けるのも仕事の一つです。
子どもから高齢者まで、幅広い年齢に対応する点が、医療分野の心理カウンセラーの特徴といえるでしょう。
教育分野
教育分野で活躍する心理カウンセラーは、学校や教育センターなどに在籍しています。
「スクールカウンセラー」とも呼ばれていて、基本的には学校の相談室といった場所でカウンセリングを行います。
スクールカウンセラーは主に、いじめや将来への不安、友達や異性との関わり方など、心の問題を抱えた子どもたちと関わっていきます。
また、医療分野のカウンセラー同様、子どものみならず、保護者や家族と関わる機会も少なくありません。必要に応じて、保護者や教師にも働きかけ、子どもの心のケアをサポートします。
産業分野
産業分野のカウンセラーは、「産業カウンセラー」とも呼ばれており、職場の人間関係やパワハラ、セクハラ、仕事の負荷など、企業で働く従業員が抱えている悩みに対してサポートします。
企業内にある相談室などに在籍し、仕事や人間関係に悩む方の話を聞き取り、心のケアを行います。
また、産業分野のカウンセラーの中には「キャリアカウンセラー」と呼ばれる将来のキャリアに関する悩みに対応する職種もあります。
福祉分野
福祉分野で活躍するカウンセラーは、児童福祉施設(児童養護施設)、児童相談所、高齢者施設、保健所、精神保健福祉センターなどの場所で活躍するカウンセラーです。
児童福祉施設や児童相談所では、健全な生活ができない子どもの心のケアを行います。
また、高齢者施設で働くカウンセラーの場合は、高齢者の心のケアや介護をする家族の相談に対応します。
「相談員」と呼ばれることもあり、対象は高齢者やその家族から子どもまで、幅広いことも特徴です。
司法分野
司法分野の心理カウンセラーは、少年鑑別所や少年院、刑務所、警察署などで、事件や事故を起こしてしまった方の心のケアを行います。
非行や犯罪などのトラブルを起こした方やその家族に話を聞き、心のケアとともに社会復帰をサポートしていきます。
また、司法分野のカウンセラーは加害者だけでなく、事件や事故に巻き込まれてしまった被害者、もしくはその家族のサポートを行うこともあります。
その他
公的な機関や企業などで働くカウンセラー以外にも、個人で開業しているカウンセラーも多くいます。
個人の場合は、自宅や外部のカウンセリングルームなどでカウンセリングを行うほか、オンラインでカウンセリングを行っている方もいます。
医療や教育現場で働く心理カウンセラーよりも自由度が高く、自分の好きな時間にカウンセリングを行える一方で、自分でクライアント獲得のために集客が必要となり、経費や収支の計算なども自分でしなければならないというデメリットがあります。
関連記事:心理カウンセラーになるには?資格、向いている人を解説
カウンセラーの主な職種8選
次に、カウンセラーの主な職種について紹介します。カウンセラーの仕事は種類が豊富なため、ここでは8種類に分けて解説します。
公認心理士
公認心理士は、心理学に関しての専門家であり、専門的知識と技術を持って、心の問題や病を抱えている方へのアドバイスや指導を行う仕事です。
保健医療や福祉、教育、司法など、幅広い分野で活躍が可能です。
2015年9月に公認心理師法が成立し、2017年9月に施行されたことにより、公認心理士は、国内で初めて心理職の国家資格として誕生しました。
医療機関や学校などで心理カウンセラーとして働くためには、公認心理士の資格が必須なケースも多いため、公認心理士の資格を取得しておくとさまざまな分野での活躍が期待できます。
精神科医
精神科医は、精神的に障害を負ってしまっている方や、精神疾患を患っている方の治療を専門的に行う仕事です。
精神科医はカウンセラーとは違い、「医師免許」が必要なため、心の病を患う方に対して積極的に治療し、薬を処方できるという大きな特徴があります。
そのため、精神疾患のみならず、アルコール依存症や薬物依存症といった方の治療サポートも可能です。
精神科医は、精神病院や総合病院の精神科、心理内科クリニックなどで活躍できます。中には、職場で心の不調を抱える方のために、企業の産業医として働ける場合もあります。
精神保健福祉士
精神保健福祉は、心の病を抱える方やその本人を支える家族の相談を受け、社会復帰や社会参加のためのアドバイスやサポート、手助けを行う仕事です。1995年制定の「精神保健福祉法」の施行に伴って誕生した国家資格です。
問題や課題を抱える患者さんのために、日常生活を快適に送るためにはどうすればいいか、仕事などの社会復帰が可能かなどについて考え支援を行います。
精神保健福祉士は、精神科病院や障害者福祉施設、保健所、精神保健福祉センターなどで活躍できます。
スクールカウンセラー
スクールカウンセラーは、子どもの心の悩みや人間関係、将来、進路などの相談を聞き、精神的な負担を軽減させるために心のケアを行います。教員や保護者との連携が必要なケースもあります。
スクールカウンセラーになるために特別な資格は必要ありませんが、臨床心理士や精神科医がスクールカウンセラーとして活躍するケースが多いです。
スクールカウンセラーは、小学校や中学校、高校といった教育機関で主に活躍しています。
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、職場で働く従業員の仕事や人間関係の悩みを聞き、アドバイスや職場復帰の支援などを行う仕事です。
「職場の悩み」に特化したカウンセラーのため、職場で発生するさまざまな悩みに幅広く対応する必要があります。
産業カウンセラーとして働くために必須な資格はありませんが、精神科医や臨床心理士が産業カウンセラーとして在籍しているケースもあります。
また、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する「産業カウンセラー」という民間資格を取得するという方法もあります。
民間企業や公的機関、医療機関、スポーツクラブなど、幅広い場所で活躍できます。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、自分の「キャリア」に悩みを抱えている方や、キャリアに関して問題を抱えている方に専門的なカウンセリングを行う仕事です。
産業カウンセラーとは違い、キャリアに関する悩みに特化した仕事となります。2016年からキャリアコンサルタントは国家資格と定められました。
キャリアコンサルタントは、クライアントが希望する職業選択やキャリア開発をサポートし、より良い仕事を見つけるための支援を行います。
キャリアコンサルタントの活躍の場は、企業や教育関連、公的就業支援機関、大学、人材派遣会社など、さまざまな分野で必要とされています。
臨床心理士
臨床心理士は、臨床心理学に基づいた知識や技術により、人々のさまざまな心の悩みや問題の解決を支援する心の専門家です。
臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会認定の民間資格となっています。医療や福祉、教育、司法、産業など幅広い分野で活躍ができます。
また、公認心理士と同様に、医療機関や学校などで働くには、臨床心理士の資格がなければ働けないケースも多いため、臨床心理士の資格を取得していると、カウンセラーとして活躍できる場が広がります。
法務技官(矯正心理専門職)
法務技官(矯正心理専門職)は、心理学の専門家として、犯罪を犯した人や非行に走った少年の心のケアを行う仕事です。法務省採用の国家公務員の一種となっています。
法務技官(矯正心理専門職)の活躍の場は、鑑別所や少年院、刑事施設などです。少年院や鑑別所で働く場合は、入所した子どもたちに対して面接や心理検査などを行い、どのような性格か、更生の余地はあるかなどを確認します。
また、それぞれの少年に応じた更生プランを提案するのも法務技官の重要な仕事です。
矯正心理専門職になるには、国家公務員試験の「法務省専門職員(人間科学)採用試験」を受験し、合格する必要があります。
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カウンセラーの職種や活躍シーンは幅広い
カウンセラーの業種やカウンセラーのさまざまな職種について紹介しました。
心理カウンセラーとして活躍できる場所は多く、病院や企業、そして学校や福祉の現場など、さまざまな場所で働くことができます。
また、子どもから高齢者まで、幅広い年齢の方の心のケアをしていく点も大きな特徴です。心理カウンセラーを目指している方は、自分がどの領域で仕事をしたいのかを考え、自分の希望にあった職種を目指しましょう。