副業が推進され始めている昨今、本業を持ちながら自分の会社を設立する方が増えてきました。しかし、法人化するメリット・デメリットが分からないことから、いつまでも手続きを進められない方が少なくないのです。
そこで本記事では、副業を法人化するメリット・デメリットに加えて、やり方と目安についても解説します。いざ稼ぎが大きくなった時に迷わず進められるよう、ぜひ参考にしてください。
目次
副業の法人化とは?
まず大前提として、副業の法人化とは「本業以外に取り組んでいる仕事で会社を設立する行為」を指します。
したがって、個人事業主やフリーランスは法人化に当てはまらず、ただクラウドソーシングで報酬を得ただけでも法人にはなりません。
正式に登記しない限り「法人」には当てはまらないので、混同しないようにしましょう。
副業の法人化はばれないわけではない
副業の法人化は、役員報酬を家族に支払うなどすれば、本業にばれないと考える方も少なくありません。
しかし、以下の理由から完全に発覚しないわけではないため、「ばれない」と考えるのはやや危険といえるでしょう。
- 自分でばらしてしまう
- SNSや噂話で発覚
- 登記情報を見られた
もし副業規定をもっと知りたい方は、以下の記事もチェックすると良いでしょう。
関連記事:副業の規定とは?就業規則と法律の関係、懲戒について解説
副業を法人化するタイミング
副業からの法人化に適したタイミングはいくつかあります。
節税効果を最大限に高めるためにも、ぜひ参考にしてください。
副業の利益が600万円前後を超えた
個人事業主と法人の税率は以下のように異なっており、概ね600万円前後で法人の方が税金が安くなります。
- 個人事業主(所得税):税率5%~45%
- 法人(法人税):一律23.2%
最大で倍近い差が発生するので、利益が500万円を超えたあたりから検討し始めると良いですよ。
課税売上高が1,000万円を超えた
課税売上高が1,000万円を超えた時点で消費税が発生し、より多くの税金を支払わなければなりません。しかし、法人化することで2年間の消費税が免除されるため、一つの目安とされています。
ただし、そもそも600万円前後で法人化した方が節税になるので、実際にこのタイミングで切り替える方はそこまで多くないかもしれません。
副業で社会的信用を付けたいとき
節税効果は関係なく、副業での社会的信用を付けたい時に検討する方もいます。確かに、法人化した方が事業融資を受けやすくなり、大手企業からも相手にされやすくなるでしょう。
ただし、あまり稼いでいないうちから法人化すると、税金が大幅に上がってしまうので、基本的には600万円前後を稼げるまで待つのがおすすめ。あまり早とちりせず計画的に動いてくださいね。
副業を法人化するメリット
副業の法人化には、以下のようなメリットがあります。
- 消費税が2年間免除される
- 経費計上できる項目が増える
- 給与所得控除の対象になる
- 社会的信用が上がる
副業法人化を最大限活用するためにも、ぜひ参考にしてください。
消費税が2年間免除される
個人事業主から法人化した場合、2年間にわたって消費税が免除されます。近年は税率が10%にまで上がっており、売上が大きい方ほどメリットが得られるでしょう。
ただし、3年目以降は通常の税率がかかるので、中長期で考慮して本当に節税効果が得られるかを事前に試算しておいてください。
経費計上できる項目が増える
副業を法人化すれば、経費計上できる項目が増えてより節税効果が得られます。
具体的に、個人事業主では福利厚生関係の費用は計上できませんが、法人なら可能。その分経理業務は増えてしまうものの、法人化する上ではわすれず利用しておきたいメリットです。
給与所得控除の対象になる
法人化することで、会社から得る役員報酬を給与所得控除できるようになります。
さらに、家族へ支払った給与もそのまま所得分として申告が可能。上手く活かせば大幅に住民税を抑えられるでしょう。
個人事業主では、青色申告しなければならないので、そんな手間がかからないのも大きな魅力です。
社会的信用が上がる
法人化は社会的信用が上がるため、銀行融資だけでなく営業活動や人材雇用すべてに好影響を与えます。
「法人化してるなら仕事を頼んでもしっかりやってくれるだろう」
「働くなら法人化してないと安心できない」
上記のような考えを持つ個人・企業は多いので、シンプルに事業を拡大させたい時にも検討したい手段といえるでしょう。
副業を法人化するデメリット
ここからは、副業を法人化するデメリットについても見ていきましょう。
- 法人化の費用がかかる
- 赤字でも税金が発生する
- 決算関連処理が煩雑化する
いずれも重要なポイントなので、ぜひ参考にしてください。
法人化の費用がかかる
法人には大きく分けて2つの種類がありますが、いずれも法人化する際に費用がかかるデメリットがあります。
- 株式会社:約25万円
- 合同会社:約10万円
*資本金は別途
個人事業主のままなら当然発生しない出費なだけに、法人化を躊躇してしまう方も多いでしょう。しかし、長期的に見れば高い節税効果を発揮するので、目先の出費ばかりに囚われず考えてみてください。
赤字でも税金が発生する
法人住民税は資本金額に応じて課税されるため、個人事業主と違って赤字でも税金を支払わなければなりません。
法人になったからといって必ず稼げるわけではないので、常に注意しておくべきデメリットといえるでしょう。
決算関連処理が煩雑化す
ただでさえ億劫に感じる決算関連処理ですが、法人化すればさらに大きな労力が必要となります。
会社法によって定められた決算処理を行わなければならず、税理士などに外注すればその分の費用がかかるでしょう。
副業を法人化する手順
ここからは、副業を法人化する手順を見ていきましょう。
実際、手続きするときに迷わないためにも、ぜひ参考にしてください。
社名や印鑑を作成する
まずは会社の商号(社名)を作成し、今後の手続きに備えて社印も作成しましょう。
具体的には、代表印・角印・銀行印の3つを揃えておけばOK。商号の策定時は会社法と不正競争防止法にだけ注意してください。
定款を作る
定款は、法人の原則を書き記したものであり、法人化する上では必ず必要となります。
最近はインターネット上にさまざまなテンプレが用意されているので、ただ法人化するだけなら比較的簡単に作成できるでしょう。
無事に定款が作成できたら、法務局で「定款の認証」を受けてください。
資本金を払う
書類関連の準備が整ったら、金融機関に資本金を払いましょう。本格的に事業を行いたい場合、最低でも100万円は用意しておきたいところですが、予算と相談しながら無理のない範囲で決めてください。
登記申請する
登記に必要な書類を揃えたら、窓口かオンラインで会社設立登記を行いましょう。
- 登記申請書類
- 定款
- 登録免許税の収入印紙
- 発起人の決定書
- 取締役の就任承諾書
- 代表取締役社長の就任承諾書 など
- 資本金の払い込み証明書類
- 印鑑届出書
- 登記事項を保存したCD-R
窓口の場合、資本金の払い込みから2週間以内に手続きする必要があり、オンライン申請は商業法人登記のみとなります。
それぞれの特徴を押さえて使い分けましょう。
税務署へ届け出る
会社の設立が完了した後は、税務署へも忘れずに届け出なければなりません。「法人設立届出書」と「青色申告の承認申請書」を準備して提出しましょう。
ただし、法人設立届出書は会社設立から起算して2ヵ月以内に提出する必要があり、青色申告の承認申請書も期限が定められています。
書類ごとの規定を把握して、不備のないようにしてください。
副業を法人化して少しでも利益を残そう
本記事では、副業を法人化するメリット・デメリットや法人化の手順について解説してきました。
副業を法人化すると税率が一律になり、個人事業主より節税効果があります。社会的信頼の獲得にも繋がるため、事業拡大においても役立つでしょう。
ただし、法人化には費用がかかり、決算関連処理も煩雑になりがち。実際の手続きで困らぬよう、あらかじめ税理士などに相談しておくのがおすすめです。