近年、多くの企業が副業を解禁していることから、副業を始める方が増えています。
中には、副業で個人事業主になろうと考えている方も少なくありません。
そこでこの記事では、副業時に個人事業主になるメリット・デメリット、個人事業主になれる仕事の例や、よくある質問について詳しく解説します。
個人事業主になるかどうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
副業で個人事業主になるとは
会社員として働きながら、副業で個人事業主として活動することは可能です。ここではまず、副業で「個人事業主になる」とはどのようなことなのかについて解説します。
副業とは
副業とは、本業以外で行う仕事のことを指します。兼業やサイドビジネスとも呼ばれていて、本業以外の会社でアルバイトとして働いたり、在宅で仕事を受注したりする方法などがあります。
個人事業主とは
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で何らかの事業を営んでいる方のことを指します。企業に雇われるのではなく、業務委託などで受け取った収入や不動産収入などが事業収入となります。
税務署に「開業届」を出すことで、会社員でも個人事業主として登録できますが、副業をする方全員が「開業届」を出して個人事業主になる必要はありません。
また、いろいろな企業と契約をしながら仕事をする方を「フリーランス」と呼ぶこともありますが、フリーランスも個人事業主の一種です。
副業として個人事業主になれる仕事の例
個人事業主として仕事ができる副業には、さまざまな種類があります。ここでは、代表的な副業について紹介します。
物販
個人で行う物販とは、一般的に「せどり」などで利益を得る方法を指します。せどりとは、商品を安く仕入れて高く売ることで利益を得るビジネスです。フリマアプリやネットオークションを使うことで、誰でも簡単にできるという魅力があります。
ただし、多くの利益を狙うためには、流行などを先読みし、今後値上がりする商品を事前に仕入れておくスキルが必要です。
また、商品を仕入れても買い手が見つからない場合、在庫を多く抱えてしまうというリスクがあります。
海外輸出
海外輸出とは、物販の売り先を海外に絞って、個人輸出により利益を得る方法です。特に日本でしか購入できない商品は海外からの人気が高く、利益を得やすいというメリットがあります。
顧客が全世界に広がるため顧客の幅が増えますが、為替変動の影響を受けやすいといったデメリットがあります。
また、英語などでのやり取りが必須なことや、配送トラブルが起きやすいといった注意点もあるため、始める前にしっかりとした下調べが必要です。
ライティング
ライティングとは、クラウドソーシングサイトなどを活用して、記事を執筆することで収入を得る方法です。
ライティングはパソコンさえあればすぐに始められ、資格も必要ないため、副業初心者に人気の職業となっています。
最初は稼げないというデメリットがある半面、専門知識をもつライター、SEOやセールスライティングなどのスキルがあるライターであれば、高単価な案件を依頼されるようになります。
アフィリエイト
アフィリエイトとは、ブログやWebサイトに載せた商品の広告リンクから読者が商品を購入することで報酬を得られるものです。
ブログに商品の紹介記事を掲載し、その商品を欲しいと思った読者が掲載リンクから商品を購入すれば、報酬がブログ運営者に入る仕組みとなっています。
運営するブログやWebサイトが人気になり、多くの読者が商品リンクから商品を購入すれば、自分自身は何もせずとも報酬を得られる仕組みができあがります。
ただし、アフィリエイトで副業としてまとまった報酬を得ることは簡単ではなく、知識や経験、技術が必要です。
宅配
近頃はデリバリーや宅配の需要が高まっています。
そのため、フードデリバリーの宅配員や、軽貨物の宅配ドライバーも個人事業主として稼げる副業の一つです。
フードデリバリー配達業者と契約を結んでデリバリーの配達員になる方法や、運送会社と契約をしてトラックで配送するドライバーになる方法などがあります。
コーチング
コーチングはビジネス・教育・スポーツなど幅広い場面で活用されており、コーチングの資格を保有している方やスキルがある方は、副業として稼ぐことも可能です。
コーチングはスキルさえあれば、個人事業主としていつでもどこでも仕事を始められるというメリットがあります。
ただし、副業として稼ぐためにはコーチングの経験やスキルが必須となるため、コーチングスクールに通ったり、資格取得をしたりするための費用がかかります。
個人事業主として副業をするメリット
副業をしても必ず個人事業主になる必要はありませんが、個人事業主として副業を行うことにはどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、個人事業主として副業をする具体的なメリットを紹介します。
独立や起業の予習ができる
個人事業主として副業を始めることで、将来的な独立や起業の予習が可能です。
個人でのお金の稼ぎ方や仕事の受注方法・交渉の仕方など、会社員の経験だけでは身につかないスキルが得られます。
確定申告や帳簿をつけるなどの事務作業も一通り経験できるので、独立や起業をしたときにも落ち着いて対応できます。
必要経費を計上できる
個人事業主として副業を行うと、副業にかかった費用を経費として計上できます。事業のために購入した備品や会議費、勉強のために要した書籍の購入代金なども経費にすることが可能です。
税金は収入から経費を引いた所得に対してかかるため、経費として計上すれば節税にもつながります。
税金も自分で計算する必要があるため、税金の仕組みを理解できるというメリットもあるでしょう。
青色申告で最大65万円の特別控除を受けられる
青色申告は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得がある個人事業主であれば申請できます。
また、青色申告特別控除とは、収入から経費を引いた所得から、さらに最大65万円を控除できる制度のことです。
所得額を減らすことができれば、住民税なども抑えられるため、節税効果は大きなものとなります。
ただし、65万円の控除を得るには、複式簿記で記帳している、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存のいずれかを行うなどの条件を満たす必要があります。
また、注意点として、2022年8月1日に国税庁が公表した「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正により、原則として副業での年収が300万円以下であれば「雑所得」に分類される予定となることが発表されました。
この改正案が実現された後は、副業の年収が300万円以下の場合は事業所得として申告できず、青色申告控除が使えなくなることになるため、今後の流れを注意して見守る必要があるでしょう。
関連記事:副業で青色申告をしたい!やり方やできない条件、メリットを解説
副業の損失や赤字の繰り越しが可能
副業収入を青色申告で申告する場合、赤字の繰り越しができます。
「赤字を繰り越す」とは翌年以降に黒字になって所得が発生したときに、その金額から損失分を差し引けるということです。
そのため、赤字になった年の翌年は、黒字になったとしても赤字が出た分だけ節税ができるのです。赤字は最長3年以内であれば、黒字が出たときに相殺可能です。
ただし、先にも紹介した「所得税基本通達の制定について」の一部改正案が実現すると、副業収入が300万円以下の場合は原則「事業所得」として認められず、青色申告が利用できなくなる可能性があるため、注意が必要です。
副業と本業の所得を損益通算できる
「事業所得」として副業収入を申告する場合、事業所得の赤字と本業の所得の黒字を相殺することが可能です。これを損益通算といいます。
例えば、事業所得が10万円の赤字、その他に給与所得が50万円ある場合は、相殺した40万円に税金がかかることになります。
3つ以上の所得がある場合には、事業所得などの赤字を他のどの所得の黒字と相殺するか、順番が決まっています。
相殺する順番は少し複雑なため、3つ以上の所得がある場合には、税理士などの専門家に相談してみてください。
家族へ給料を払った場合は経費にできる
「事業所得」として副業収入を青色申告する場合、副業を手伝う家族に対して支払った給与を経費にできます。
1人の所得を増やすよりも、所得を分散させたほうが節税につながります。ただし、実際に働いていない家族に対して給与を支払うことは認められないため注意してください。
個人事業主として副業をするデメリット
個人事業主として副業をする場合、さまざまなメリットがある一方、知っておきたいデメリットも存在します。
青色申告の処理は複雑で手間や時間がかかる
「開業届」を出し、「事業所得」として青色申告すると、税金面で多くのメリットがあります。
ただし、青色申告には複式簿記の記帳など複雑な事務手続きが必要です。簿記や会計を学んでいない方にとっては大変な作業といえます。
自分で青色申告をする自信がない方は、申告に必要な書類を比較的簡単に作成できる専用サービスを使うと良いでしょう。
失業保険を受給できない
通常、会社員は失業した場合に失業保険を受給できます。ただし、個人事業主の場合は失業保険がもらえません。
なぜなら、個人事業主になっているということは「別の仕事をしている」という扱いとなり失業の状態とはみなされません。
個人事業主としての収入の多い少ないにかかわらず、個人事業主である以上は仕事をしていることになるため、失業保険は支給されません。
自分の時間が減る場合がある
本業の他に副業をすることで、当然ですが自分の時間がそれだけ削られてしまいます。日中は本業で働き、夜や休日で副業をする生活はハードです。
特に、個人事業主としてまとまった収入がある場合は、そのぶん副業にかける時間が増えてしまうでしょう。副業によって体調を崩して本業に影響しないように、自分でコントロールをしながら仕事をする必要があります。
副業と個人事業主についてよくある質問
それでは最後に、副業と個人事業主についてよくある質問と解答を紹介します。個人事業主として副業することを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
副業時に個人事業主になる方法は?
会社員であっても「開業届」を税務署に出すことで個人事業主になれます。
また、開業届の他に、青色申告をする場合は「青色申告承認申請書」や、家族を従業員にしたい場合は「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」などの提出も必要です。
副業時に個人事業主になった場合の確定申告は必要?
個人事業主になった・ならないにかかわらず、副業の所得が20万円を超えれば確定申告が必要です。
所得は「収入」から「必要経費」を差し引いた金額のため、年間収入50万円・経費40万円であれば所得10万円となり、確定申告は不要です。
関連記事:副業の確定申告はいくらから?やり方、よくある質問を徹底解説
確定申告をすると本業の会社に副業がバレる?
副業が会社にバレる要因は、住民税の徴収です。確定申告の際に所得税は自分で納付しますが、住民税は原則会社が徴収します。
同水準の年収の社員よりも住民税の徴収額が多ければ、会社側で異変に気づき、副業がバレることがあります。
対策として、確定申告の際に「住民税を自分で納付」に〇をつけることが挙げられます。そうすることで、住民税の通知は会社ではなく自分にくるため、副業がバレにくいです。
関連記事:副業がバレない方法はある?バレる理由やタイミングも解説
社会保険や税金の処理はどうなる?
税金は確定申告で決定します。本業と副業を合算した所得に対して、所得税・住民税が課せられます。
また、他の会社に雇われて副業する場合は、社会保険料について注意が必要です。副業先の会社でも条件を満たすと社会保険への加入義務が課される場合があります。
一方で、個人事業主として副業をする場合には、本業の収入に対する社会保険料のみの負担となります。
メリットが大きい人は個人事業主として副業を始めてみましょう
会社員であっても「開業届」を出すことで個人事業主になることができます。
個人事業主になることで失業保険がもらえないといったデメリットもありますが、青色申告ができる、赤字の繰り越しができるなどのメリットもあります。
「副業を始めてみたところ、思ったより収入が増えてきた」という場合は、個人事業主として副業をすることを検討してみてはいかがでしょうか。