この記事では、「コーチングとカウンセリングの違いを知りたい」という方に向けて、それぞれの違いや意味、目的とメリット・デメリットを解説します。
また、効果を高めるポイントについてもまとめていますので、カウンセリングとコーチングの違いについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
コーチングとカウンセリングの違い
一見すると、似ているように感じるコーチングとカウンセリングですが、両者には大きな違いがあります。
コーチングには実は、明確な定義が現状ありません。しかしながら、語源は「馬車」といわれており、基本的にはクライアント(相談者)が自主的に行う問題解決のサポートを指すことが多いです。
また、コーチングは元々、スポーツに関連して使われるのが一般的でしたが、近年は人材の能力開発や組織開発をするためのツール、という意味で使われるケースが出てきました。
一方でカウンセリングとは、カウンセラーとの対話によって、クライアントが抱える悩みや課題を解消できるよう導くプロセスのことを指しています。
クライアントは、カウンセリングを受けることで生きづらさが解消され、人生が好転することをカウンセリングの目的としていることが多いです。
カウンセリングは悩みを解決する性質が強いため、コーチングのように能力開発や人材育成という観点で、カウンセリングという言葉が使われることはほとんどありません。
未来か過去なのかの違い
コーチングで解決する悩みは「これからどのように歩んでいったら良いのか」など、クライアントの意識が未来へと向いていることがほとんどです。
「これからの組織の在り方」や「将来の夢・理想」を扱うケースに対して、コーチングという言葉が用いられやすいです。
一方で、カウンセリングは過去に起こってしまった出来事が引き金となり、現在も引きずっている悩みを扱うことがほとんどです。そのためカウンセリングでは、精神的な悩みを扱うケースが少なくありません。
コーチングにもカウンセリングにも「悩みや問題を解決する」という共通点があるものの、両者には、クライアントの意識が過去と未来どちらに向いているのか、という違いがあります。
目標達成か問題解決なのかの違い
コーチングでは、コーチから受ける質問に対する回答やコーチとの対話を通じて「自分が持っている目標を達成するためには、今どのようなことをすれば良いのか」を考えます。コーチングは、目標を達成することが主な目的です。
一方で、カウンセリングは過去の出来事によって心に植え付けられたつらさや悩みを解決することを目的としています。
そのため、カウンセリングには、「クライアントの目標を達成する」よりも「クライアントのつらさを取り除く」というイメージが適しています。
両者に共通しているのは、コーチングもカウンセリングもクライアントが目指すところへ導くことであり、クライアントの心が前向きになる点にあるといえます。
思考か会話なのかの違い
コーチングは、クライアントから投げかけられる質問に対し、深く考えることによって目標達成のための方法を得ることを指します。そのため、常に会話を続けて答えを探していくというよりも、繰り返し思考を巡らせて、自分の中から答えを見つけだすイメージが適切です。
一方で、カウンセリングはクライアントがカウンセラーと多くの会話をしていくことで、クライアント自ら問題や悩みを解決するための気付きを得ることを目的としています。
コーチングは質問による思考をベースに進めていくのに対し、カウンセリングは会話をベースとして進めていく、という違いがあります。
民間資格か国家資格なのかの違い
コーチングとカウンセリングでは、必要となる資格の性質が異なります。
コーチングはICF(国際コーチング連盟)、EMCC(欧州メンタリング&コーチング協議会)、AC(コーチング協会)などの国際資格をはじめとした民間資格が中心となっています。
それに対しカウンセリングは、主要な資格として「公認心理士」という国家資格があげられます。もちろん、臨床心理士、産業カウンセラーなどの民間資格もありますが、やはり国家資格の公認心理士を取得するカウンセラーが多いです。
もちろん民間資格だからといって国家資格に比べて劣っているわけではなく、国家資格だからといって優れている、という優劣はありません。
関連記事:ティーチングとコーチングの違いは?活用例とメリット
コーチングとカウンセリングの共通点
ここからは、コーチングとカウンセリングの共通点を紹介します。
より良い状態を目指している
コーチングとカウンセリングは、どちらも「クライアントを今よりも良い状態にする」ことを目的として取り組むものです。
コーチングは、コーチからの質問に対する答えをクライアント自身が考え続けることによって、「今自分が何をするべきなのか」を導き出します。
カウンセリングでは、カウンセラーとの会話を続ける中で、自分の中に植え付けられているつらさや悩みを取り除いていきます。
コーチやカウンセラーは、クライアントとの対話の中で、クライアントの考え方に気になる部分があったとしても、それを無理やりコーチやカウンセラーの価値観で修正することはありません。
コーチングもカウンセリングも、クライアントらしさを大切にしたうえで、対話を進めます。
コミュニケーションスキルが必要
コーチングもカウンセリングも対人での会話を必要とするため、一定以上のコミュニケーションスキルが必要です。
コーチとカウンセラーには当然コミュニケーションスキルが求められますが、クライアント側にも、一定のコミュニケーションスキルが必要となります。
なぜなら、コーチングもカウンセリングも、クライアントが積極的に話をしていくことで、円滑に進められるからです。
反対に、クライアントが話をしたがらないと、コーチングやカウンセリングを進められず、クライアントが求めている成果を得られないまま終わってしまいます。
クライアントに向き合い信頼関係を築く必要がある
コーチングもカウンセリングも、クライアントと信頼関係を築くことが必須です。
クライアントとコーチ・カウンセラーの間に信頼関係がなく、ぎこちないままであれば、クライアントは思っていることを素直に話せなくなってしまいます。
特にカウンセリングの場合は、クライアントが心を閉ざしているケースが多いため、カウンセリングの初期段階で、濃密な信頼関係を構築する必要があるのです。
もちろん人間同士には相性もありますので、「人間としての相性の良しあし」をクライアント側が見極める必要もあります。
コーチングのメリット・デメリット
ここからはコーチングに焦点を当て、メリット・デメリットを詳しく解説します。
メリット.組織のメンバーの自発性が高まる
コーチングは、クライアントがコーチによって投げかけられた質問に対する答えを考え、自発的に問題解決の方法を導き出すことが目的です。そのため、コーチングによって組織全体の自発性を高められます。
コーチングを通じて答えを自分で考える習慣が身につけば、いつの間にか組織のメンバー全体の自主性や自発性が高まっている状態へと導かれていくのです。
メリット.組織のメンバーの成長が加速する
コーチングを通じて、メンバーの成長が加速するメリットもあります。コーチングをすることによって、メンバーに自発性・自主性が養われると、養われた自発性や自主性によって個人や組織のさらなる成長につながります。
これまで何に対しても受け身で自分で答えを考える習慣がなかった人が、コーチングを通じて自分で答えを考える習慣が身に付くと、人が変わったように自分で勝手に成長していく、といったケースが生まれるのです。
メリット.経営者やマネージャーの能力が高まる
コーチングは組織のメンバーを成長させるためにも使われますが、経営者やマネージャーといった組織のトップに立つ人の能力を高めるためにも利用されます。
経営者のためのコーチングは「エグゼクティブコーチング」と呼ばれて、組織を引っ張っていく立場にある人間が成長するためのコーチングとして行われます。
組織のメンバーと引っ張っていく人間では、立場や役割が大きく異なるため、通常のコーチングの内容も違うほか、特化したコーチでなければ効果が出にくいです。
デメリット.目的達成や効果が現れるまで時間がかかる
コーチングは、コーチからの質問に対し、じっくりと思考を巡らせながら答えを探していくもののため、すぐには効果が出ません。
自発性や自主性が養われるのには、多くの質問に対する思考を巡らせ、自分の回答に対する自信をつけていかなければなりません。
そのため、コーチングはどれだけ短くても効果が出るまでに、3カ月以上の時間がかかると考えておいたほうが良いでしょう。
デメリット.知識や経験が不足している場合は答えが出ない
コーチングは自分の中から答えを出すことが中心となるため、自分の中に答えを導き出すための知識や経験がない場合には、答えを出すのが難しくなってしまいます。
そのため、コーチングはある程度の経験や知識を積んだ人材を対象にするのが適しています。新入社員や新しく参加するメンバーには、コーチングではなく1から知識やスキルを教え込む「ティーチング」が向いています。
デメリット.成長や変化を求めていなければ効果が出にくい
コーチングは、自分の中で思考を巡らせて答えを導き出すことにより、今の自分がより良い自分へと変化することを目的としています。
そのため、コーチングは「今の自分より成長したい」というような成長志向のある人に適しているといえます。反対に「今のまま変わらなくても良い」と思っている人や、現状維持を目標としている人には効果が出にくいです。
関連記事:コーチングとは?ティーチングとの違い、やり方や効果を徹底解説
カウンセリングのメリット・デメリット
続いて、ここからはカウンセリングに焦点を当て、メリット・デメリットを解説します。
メリット.思考のパターンや癖を理解できる
人間は、誰でも考え方に癖があります。特に精神的な問題を抱えている方は、その傾向が強く表れます。
そのため、カウンセラーと会話を進めていく中で、自分が陥りやすい思考の癖に気付くことができるでしょう。
自分の思考の癖に気付くことができれば、それ以降落ち込むことがあったときに、その癖を避けた考え方ができるようになります。
さらに、自分の考え方の癖を変えようと努力することで、今までの自分にはなかった前向きな考え方を手に入れることもできるようになります。
メリット.自覚していなかった長所に気付ける
心に大きな傷を持っている方は、「自分には長所なんてない」という思考に陥ってしまう傾向にあります。
しかし、人間ならば誰しも何らかの長所があるのです。カウンセラーとの対話を進めていく中で、カウンセラーから「あなたにはこんな良いところがある」というアドバイスを受ければ、自分が今まで知らなかった長所に気付くことができます。
クライアント自身が自分の長所を再認識することで、少しずつ前向きな気持ちへと心を入れ替えることができ、つらさや悩みの解決につながるのです。
メリット.自分の感情や気持ちを大事にできるようになる
カウンセリングを受けにくるクライアントは、「自分の感情は押さえ込んでおくべき」という考えを持っている方が少なくありません。
しかし、カウンセラーに自分の思っていることをぶつけ、それを肯定してもらうことによって、「自分の感情や気持ちは大切にして良い」と思えるようになります。
カウンセリングは、今まで自分の感情に対して否定的だった方が、自分の気持ちに正直になることで、これまでよりももっと前向きな気持ちになることを目指しています。
デメリット.具体的なアドバイスや意見がもらえないと感じることがある
カウンセリングを通して解決したい悩みは精神的な問題が多いため、カウンセリングの内容が抽象的になることがあります。
そのため、カウンセラーから「具体的なアドバイスが欲しい」と思っていても、抽象的なアドバイスが多くなってしまい、思ったような答えをもらえない場合もあります。
精神的な悩みを解決するのは簡単ではないため、具体的な答えがすぐには見つからないかもしれません。しかし、少しずつでも対話を積み重ねていくことで、欲しい答えがいずれ見つかるでしょう。
デメリット.悩みが複雑な場合、問題解説まで時間がかかる
クライアントが抱えている悩みは、単純なものばかりではありません。むしろ複雑な悩みを抱えている方がほとんどで、問題を解決するまでに時間がかかってしまいます。
複雑な悩みを抱えている方の場合は、すぐに答えが見つからないかもしれませんが、じっくりと諦めずにカウンセラーと会話を進めていくことで、答えを見つけることができるでしょう。
デメリット.カウンセリングを受けていることを友達や家族に話しにくい
クライアントには、心の病気を抱えている方も多く、他の人にカウンセリングを受けていると話をすると、心配をかけるのではと不安になりやすいです。
そのため、カウンセリングを受けていることを友達や家族に話しづらく、カウンセラー以外からの支援を受けづらくなってしまうデメリットがあります。
しかし、精神的な悩みを抱えている方は、周りからの支援があったほうがより円滑に問題解決へと進めます。
このため、カウンセリングを受けていることを支援してもらいたい友達や家族に思い切って話すことも大切です。
コーチングで扱われることの多い悩み
ここでは、コーチングの現場で実際に扱われることが多い悩みについて紹介します。実際にコーチングを受けてみようかと検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目標を考えられない
コーチングの大きな目的は、目標に向かってサポートすることですが、目標を設定できずに悩みを抱えている方もいます。
また、「何か始めたいけれど、やりたいことが多くて何から始めるべきなのか分からない」など、どの目標が自分にとって大切なのかを判断できないケースもあります。
その場合は、コーチからの質問に対する答えを繰り返し考え、理想の姿について掘り下げていきます。
そうすることで自然とゴールが見えてきますし、どのようなプロセスで歩んでいけば良いのかが、分かるようになるのです。
目標はあるがそのために何をすれば良いか分からない
コーチングを受けている人が抱えている悩みで一番多いのは「目標達成のために何をすればいいのかが分からない」という悩みです。
この場合は、「現状自分がどんな状況にいるのか」を理解し、目標達成のために必要なスキルや行動を、コーチからの質問を通して考えます。
目標を達成するために必要な時間も一緒に考えるため、コーチングを受けてからすぐに行動に移せます。
失敗を何度も繰り返している
「目標に向かって何をすれば良いのか分かっていても、結局失敗してしまう」という悩みを持つクライアントもいます。
その場合は、「自分が設定した目標が適切だったか」「目標達成のために歩んでる道が正しいのか」について再度コーチと一緒に考え直す必要があります。
自分の成長具合や経験・スキルを見直し、コーチからの質問へと思考を巡らせることで、今までの自分では出すことができなかった新しい答えを導くことができるのです。
関連記事:コーチングは意味がない?理由、向いていない人を解説(No38の記事です)
カウンセリングで扱われることの多い悩み
最後に、カウンセリングで扱われることの多い悩みについて紹介します。
不安が漠然とある
クライアントの中には、「具体的には分からないものの、自分の将来やこれからの在り方について漠然とした不安がある」という悩みを抱えている方が少なくありません。
このようなケースでは、カウンセラーとの会話を進めていく中で、自分が具体的にどのような悩みを抱えているのかを知り、どんな対策をしていくべきなのかを考えていきます。
場合によっては、その漠然とした不安がただの杞憂であり、カウンセリングを受けたことで、心が軽くなったというケースも珍しくありません。
同じような悩みを抱えてしまう
一つ悩みを解決しても、それとまた同じような悩みを抱えてしまうクライアントがいます。
この場合は、現在抱えている具体的な悩みを解決するだけでなく、これまで抱えてきた悩みに共通しているポイントを探すことが重要になります。
カウンセラーとの会話を進めていく中で、クライアント自身の思考の癖を見つけだし、同じ悩みを抱えてしまわないようにするのです。
話を誰かに聞いてほしい
今すぐ解決したい悩みや問題はないけれど、とにかく誰かに自分が思っていることを聞いてほしいと思っている方もいます。
自分が吐き出したいことを、カウンセラーに聞いてもらうことでスッキリし、カウンセラーとの会話の中で、自分でも気付いていなかった問題点を見つける場合もあります。
この場合は、さらに深くカウンセラーとの会話を進めていくことで、自分が思っていた以上に前向きになるケースが多いです。
関連記事:カウンセラーに向いている人と向いていない人の特徴とは?(No57の記事です)
コーチングとカウンセリングは目的が異なる
コーチングとカウンセリングでは、どちらもクライアントをより良い方向へと変えていくという点で共通しています。しかし、両者はその方法や扱われることの多い悩みが異なるのです。
そのため、コーチングかカウンセリングのどちらかを受けてみようかと考えている方は、この記事の内容をよく読んで、自分にはコーチングとカウンセリングのどちらが適しているのかを、よく考えてみてください。