現代社会は、ストレス社会ともいわれています。現代人は過大なストレスにさらされやすい状況にあり、心の悩みを抱える人が増えているのが現状です。そんな中、心理カウンセラーに対する関心が高まってきています。

しかし、まだまだ心理カウンセラーという職業に対してなじみがなく、心理カウンセラーの需要や将来性、魅力について理解しきれていない人もいるでしょう。

この記事では、心理カウンセラーの需要や魅力、将来性について解説します。また、心理カウンセラーに向いている人の特徴についても紹介しますので、心理カウンセラーを目指す方は、ぜひ参考にしてください。

 

心理カウンセラーへの関心が高まっている

近年、日本で心理カウンセラーへの関心が高まったターニングポイントは2つあります。

1つ目は、2011年の「東日本大震災」です。巨大な地震や津波、地盤沈下、液状化などが起こり、広域にわたって甚大な被害が発生しました。

世界に衝撃を与えた大災害によって、全国的に不安感を持つ人が増大し、心理カウンセラーに対する関心と需要が高まりました。

2つ目は、2015年に「公認心理士」が国家資格となったことです。 国家資格は法律に基づいた各分野に対する能力・知識を証明するものですから、資格化されたことで心理カウンセラーという専門職の権威性・信頼性が高まり、認知も広まりました。

厚生労働省の調査によると、精神疾患を有する総患者数は、2002年は約258.4万人でしたが、2008年には約323.3万人となり、2017年には約419.3万人まで増加しています。

これは日本人の約30人に1人が心の悩みに苦しんでいる状態です。総患者数が増加傾向にある中、心理カウンセラーへの需要は今後も高いままだと予想されます。

他にも心理カウンセラーの需要や関心が高まっている理由がいくつかあるため、それぞれ見ていきましょう。

理由1.スクールカウンセラーを配置する学校の増加

心の悩みは、大人だけの問題ではありません。近年は、子どもも心の悩みを抱えることが多く、スクールカウンセラーを配置する学校が増えています。

文部科学省の調査によると、2012年時点でスクールカウンセラーを配置している学校は17,621カ所でしたが、2021年には約1.74倍の30,681カ所まで増加しました。これまでの推移から、今後もスクールカウンセラーの配置校は増えると予想されます。

理由2.産業カウンセラーを配置する事業所の増加

企業においても、メンタルヘルス対策として心理カウンセラーのニーズが高まっています。厚生労働省の調査によると、2021年時点で59.2%の事業所がメンタルヘルス対策に取り組んでいます。

企業の成長や生産性の向上には、従業員がいきいきと働けるよう支援していくことが必要です。そのためには、効果的なメンタルヘルス対策を実施し、現状を把握して適切なアドバイスを行う産業カウンセラーが欠かせません。

法律面でも、企業においてメンタルヘルス対策の取り組みを促す変化があります。2015年12月以降、労働安全衛生法の改正により、50人以上の労働者がいる事業所では、年に1回のストレスチェックが義務化されました。

加えて、2020年6月の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、大企業を対象にパワハラ防止対策が義務化され、2022年4月からは中小企業もパワハラ防止対策を実施しなければならなくなりました。

心理カウンセラーは、ストレスチェックの実施事務専従者としてのサポートや、ハラスメントの相談窓口、ハラスメント防止の研修をする重要な存在です。

心理カウンセラーの活躍の幅は増えている

医療分野病院やクリニック、保健所など
教育分野学校や教育センターなど
産業分野ハローワーク・企業の相談室・健康管理センターなど
福祉分野児童相談所・高齢者福祉施設・リハビリテーションセンターなど
司法・矯正分野家庭裁判所・刑務所など
大学・研究領域大学・大学付属の心理・臨床センター・民間企業の研究機関など

ストレスの多い現代社会において、心理カウンセラーはさまざまな分野で活躍しています。中でも需要の高い分野は、上記のとおりです。

活躍している分野は多岐にわたりますが、どの分野であっても、心理カウンセラーはクライアントが自らの力で心の悩みを解決できるよう、心理学的知見に基づいたサポートを行います。

関連記事:心理カウンセラーになるには?資格、向いている人を解説

心理カウンセラーの魅力

心理カウンセラーは、心理学の知識や臨床経験を用いて、クライアントのストレスを緩和させたり、心の傷を癒やしたりする仕事です。

今後も多岐にわたる分野で需要が高まると見込まれ、世の中から求められている仕事でもあります。

悩みを抱えた人々の問題を解決するためには相応の経験と知識が必要ですが、やはり人の役に立てるという喜びは何にも代えがたいものです。

心理カウンセラーは、カウンセリングを通じて、クライアントの健康状態が回復する様子が見られるため、「相手の役に立っている」ということを実感しやすいです。「人から感謝されたい」という願望がある方には、心理カウンセラーは適しているといえます。

心理カウンセラーの将来性

繰り返しになりますが、メンタルヘルスケアの重要性と必要性は年々高まっています。

しかし、いまだにカウンセリングは一般的に浸透しているとはいえない状況にあり、カウンセリングを受けることに、恥ずかしさや行きづらさを感じる方は少なくありません。

相談窓口などが増え、カウンセリングを受けるハードルが低くなることで、より心理カウンセラーの需要が高まる可能性を秘めています。

欧米では、日本よりメンタルヘルスケアの関心が高く、心理カウンセラーはポピュラーな存在です。メンタルヘルスケア先進国のように、日本でもアプリの普及などによりカウンセリングを受けやすい環境になれば、今よりも心理カウンセラーが身近な存在になるでしょう。

関連記事:カウンセラーとは?仕事内容や年収、働く場所を解説

心理カウンセラーの就職・求人状況

需要の高い心理カウンセラーですが、求人はそれほど多くありません。特に、常勤の心理カウンセラーの求人となると、求人数は格段に減ってしまうのが現状です。

非常勤の心理カウンセラーの求人は常勤よりも多い傾向にありますが、職場によって勤務日数や勤務時間は異なります。そのため、非常勤で複数の職場を兼務する心理カウンセラーが多いようです。

一方で、臨床心理士や公認心理師といった資格を応募条件にした求人は、常勤の仕事も比較的多い傾向にあります。なお、臨床心理士は民間資格であり、公認心理師は国家資格です。

各求人サイトで調査してみると、2022年現在において平均で2,500~3,000件ほどの求人が掲載されています。他の職種と比べると少ないものの、年々求人件数が増えてきています。

 

心理カウンセラーの年収について

心理カウンセラーの年収は、勤務する職場や保有資格によって異なります。一般的に平均年収は430万円程度で、月給は20万円〜30万円程度です。

以下に勤務先別の平均年収や月給を一覧で紹介しますので、目安として参考にしてください。

  • 病院(メンタルクリニック・心療内科・精神科など)

常勤の場合:年収300万円~400万円

非常勤の場合:時給1,500円~2,000円

病院で勤務するには、公認心理師または臨床心理士の資格が必要であることがほとんどです。

  • 企業(一般企業・福祉施設など)

企業内カウンセラーになるために義務付けられた資格はありませんが、産業カウンセラーの資格を有する人が多いようです。加えて、キャリアカウンセラーの資格を持っていると就職で有利に働きます。

  • 学校(スクールカウンセラーなど)

常勤の場合:年収300万円~400万円

非常勤の場合:時給3,000円~5,000円

スクールカウンセラーという資格はないものの、スクールカウンセラーになるためには文部科学省が指定している資格要件があります。

  • 独立開業(フリーランス)

 ~年収1,000万円以上

開業の場合は、働き方や顧客の数などによって収入が大きく異なります。

関連記事:カウンセラーとして独立開業!方法やメリット、資格の有無を解説

心理カウンセラーに向いている人の特徴

心理カウンセラーを目指している方にとって、自分に心理カウンセラーとしての適性があるかどうかは気になる事柄の一つです。どのような人が、心理カウンセラーに向いているのでしょうか。

ここでは、以下の3つの特徴について解説します。

  • 誠実に人と向き合える
  • 人の話を傾聴できる
  • 共感しつつ感情的にならない冷静さがある

誠実に人と向き合える人

クライアントの中には、切実な思いを抱えている人が多いものです。カウンセリングによってメンタルヘルスを快方に向かわせるためには、クライアントに対して真剣に接して心に寄り添い、打ち解けて信頼を獲得することが不可欠です。そのためには、誠実さが求められます。

「この人なら、自分の話を聴いてくれそう」と思うような誠実な人でなければ、悩みを打ち明けてもらうのは難しいでしょう。誠実に相手と向き合う性格の場合は、心理カウンセラーに向いているといえます。

人の話を傾聴できる

人の話を聴くことが得意だという人は、心理カウンセラーに向いているといえます。なぜなら、カウンセリングにおいて、傾聴力は最も重要なスキルの一つだからです。

カウンセリングは、心理カウンセラーがアドバイスするよりも、クライアントの悩みを聴いて、クライアントが思考などを整理したり気づきを得たりするのを手助けすることに重きが置かれます。

傾聴力があれば、クライアントの話を積極的に聴いて理解し、配慮をしたうえで手助けすることができるでしょう。

「カウンセラーに話を聴いてもらう」ということが、クライアントが気持ちの整理をつけたり悩みの解決の糸口を見つけたり、心を軽くしたりすることにつながります。

共感しつつ感情的にならない冷静さがある人

共感力と感情移入しすぎない冷静さも、心理カウンセラーとして必要な資質です。相手を理解するには、相手の心に寄り添い、自分のことのように共感する力が必要となります。

しかしながら、共感しすぎて感情移入をしすぎると、客観的に物事を見ることができなくなり、適切な判断ができなくなってしまいます。それを防ぐためには、クライアントと自分の感情を混同せずに、一定の心理的な距離を保つ冷静さが必要です。

共感しながらも冷静さを保てることは、心理カウンセラーとして重要な素質といえます。

カウンセラーは今後も需要が高まる将来性のある職業

カウンセラーの需要は年々高まっており、スクールカウンセラーや産業カウンセラーを設置する学校や企業が増えてきています。

日本において心理カウンセラーはまだまだなじみのある職業ではありませんが、メンタルヘルスケアの先進国では、心理カウンセラーやメンタルヘルスに関するアプリが既にポピュラーな存在になっています。

東日本大震災や新型コロナウイルス感染症、法律改正をきっかけに心理カウンセラーの認知度と必要性が高まったように、日本において今後も心理カウンセラーの存在は大きいものとなり、なじみのある職業となる可能性は高いです。

カウンセリングの今後の発展と需要を見据えて、将来の職業候補に心理カウンセラーを入れてみるのもよいのではないでしょうか。