心のケアを専門とする心理カウンセラー。相談者の心理的な悩みを解決するには、さまざまな知識や経験が必要なため、「カウンセラーになるための知識を、独学で身に付けられるのか?」と、気になる方も多いでしょう。

そこでこの記事では、心理カウンセラーの勉強方法について解説します。独学で取得できる資格やおすすめのも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

独学でカウンセラーになりたい!資格は必要?

心理カウンセラーを名乗るのに資格は必要ありません。心理学を全く勉強していない・知識が何もない状態でも、心理カウンセラーを名乗ることは可能です。

しかし、多くの企業では採用基準に資格取得を条件に設けているところが少なくありません。また、フリーランスとして仕事する場合も、資格を持っているほうが相談者から信頼を得やすいです。

そのため、仕事として収入を得るためには、資格取得や現場での実務が必要であると言えます。特に、大学や専門学校などに通うのではなく、独学で心理カウンセラーを目指す場合は、現場で経験を積むことが難しいため、最低限、資格を取得することをおすすめします。

カウンセラーの資格は独学で取得できるものとできないものがある

心理カウンセラーの資格には、試験を受験して取得できるものと、大学などの教育機関でカリキュラムを受講しなければ取得できない資格の二つに分かれます。

資格によっては現場経験を積むことで取得できるものもあるため、カウンセラーとして仕事をしながら、キャリアアップとして取得を目指す方法もあります。

独学で取得できる資格

独学で取得できる主な資格は、以下の通りです。

  • JADP認定メンタル心理カウンセラー
  • メンタルケアカウンセラー
  • チャイルドカウンセラー
  • キャリアカウンセラー

ここからは、それぞれの資格の内容と取得方法、試験の概要について見ていきましょう。

JADP認定メンタル心理カウンセラー

JADPメンタル心理カウンセラーは、日本能力開発推進協会(JADP)が実施する民間資格です。

合格率は公表されていませんが、テキストを見ながら受験が可能なため、難易度は低めと言えます。

・資格の取得方法

JADPの認定教育機関等が行う教育訓練において全カリキュラムを修了し、試験に合格することで資格を取得できます。カリキュラムは通信講座となっており、誰でも受講が可能で、受講期間は約2カ月です。

・試験の概要

カリキュラム修了後、在宅で受験が可能。受験料は5,600円(税込)です。

試験問題は、「カウンセリングに関する基礎知識」「クライエントに関する基礎知識」「心理学に関する基礎知識」「精神医学の基礎知識」から出題されます。得点率70%以上を合格とし、合否結果は答案受付後、約1カ月で通知されます。

メンタルケアカウンセラー

メンタルケアカウンセラーは、日本学術会議協力学術研究団体、メンタルケア学術学会が認定する公的資格です。

試験を受ける必要がなく、一定期間勉強するだけで取得できるため、初心者が初めて挑戦する資格としておすすめです。

・資格の取得方法

通信講座を修了すれば資格の取得が可能です。試験はありません。

・試験の概要

前述のとおり、試験はありません。通信講座内で課題を提出し、課題の確認の結果、一定基準の知識があると判断されれば資格を取得できます。

チャイルドカウンセラー

チャイルドカウンセラーは、一般社団法人日本能力開発推進協会 (JADP) が運営する民間資格です。

子どもを相手にしたカウンセリングを行いたい場合は、まずこの資格から挑戦してみても良いでしょう。

・資格の取得方法

JADPの認定教育機関等が行う教育訓練において全カリキュラムを修了し、試験に合格することで資格を取得できます。カリキュラムは通信講座となっており誰でも受講が可能です。

・試験の概要

カリキュラム修了後、在宅で受験が可能。受験料は5,600円(税込)です。

試験問題は、「チャイルドカウンセリングの役割と理念」「現代社会における子どもの問題行動」「子ども理解のあり方」「連携とは」「家族問題との関わり」「来談者との関わり」「問題行動」「障害」から出題されます。

得点率70%以上を合格とし、合否結果は答案受付後、約1カ月で通知されます。

キャリアカウンセラー

キャリアカウンセラーは、一般社団法人日本能力開発推進協会 (JADP) が運営する民間資格です。

相談者にはどんな仕事が向いているか、今の仕事は自分の適性に合っているのかなど、仕事に関する相談に乗り、解決へと導く能力があることをこの資格を取得することで証明できます。

・資格の取得方法

JADPの認定教育機関等が行う教育訓練において全カリキュラムを修了し、試験に合格することで資格を取得できます。カリキュラムは通信講座となっており誰でも受講が可能です。

・試験の概要

カリキュラム修了後、在宅で受験可能。受験料は5,600円(税込)です。

試験問題は、「キャリアカウンセリングに関する基礎知識」「キャリアカウンセリング理論」「キャリアカウンセリングの実践に関する基礎知識」「キャリアカウンセリングの実施等に関するスキル」から出題されます。

得点率70%以上を合格とし、合否結果は答案受付後、約1カ月で通知されます。

独学では取得できない資格

独学では取得ができない資格が下記です。

  • 公認心理士
  • 臨床心理士
  • 認定心理士
  • 産業カウンセラー

ここでは、それぞれの資格の内容と取得方法、試験の概要について解説します。

公認心理士

公認心理士は、心理学に関する専門的な知識と技術を兼ね備えていて、助言や指導などをする能力があることをこの資格を取得することで証明できます。2022年3月末時点での公認心理士登録者数は54,248人で、国家資格となっています。

また、この資格は2018年に初めて試験が実施された比較的新しい資格です。

・資格の取得方法

公認心理士の試験を受験するためには、大学・大学院で指定科目を履修している必要があります。国家資格のため、修得すべき科目や時間数等が法律で定められています。

そのため通信講座などでの取得はできず、大学や大学院に入学し基礎から本格的に学ぶことが求められます。

・試験の概要

試験は毎年9月に実施されます。マークシート方式の筆記試験で、総得点の60%程度以上を基準とし問題の難易度で補正します。また、2021年試験の合格率は58.6%でした。

臨床心理士

臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が運営する民間資格です。1988年に最初の試験が行われ、2022年時点での臨床心理士登録者数は39,576人となっています。また、民間資格の中ではかなり知名度の高い資格です。

・資格の取得方法

臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会の試験に合格する必要があります。試験を受験するためには、あらかじめ臨床心理士養成に関する指定大学院または専門職大学院の修了が必要です。

・試験の概要

試験は年に1回実施され、一次試験(筆記)と二次試験(面接)に分かれています。一次試験では、マークシートと論文記述試験の2種類を1日で受けます。二次試験では、面接官をクライアントとして、試験が行われます。

一次試験合格率は約65%、二次試験合格率は約90%です。

認定心理士

認定心理士は、日本心理学会が運営する民間資格です。心理学の基本的な知識や技能を身に付けたことを、この資格を取得することで証明できます。

・資格の取得方法

4年制の大学で修得した心理学系の単位を日本心理学会に申請し、資格を取得します。 試験はなく、申請が認定されれば認定心理士としての資格を取得できます。

・試験の概要

前述のとおり、認定心理士になるための資格試験はありません。

産業カウンセラー

産業カウンセラーは、日本産業カウンセラー協会が運営する民間資格です。職場で働く人たちが抱えるさまざまな悩みをカウンセリングし、改善・解決へと導く能力があることを、この資格を取得することで証明できます。

・資格の取得方法

産業カウンセラー試験に合格することで資格を取得できます。以下いずれかの要件を満たすことが受験要件です。

  • 成人(試験日に満20歳)であり、産業カウンセラー養成講座を修了している
  • 大学院で所定の専攻を修了、かつ所定の単位を取得している
  • 試験の概要

試験は学科試験と実技試験が行われます。学科試験はマークシート形式で「産業カウンセリング概論」「カウンセリングの原理および技法」「パーソナリティ理論」「職場のメンタルヘルス」「実践的な知識・技能の理解」から出題されます。実技試験は、試験官との面接試験です。

また、2021年1月の学科試験合格率は67.8%、実技試験合格率は67.3%でした。

カウンセラーの資格を独学で取得する方法

ここまで、さまざまな資格の紹介をしましたが、どれも当然ながら資格取得に向けて勉強をしなければなりません。ここからは、独学でカウンセラーの資格を取得する方法を解説します。

書籍・本で学ぶ

心理学に関する書籍は多いため、取得したい資格に合った書籍を選んでみてください。書籍は1冊、数千円前後で購入できるので、コストを抑えたい方には、おすすめの学習方法です。

ただし、取得難易度が高い資格は、そのぶん内容も難しくなります。書籍によっては難解なものも出あるため、できるだけ分かりやすく解説されているものを選ぶことがポイントです。

通信講座で学ぶ

カウンセラーの資格を独学で取得するための王道の方法は、通信講座です。通信講座では、心理学に関する基礎知識だけでなく、試験対策をすることも可能です。

そのため、書籍での勉強では不安という方におすすめです。スクールとは違い、自分のペースで学べる点もメリットと言えます。

カウンセラーを目指す人におすすめの本

ここからは、書籍を使ってカウンセラーの資格取得を目指す方におすすめの本を紹介します。

「徹底図解 心理学」

「囚人のジレンマ」「酸っぱいブドウ」などの社会心理学を、基本的な心の育ち方や、人とのかかわり、心のダメージとケアなどを踏まえて分かりやすく図で解説しています。心理学の基本的な内容を広くまとめているため、初めて心理学に触れる人に優しい内容です。

カラー版徹底図解 心理学―生活と社会に役立つ心理学の知識 単行本 – 2008/8/1

「ステップアップ心理学シリーズ 心理学入門」

心理学全体を網羅的に学習できる入門書です。各論科目をカラーイラストと写真を交えて分かりやすく解説しています。心理学の歴史から心理学の基礎まで、基本的内容を章ごとにまとめられており、初心者でもわかりやすい内容です。

ステップアップ心理学シリーズ 心理学入門

「図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問」

イラストをメインにしており、心理学を分かりやすく解説している書籍です。約100人の心理学者と150以上の用語を解説していて、用語同士の関連、心理学者の関係性などが理解できます。

図解 心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問

「本当にわかる心理学」

心理学の基礎から実践的な知識まで、やさしく解説されています。マーケティング、広告、販売促進、自治体の政策や防犯対策など、すでに身の回りで応用されているものを例に心理学を分かりやすく解説しているのが特徴です。

本当にわかる心理学

「心理学(新版)New Liberal Arts Selection」

心理学を本気で勉強したい方におすすめの書籍です。心理学とは何か、基礎となる知識・概念から、最新の研究、専門的な知見までを網羅的に整理・解説されています。

心理学(新版)New Liberal Arts Selection

独学で学んでもカウンセラーを目指せる!

資格取得は、カウンセラーとして活躍していくための第一歩です。時間やお金に余裕があり、大学や大学院に通える方は、取得できる資格の種類も多くなります。

一方で、時間や金銭的に余裕がない方は、独学でまず資格取得にチャレンジしてみてください。通信講座という方法もありますので、じっくりと知識を深め、カウンセラーとして活躍する土台を作り上げていってください。