近年、カウンセリングの利用率が高まるとともに、心理カウンセラーを目指す人の数も増えています。

インターネットで「心理カウンセラー」と検索すると、「心理カウンセラー 資格」「心理カウンセラーになるには」など、多くの記事が表示されます。

そこでこの記事では、心理カウンセラーになるまでに必要な手順について解説します。心理カウンセラーに向いている人や、業務分野別におすすめの資格も詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

心理カウンセラーとは

心理カウンセラーは、精神的な問題や心の悩みをカウンセリングを通じて解決する職業です。病院やクリニック、教育機関、企業などさまざまな場面で活躍でき、環境ごとに対象となる問題や悩みも異なってきます。

また、心理カウンセラーは、ただクライアントの話を聴くだけではなく、悩みを解決するためにさまざまな業務を行わなければなりません。もしも、心理カウンセラーを志しているのであれば、事前に仕事内容を把握しておくと良いでしょう。

心理カウンセラーの役割

心理カウンセラーは、悩みを抱えたクライアントにあわせてカウンセリングなどの適切な心理療法を行います。クライアントの悩みによっては、箱庭療法や音楽療法など、専門的な心理療法を実施する場合もあります。

また、カウンセリングでは心の悩みを解決するための方法を一方的に伝えるのではなく、対話をとおしてクライアント自身が納得のいく答えを探すサポートを行わなければなりません。

なお、心理カウンセラーは近年、さまざまな場所で必要とされる職業となりました。資格を取って独立開業の道を選ぶ方もいますが、就職する心理カウンセラーも増えています。主な就職先には、病院や教育機関、企業などがあります。

病院やクリニックで働く場合は、医師や看護師などの専門スタッフと連携を取りながら患者のカウンセリングを実施しており、専門的な心の病を治療するケースが多いです。患者は幼児から年配の方まで幅広く、クライアントの家族から話を聞く場合もあります。

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心理カウンセラーになるには3つの方法がある

心理カウンセラーになるための勉強や資格取得を行うための方法はいくつかあります。資格を持っていなくても心理カウンセラーを名乗って、カウンセリングを行うことは可能です。

ただし、より実践的なカウンセリングを実施するためには、専門知識やスキルが必要になるため、資格の取得はほぼ必須といえます。

そこで、心理カウンセラーになるために必要な知識や資格取得の方法を3つに分けて紹介します。

大学・大学院で学ぶ

大学や大学院で心理学を勉強することで、心理カウンセラーに必要な知識や技能を習得できます。

また、大学か大学院を卒業していることを受験資格の条件として設けている資格もあるため、取得できる資格の幅が広がります。

資格取得だけではなく、学んだ内容を生かして心理カウンセラーとして経験を積んでいけるため、専門的な勉強をしたい方は、大学や大学院で学びましょう。

通学スクールで学ぶ

大学や大学院ではなく、通学スクールで心理学を体系的に学ぶのも良いでしょう。心理カウンセラーの養成スクールは数多く存在するため、気になる方は一度インターネットで検索してみてください。

例えば、「ヒューマンアカデミー」は全国各地に校舎を設け、心理学やカウンセラーに関する講座を開催しています。仕事をしている方向けに土日開催をしているスクールや、独立開業や就職に関するサポートを行っているところもあります。

通信講座で学ぶ

カウンセリングについて、通信講座で学ぶのも一つの方法です。「ユーキャン」や「ヒューマンアカデミー」などの通信講座でも、心理カウンセラー関連の資格を取得できます。

受講料は3万円程度からはじめられるものが多いため、学習費用を抑えたい方にもおすすめです。

家事や育児で忙しく勉強する時間をあまり確保できない方や、近くに学校がなく通学が難しい方にとって、通信講座は便利な方法といえます。

 

心理カウンセラーの仕事は主に「カウンセリング」と「心理療法」がある

心理カウンセラーの主な仕事内容は、カウンセリングです。これと似たような意味を持つ用語に、心理療法があります。カウンセリングは、より健康な人を対象とした支援で、日常的な相談ごとが多いです。

クライアントの話を否定せずに傾聴して共感を示し、クライアントが抱える問題の解決を目指していきます。カウンセラーは問題解決のために具体的な方法をアドバイスするのではなく、クライアントが問題に対して向き合う気持ちや方法を見つけられるよう一緒に考えていくのです。

一方で心理療法は、非医師による関わりがあり、より深刻な悩みや病気を扱うケースが多々あります。精神分析、行動療法、集団行動療法などさまざまな手段を通し、クライアントの抱える悩みや病気の治療を行います。

ここからは、カウンセリングと心理療法について詳しく解説します。

カウンセリング

カウンセリングは、クライアントの悩みや問題をコミュニケーションを通じて解決することが目的です。初めて会ったときからセッションが終了するまでの間に、いくつかの段階を経ます。

カウンセラーとクライアントが信頼関係を築く初期段階、深い内容を話し合っていく中期段階、クライアントが自己肯定感を取り戻し、カウンセラーから離れる後期段階の3つに分けられます。

カウンセリングを通して、本人の心理的な問題だけでなく、家庭や職場関係、クライアントの過去のトラウマなど、悩みの外的要因を発見するのです。

心理療法

日本では、心理療法とカウンセリングはほぼ同じ意味で用いられることが多いです。区別して用いられる場合は、認知療法や精神分析など、専門的な治療法を使って問題解決を行うケースを心理療法と呼びます。

クライアントの悩みや病の内容に応じて、適した処方は変わってくるため、心理カウンセラーは対話を通して最適な心理療法を探しだす必要があるのです。

心理療法は、心について専門的なトレーニングを受けた人によって行われます。

心理カウンセラーに向いている人

心理カウンセラーに向いている人には、いくつかの共通点があります。

例えば、「人に関心が持てる」「自分の感情をコントロールできる」「口が堅く秘密を守れる」方が、比較的心理カウンセラーに向いています。

「この人になら安心して相談できる」とクライアントが思えるように、誠実な態度で向き合うことができ、穏やかな人間性を持っている方が心理カウンセラーに向いているのです。

ここからは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

人に関心が持てる

カウンセリングの仕事はクライアントと対話しながら進めていきます。そのため、「このクライアントは今どんな悩みやストレスを抱えているのだろう」と相手に対して興味関心が持てる人が向いています。

クライアントの話を傾聴し、人柄や考え方について知るだけではなく、悩みや問題と向き合うことや解決方法を一緒に考えていくことが大切です。

自分と違う考え方の人に対して、「どうしてそのように考えたのだろう」と考えてみるなど、普段から他人に興味を持つと、カウンセリングに役立ちやすいです。

自分の感情をコントロールできる

カウンセラーはクライアントの問題をともに考え、解決に導いていくサポート役を担います。

カウンセラー自身がプライベートで何か問題があった際、自分で精神的なよりどころを見つけたり、ある程度のストレスに耐えられるよう、うまく自分の感情をコントロールするスキルが必要です。

カウンセリングでは、クライアントの考えや立場に共感しなければなりませんが、自分のことのように悩んでしまうと心理カウンセラーのほうが心身に不調が出る可能性があります。

一歩引いた立場でクライアントと向き合えるよう、共感しすぎないよう気持ちを切り替えたり、感情を適切にコントロールでき、客観的に物事を見られる方が向いています。

口が堅く秘密を守れる

カウンセラーは、職務上知り得た情報を正当な理由もなく他人に漏らしてはいけない、守秘義務があります。これはカウンセリングを行ううえで非常に重要です。

プライベートの友人、恋人、家族にカウンセリング内容を話しては絶対にいけません。もし守らなかった場合、クライアントからの信頼を失い、法的に訴えられることもあります。

心理カウンセラーの代表的な資格

心理カウンセラーとして働くうえで、資格は必ずしも必要ではありません。

しかし、カウンセリングでは、専門的な知識やスキルが必要となるため資格取得をしたほうが、より良いカウンセリングを行えますし、知識やスキルを証明できるため、クライアントへの信頼度が高まります。

ここでは、代表的な資格を3つ紹介します。

公認心理師

公認心理師は日本で初めてとなる心理学の国家資格です。一般財団法人日本心理研修センターが、指定試験機関および指定登録機関となっています。2015年に法律が成立し、2017年から制度が正式に開始されました。

公認心理士を取得することで、以下の4つの業務ができると、公認心理師法によって決められています。

  • 心理査定(アセスメント)
  • 心理面接(カウンセリング)を行い、状況に応じてアドバイスや指導をする
  • 関係者への面接
  • 心の健康に関する教育および情報提供活動

受験資格は、4年制大学で指定科目を履修後、大学院で指定科目を履修する、または指定施設で2年以上の実務経験を行う必要があります。

あるいは、これらの2つと同等以上の知識やスキルを持っていることも受験資格に含まれます。公認心理師は名称独占資格(資格を持っている人だけが、その名称を名乗ることができる資格のこと)のため、心理師と名のつくものは公認心理師以外に使用できないという決まりがあります。

受験資格の基準を満たし、試験に合格することで、公認心理師として活動することが可能です。活躍の場は多岐にわたり、医療現場だけでなく教育機関、福祉、司法、産業などさまざまな場所で働くことができます。

臨床心理士

臨床心理士は、民間資格です。公益社団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定しており、1988年から資格認定がスタートしています。

心理学の専門職として名乗れる資格で、2021年時点で39,576人が認定されています。受験資格は、以下のとおりです。

  • 臨床心理師養成に関する指定大学院あるいは専門職大学院を修了している
  • 協会が指定する大学院を修了している
  • 医師免許を取得しており免許取得後に、2年以上の実務経験がある

合格した場合、資格登録証明書の発行手続きを行うことで正式に資格認定が完了します。令和3年における合格率は約65%です。

公認心理師の資格が新しくできた影響もあり、受験者数は減少傾向にありますが、5年ごとに資格更新が義務となっている点が他の資格と異なる点です。

仕事内容はカウンセリングだけでなく、心理テストなどを使用した心理査定や面接査定も含まれます。スクールカウンセラー、チャイルドカウンセラー、高齢者支援など幅広い分野での活躍が期待されています。

認定心理士

認定心理士は、公益社団法人日本心理学会に認定されている民間資格です。心理学科で心理学をメインに勉強し、心理学の基礎知識や技能を一通り網羅している資格となります。

心理カウンセラーの民間資格の中でも、持っていると就職や転職に有利になる資格の一つです。企業に就職した場合は、人事や社内のメンタルヘルス関連の部署に携われる可能性もあります。

受験資格は、4年制大学あるいは大学院で指定科目を履修後、必要な単位を習得します。その後、日本心理学会に資格認定の申請をすることで取得できます。

試験はなく、申請は郵送かインターネットで行います。卒業見込みの人も申請可能で、その場合は仮認定制度を利用して申請できます。

別の学科で大学を卒業している人の場合、通信制大学に編入するとすぐに単位を取得可能です。必要な分の単位を取得し終えたら、日本心理学会に資格申請を行います。数カ月後に結果が届き、認定料を振り込んだ後、認定証とIDカードが交付されます。

関連記事:心理カウンセラーの資格とは?種類、向いている人を解説(No 41の記事です)

分野別におすすめの心理カウンセラーの資格

心理カウンセラーの活躍の場はさまざまですが、就業場所によって仕事内容や対象となるクライアントが異なります。

そのため、どんな分野で働きたいかにあわせて、資格の取得を検討してみてください。ここでは、分野別におすすめの心理カウンセラーの資格について紹介します。

医療・福祉分野で働きたい人におすすめの資格

前述のとおり、公認心理師や臨床心理士の資格を持っている方が、医療現場で活躍しています。

他にも、精神保健福祉士を持つ方も医療や福祉現場で多数働いています。精神保健福祉士は福祉分野での活動をメインに行う専門職であり、ソーシャルワーカーとも呼ばれています。

主な仕事内容は、精神面に障害があり生活に支障をきたしている人のサポートをすることです。精神障害者やその家族の相談にのったり、必要であればアドバイスや指導を行ったりします。また、心の病を抱える人の通院や入院の手続きをサポートするなど多岐にわたります。

精神保健福祉士は国家資格で、受験するためには福祉系の4年制大学で指定科目の履修をする必要があります。

短大の場合、指定科目の履修に加えて1〜2年程度の実務経験あるいは短期養成施設で6カ月以上働くことが条件となります。主な就職先は、精神科病院、精神障害者福祉ホーム、精神保健福祉センターなどです。

教育分野で働きたい人におすすめの資格

教育分野で、子供を対象にカウンセリングを行いたい人は、スクールカウンセラーを目指すと良いでしょう。文部科学省がスクールカウンセラーとして規定しているのは、以下の条件に当てはまる人です。

  • 臨床心理士の資格保有者
  • 公認心理師の資格保有者
  • 精神科医

他におすすめの資格として、学校心理士、チャイルドカウンセラー、臨床発達心理士があります。

学校心理士は、社団法人学校心理士認定運営機構が認定する民間資格です。1997年から認定がはじまり、2021年時点で約4,300人が活躍しています。

主な活動場所は幼稚園、小中学校、高校、特別支援学校などです。子供だけでなく、学校生活に関わる教師や保護者に対しても相談にのります。

チャイルドカウンセラーは、一般財団法人日本能力開発推進協会が認定する民間資格です。協会が認定するカリキュラム(講座)を修了することで、資格取得ができます。不登校、暴力問題、いじめなどに悩む子供やその家族の心理的支援を行うことが主な仕事内容です。

臨床発達心理士は、一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構が認定する民間資格です。この資格は5年ごとに資格更新があり、専門的な知識やスキルを磨き続けられます。

心理テストや行動観察などを行いながら、子供の心のケアをしたり健全な発達を促したりする仕事です。名前のとおり、発達心理学を中心に人の発達の臨床に従事します。発達支援センターや療育支援センターなどで活躍するケースが多いです。

労働者のサポートをしたい人におすすめの資格

労働者のサポートをしたい場合は、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーなどの資格を取得すると良いでしょう。

産業カウンセラーは、職場における人間関係から生じる心のストレスへのカウンセリングを行います。職場環境の改善を支援したり、社員のメンタルヘルス対策のサポートをします。

個人のキャリア形成のためのキャリアカウンセリングや教育担当を担うこともあるため、仕事内容や活動領域が幅広いことが特徴です。

1960年に日本産業カウンセラー協会が設立され、1992年から試験を開始しました。2002年以降は民間資格として認定されています。

キャリアコンサルタントは、2016年から国家資格になった資格です。キャリア形成に関するコンサルティングを行う専門家を指します。個人の能力や価値観をもとに、その人に適した職業選択や能力開発のためのアドバイスを行うのが主な仕事です。

キャリアコンサルタントと似ている資格に、キャリアカウンセラーもあります。これは、一般財団法人日本能力開発推進協会が認定する民間資格ですが、仕事内容や活動領域に関しては、キャリアコンサルタントと大きな相違はありません。

カウンセリングをする中で個人のキャリア形成を行い、その人にあったキャリア選択をします。

心理カウンセラーになるために、はじめの一歩を踏み出そう

この記事では、心理カウンセラーになるために必要な資格や手順について紹介しました。

職場によって、心理カウンセラーが関わるクライアントは大きく異なりますが、クライアントがより良い人生を送れるようにサポートをすることに変わりはありません。

心理学の基礎知識や技術を学び資格を取得することで、心理カウンセラーとして活躍できる場は大きく広がります。

また、心理カウンセラーになる具体的な方法を理解しておくと、今後やるべきことが明確になります。自分のなりたいカウンセラー像にあった資格取得に向けて、適切な勉強をしていきましょう。