メンタルヘルス(心の健康管理)をサポートする仕事として、メンタルヘルスカウンセラーの需要が高まっています。

しかし、「メンタルヘルスカウンセラー」と聞いても、どのような仕事をしているか分からないという方は多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、メンタルヘルスカウンセラーの仕事内容や収入、心理カウンセラーとの違いを解説します。

また、メンタルヘルスカウンセラーとして役に立つ資格についてもまとめていますので、メンタルヘルスカウンセラーを目指したい方はぜひ参考にしてください。

メンタルヘルスカウンセラーとは

メンタルヘルスカウンセラーは、主に働く中で悩みを抱える方の相談を受ける仕事です。

現代社会では、職場でストレスや悩みを抱える方が増えています。さまざまな悩みを抱える方のメンタルヘルスをケアする仕事として、メンタルヘルスカウンセラーが活躍しています。

メンタル不調により、仕事のパフォーマンスが下がったり離職率が上がったりなど、さまざまな弊害が生まれます。このような問題に対し、専門的な知識を持って、当事者のメンタル面をケアし、職場環境を整えることが目的の一つです。

上司や同僚との人間関係の他に、経営者としての悩みや仕事によるストレスなど、対象は多岐にわたります。

メンタルヘルスカウンセラーは、職場に関する全般的な「心の問題」をケアし、最終的には自らが決定を下せるまでサポートしていくのが仕事内容です。活気のある職場を作り、業務の効率を上げるためにも、メンタルヘルスカウンセラーは現代に必要とされています。

メンタルヘルスカウンセラーの仕事内容

メンタルヘルスカウンセラーの仕事内容は、職場での悩みを解決するために心の健康をサポートすることです。

具体的には以下のような悩みを解決します。

  • 経営者の悩み
  • 上司からのパワハラ
  • 同僚との人間関係
  • 仕事ができないことによるストレス

企業の「相談室」としての役割がメインで、他にも企業内でメンタルヘルスに関するセミナーを実施する場合もあります。

メンタルヘルスカウンセラーは、心の健康管理に特化した仕事のため、心の病気に関する心理療法やセラピーは仕事の範囲ではありません。

「治療」ではなく、職場の悩みを持つ当事者に寄り添って、最初の一歩を「サポート」していくことが求められます。

企業専門のカウンセラーとして、心理カウンセラーの一部分を担っているともいえます。

メンタルヘルスカウンセラーの年収

メンタルヘルスカウンセラーの年収は、平均で370万円程度といわれています。

ただし、採用される企業の規模や雇用形態によって、年収の幅は300万円程度から700万円と大きく差が出ることもあります。

また、カウンセラーとしてのキャリアや保有する資格によっても異なり、実績があれば平均年収以上を稼ぐことも可能です。

そのため、メンタルヘルスカウンセラーとして高年収を得るためには「国家資格を取得する」「実績を積む」などのスキルアップが必要となります。

関連記事:カウンセラーとは?仕事内容や年収、働く場所を解説

メンタルヘルスカウンセラーと心理カウンセラーの違い

それでは、メンタルヘルスカウンセラーと心理カウンセラーにはどのような違いがあるのでしょうか?

似たような名前ではありますが、目的や身につけるスキル、クライアントなどが異なります。ここからは、それぞれの違いを見ていきましょう。

違い1. カウンセリングの目的

メンタルヘルスカウンセラーと心理カウンセラーは、心の問題の解決という部分では共通しますが、目的が変わります。

  • 心理カウンセラー:生きることに希望を持ってもらうこと
  • メンタルヘルスカウンセラー:仕事に希望を持ってもらうこと

取り返しがつかなくなる前に、心を治療するのが心理カウンセラーであり、職場での心の問題を解消するのがメンタルヘルスカウンセラーです。

仕事の悩みが発展し、人生に希望を見いだせない状況に陥ることも少なくありません。そういった意味では、メンタルヘルスカウンセラーは、心の治療が必要になる前に、しっかりとケアする役割を担っているともいえます。

違い2. スキル

メンタルヘルスカウンセラーと心理カウンセラーでは、習得するスキルにも違いがあります。

心理カウンセラー:心理療法やセラピーを中心に学ぶ

メンタルヘルスカウンセラー:職場で起こる問題対応について学ぶ

心理カウンセラーは、薬などを使わずに話を聞き、寄り添い、サポートしていく心理療法を専門的に学びます。

対してメンタルヘルスカウンセラーは、職場に特化して心の健康をサポートするのがメインで、個人で行えるセルフケアや管理監督者に対するラインケアを学んでいます。

メンタルヘルスに関する方針やストレスに気づくための施策、上司の心のケア方法など、学ぶことは多岐にわたります。

<中見出し>

違い3. クライアント

メンタルヘルスカウンセラーと心理カウンセラーは、クライアントに大きな違いがあります。

  • 心理カウンセラー:個人相談や病院の患者が多い
  • メンタルヘルスカウンセラー:企業やその社員

心理カウンセラーは、生きることに悩みを抱える方がメインとなるため、クライアントの対象は幅広くなります。

対してメンタルヘルスカウンセラーは、企業単位となり、企業で働く従業員が対象です。

経営の悩みを抱える経営者や、部下の対応にストレスを抱える上司、上司のパワハラや同僚間でのストレスなど、当事者の立場によってケアの仕方が異なります。

他にも、全社員にメンタルヘルスケアの研修を実施するなど、「企業」もクライアントの対象です。

メンタルヘルスカウンセラーに役立つ資格

メンタルヘルスカウンセラーといっても、目的によってさまざまな資格が用意されています。

ここでは、実践で役に立つ代表的な6つの資格を紹介します。

精神保健福祉士

試験取得条件福祉系大学・短大・一般大学を卒業
指定資格保有者
難易度高い
試験頻度年1回実施(毎年2月)

精神保健福祉士は、精神科病院など精神障害の方が相談対象の国家資格です。医療を受けた精神障害を持つ方に、社会復帰に関する全般的なサポートを目的とします。

勤め先は、精神保健福祉センターや保健所が主です。医療現場や福祉施設と連携して働くことが多く、退院後の対応や就職のアドバイスなど、精神障害者の心のケアから将来設計まで幅広くサポートしていきます。

精神的な悩みのある方を社会復帰させることを目的としているため、社会貢献度が高い点でやりがいの大きい資格です。また、国家資格の強みもあり、就職面でも有利に働く可能性も高くなります。

社会福祉士

試験取得条件福祉系大学・短大・一般大学を卒業
一般養成施設の卒業(1年以上)
難易度高い
試験頻度年1回実施(毎年2月)

社会福祉士は、福祉全般で悩みを抱える方すべてが対象となる国家資格です。虐待を受ける児童から高齢者まで幅が広く、障害者や低所得者などのサポートも含まれます。

勤め先は、社会福祉施設や児童相談所などが主です。身体または精神、環境において日常生活に支障がある方に対し、心のケアから社会復帰までをサポートします。

さまざまな事例に対して、それぞれの状況に合わせて相談や支援をやっていくため、AIでは対応しきれない点で、今後も需要は高まる資格といえます。また、国家資格の強みもあり就職面でも有利に働く可能性も高くなります。

公認心理士

試験取得条件大学院を卒業
大学・専門学校卒業後、2年以上の実務経験
海外大学での心理科目修了
難易度やや高め
試験頻度年1回実施(毎年2月)

公認心理士は、心理的な悩みのある方すべてが対象となる国家資格です。精神障害者だけでなく、心に悩みを抱える幅広い方に対するサポートを目的とします。

勤め先は、医療・教育・企業・福祉など幅広いです。DVによる心理的な負担やセクハラ・パワハラといった企業で起こりえる悩みに対し、心のケアから自立までをサポートします。

活躍できるフィールドが広く、ストレスや悩みは多くの人に付きまとう問題でもあるため、需要の多い資格といえます。

また、国家資格の強みもあり就職面でも有利に働く可能性も高くなります。

メンタルヘルス・マネジメント検定

試験取得条件なし
難易度コースにより変動
3種・2種…やさしめ
1種…高い
試験頻度年2回実施(毎年3月と11月)

メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場で起こる心の悩みを未然に防ぐための知識を習得できる民間資格です。企業で働くすべての人に対するサポートを目的とします。

勤め先は企業ですが、カウンセラーではないため、専門職種ではありません。一般社員や管理職者が業務に必要性のある場合に活用するのが一般的です。


3種はセルフケア、2種はラインケアが検定内容となり、職場での人間関係に対しての悩みを全般的に対応できます。1種のマスターコースでは、企業組織単位で活躍でき、従業員を評価したりチェックしたりする人事部門に適した資格といえます。

職場環境を良い方向へ向かわせるだけでなく、自分の心のケアも可能なので、すべての人におすすめの資格です。

産業カウンセラー

試験取得条件養成講座を修了
指定の専攻を修了
難易度標準的
※学科と実技あり
試験頻度年1回実施(毎年1月)

産業カウンセラーは、職場でのメンタル面の予防策を目的とした民間資格です。2002年より国家資格から民間資格となりましたが、知名度が高く信頼性もあります。

勤め先は、企業の相談室などが主です。また、営業職の求人も多く、対人の現場職でも生かせます。


メンタルヘルス・マネジメント検定と違い、ストレスや悩みの相談や対処法、メンタルヘルス研修まで、カウンセラーとしての活動がメインです。

職場のメンタルヘルス全般を担う産業カウンセラーは、今後も需要が増えていく資格といえます。

EAPメンタルヘルスカウンセラー

試験取得条件21歳以上かつeMCカリキュラム修了者
難易度標準的
※学科と面接あり
試験頻度年2回実施(毎年7・8月と1・2月)

EAPメンタルヘルスカウンセラーは、職場での心理的なケアをメインにした資格です。うつなどによる休職や離職につながる可能性がある従業員に対して、相談・支援をしていきます。

勤め先は、企業の相談室などが主です。また、人事労務関係でも活躍できます。

産業カウンセラーでは症状が重くなる前のケアを目的としますが、EPAはすでにうつや自律神経失調症といった症状のある従業員に対しての支援がメインです。

ストレスによる離職率が多い昨今、企業から注目を集めている資格でもあります。

メンタルヘルスカウンセラーは職場を支える需要のある仕事

職場で溜まったストレスの早期対策やうつ病などが社会問題になっている現状、メンタルヘルスカウンセラーは魅力的でやりがいのある仕事です。

正社員としてはもちろん、派遣社員や副業としても活躍の場が広く、今後企業からの需要も増えていくことが予想されます。

メンタルヘルスカウンセラーは、実社会における人々の心を救い、感謝される魅力のある仕事です。

資格取得でキャリアアップも目指せるので、メンタルケアに関わる仕事がしたい方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?