カウンセラーと聞くと、一般的には「人の悩みや相談を受ける人」というイメージがありますが、実際の役割について具体的には分からないという方は意外と多いです。
そこでこの記事では、カウンセラーの役割と必要なスキル、資格取得の方法について解説します。
加えて、カウンセリング力を上げる方法や、カウンセラーとして独立するための能力についても紹介しますので、「カウンセラーとして活躍したい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
カウンセラーの役割
カウンセラーの仕事は、人の悩みや相談を聞くことですが、それ以外にもさまざまな役割があります。
まずは、カウンセラーの役割について見ていきましょう。
カウンセリングで問題解決に導く
カウンセリングを受ける目的は人によってさまざまです。カウンセリングを通して、「悩みや不安を抱える人を問題解決に導くこと」「心の病を抱える人の症状を軽減させること」がカウンセラーの役割です。
カウンセラーはほとんどの場合、相談者の話を否定することなく、共感しながら傾聴していきます。
そうすることで相談者の心の負担が軽減されていき、自己肯定感が高まったり、気持ちが前向きになったりするのです。
メンタルケアを身につけさせる
日常生活のストレスや、悩みとうまく付きあうための考え方を身につけさせることも、カウンセラーの役割です。
具体的に解決方法を教えるのではなく、対処するノウハウをカウンセリングを通して伝え、問題を抱える前にアプローチするカウンセリングを行います。
行動するのはあくまで相談者本人であり、カウンセラーは相談者が自ら問題を解決できるようにサポートします。
相談者の心に寄り添いながらメンタルケアを身につけてもらい、二人三脚で問題解決を目指していくこともカウンセラーの役割なのです。
関連記事:カウンセラーに向いている人と向いていない人の特徴とは?
カウンセラーに必要な5つのスキル
カウンセラーになるために、資格は必須ではありません。しかし、悩みや不安を抱える人たちの心のケアやサポートを行わなければならないため、以下のようなスキルが必要です。
- 傾聴力
- 分析力
- 言語化する能力
- 人への興味や関心
- 向上心や知識欲
スキル1. 傾聴力
傾聴力とは、相談者の話に耳を傾けて親身に受け止める力のことです。英語では「アクティブリスニング」といい、傾聴はただ相手の話を聞けばいいというわけではありません。
具体的には、相談内容の意味を理解しながら、顔の表情や声のトーンなどにも注意を払って、相談者の気持ちに寄り添い、話を聴きます。
相談者が考えていること、伝えたいことを深く引き出すことによって円滑なコミュニケーションをとれるため、カウンセラーには重要なスキルの一つです。
コミュニケーションの基本ともいえる傾聴力は、カウンセリングだけでなく、仕事やプライベートなど、さまざまな場面において重要な役割を果たしています。
スキル2. 分析力
カウンセラーには、悩みや問題を分析して本質を探る「分析力」も必要です。悩みを相談する側は、どんなことが原因で悩んでいるのかを自分自身で理解していない場合も多いです。
カウンセラーに話を聞いてもらい、心が軽くなった気がしても、その後どう行動に移せばいいか分からないというケースもあるでしょう。そんなときに必要なのが「分析力」です。
具体的には、相談者の話を聴きながら感情や価値観などを整理し、言語化できていないことまでしっかり分析します。
分析力が弱く、悩みの本質を見出せないまま話が進むと、話す側も聞く側もどのように話を進めればいいか分からない状態になるため、問題を正しく分析し、本質を見つけだす力がカウンセラーには求められます。
まずは傾聴力、さらに分析力を身につけることによって、相談者により深い気づきを与えられるのです。
スキル3. 言語化する能力
傾聴や分析によって悩みの解決法が分かったら、次は相手に解決方法を伝えなければなりません。そのとき必要になるのが「言語化する能力」です。
不安や悩みを抱えている相談者には、カウンセラーの意見が正しく伝わらない場合もあるため、相談者の心に届くような言葉選びが求められます。
これらは、カウンセラーとして経験やキャリアを積むことで鍛えられます。
言語化に自信がない方は、「相手にどんな伝え方をすれば理解してもらえそうか」を常に考えながら、話すようにするといいでしょう。
言語化する力を鍛えることで、意見が通りやすくなったり、自分の考えを客観的にチェックできたりするため、カウンセラーだけでなくプライベートやビジネスシーンでも役立ちます。
スキル4. 人への興味や関心
カウンセラーは、人への興味や関心がなければ務まりません。
カウンセラーとしての知識が豊富でも、人に興味や関心を持たなければ相談者から信頼されず、問題解決に向かうことが難しくなるからです。そのため、相手の話に耳を傾けて、親身に受け止める力が求められます。
また、知識やスキルを多く身につけると、相手を変えようとしてしまいがちですが、そんなときはカウンセラーとして一番大切な部分である、「相手の立場に寄り添って考えること」が大切です。
まずは、相手に興味や関心を持って理解しようと努力することで、相手を深く理解でき、必要な要素を伝えられるようになります。
ただし、相手に寄り添いすぎると依存や共依存に陥ってしまう可能性もあるため、そうならないようにブレーキをかけていくことも大切です。
スキル5. 向上心や知識欲
カウンセラーの仕事は、知識や技術が日々アップデートされていくため、既に得た知識が古いものにならないよう日々勉強する必要があります。
相談者が抱える悩みは複雑であることが多く、薄い知識では解決するのが困難な場合がほとんどです。そのため、一人一人にあったケアやサポートのための専門知識が必要になります。
カウンセラー関連の資格を取得して終わりにするのではなく、そのあとも学び続けていかなければならないため、学習を継続するための向上心や知識欲が求められるのです。
「多くの悩みを解決していきたい」という情熱を持った人なら、カウンセラーとして長く活躍していけるでしょう。
カウンセラーの代表的な資格
カウンセラーを名乗るのに、資格は必ずしも必要ではありません。しかし、一定のスキルがあることを証明するものとして資格取得は有用です。
カウンセラーとして活躍するためには、カウンセリングの知識やスキルが身につく心理系の資格を取得するといいでしょう。
ここからは、カウンセラーとして活躍するためにおすすめの、代表的な資格を6つ紹介します。
臨床心理士
臨床心理士は、臨床心理学に基づいた知識や技術を用いながら、悩み解決のサポートをする心の専門家です。
心の問題で、身体の異常や生活上の問題を抱えている人たち一人一人と、じっくり向き合いながら、投薬を行わずに自分自身で問題解決できるようサポートしていきます。
臨床心理士になるには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定している資格に合格する必要があり、試験を受けるためには「指定の大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を満たしている」「臨床心理士養成に関する専門大学を修了している」などの、受験資格の取得が必要です。
公認心理師
公認心理師は、2017年に「公認心理師法」によって誕生した国家資格であり、心に問題を抱えている人に対して、助言や指導などをしながらケアやサポートを行います。
公認心理師が活躍できる場は、医療機関や福祉、企業や学校、ハローワークなどさまざまで、需要が高い資格です。
公認心理師試験を受けるためには「4年生大学で指定の科目を履修後、さらに大学院で指定の科目を履修するルート」や「4年制大学で指定の科目を履修後、指定の施設で2年以上の実務経験を積むルート」など、全部で7ルートあります。
どのルートでも指定科目の履修は必須条件となっているため、ハードルが高く、資格取得までに時間がかかるといった特徴があります。
しかし、日本で初めて誕生した心理学に関する国家資格であるため、信頼性が高く、心理カウンセラーを目指す方に人気です。
認定心理士
認定心理士は、日本心理学会が認定した心理学の基礎資格であり、4年制大学で心理学の知識や技能の基本を修得していることを証明できます。
認定心理士は、ボランティア活動や一般企業などで心理学の知識や技能を生かしたい人や、将来心理学の専門職を目指す人におすすめの資格の一つです。
ただし、認定心理士のみの資格では、病院や福祉施設などで心理専門職の仕事に就くのは難しいため、心理系資格の中でも知名度や信頼性の高い「臨床心理士」の資格をあわせて取得すると有利になります。
認定心理士の資格を取得するためには、心理学関係科目の所定の単位を取得する必要があり、認定単位を満たすには、心理学の基礎科目から12単位以上、選択科目から16単位以上、残り8単位の、合計36単位以上を修得する必要があります。
キャリアカウンセラー
キャリアカウンセラーは、相談者の話を聴くことでその人にとって幸せな人生やキャリアを選択できるようサポートする、キャリア形成の専門家です。
キャリアコンサルタントは、企業の人事部門だけでなく、大学のキャリアセンター、公的就業支援機関、人材派遣会社など、幅広い分野での活躍が期待されています。
日本キャリア開発協会(JCDA)が認定するキャリアカウンセラーの資格を取得するためには、JCDA認定CDA養成カリキュラム(CDA資格対応キャリアコンサルタント養成講座)を受講・修了し「国家資格キャリアコンサルタント試験」に合格する必要があります。
産業カウンセラー
産業カウンセラーは、心理学的手法を用いて、職場で働く人たちのカウンセリングを行います。
産業カウンセラーの資格は、一般社団法人 日本産業カウンセラー協会が認定する「産業カウンセラー試験」に合格することで取得できます。
産業カウンセラーの受験資格は、協会が行う産業カウンセリングの指定講座を受講し修了していることで受験できます。
また、協会の指定講座を受講していなくとも、大学院研究科で指定の専攻を修了しかつ指定の単位を取得しているなど、協会が指定した条件に該当する場合も受験資格を得られます。
メンタル心理ヘルスカウンセラー
メンタル心理ヘルスカウンセラーは、心理学の基礎知識やストレスが引き起こす症状、治療法を十分に理解し、カウンセラーとして活動できるレベルに達していると認められた人が取得できる資格です。
資格の認定は、日本メディカル心理セラピー協会が実施しており、インターネットからの受験が可能で、受験資格も特に必要ありません。
関連記事:心理カウンセラーの資格とは?種類、向いている人を解説
カウンセリング力を磨く方法
続いて、カウンセリング力を磨くための方法について、以下3つを解説します。
- 通信講座
- カウンセリングスクール
- 独学
方法1. 通信講座
カウンセリング力を磨く方法の一つ目は、通信講座で学習する方法です。
カウンセラーの資格には、前述したもの以外に、「メンタルケアカウンセラー」「メンタルケア心理士」「メンタル心理カウンセラー」などがあり、学歴や年齢など、受講するにあたっての条件はありません。
スケジュールを管理する力が必要になりますが、わざわざスクールに通わなくても、自宅で好きな時間に自分のペースで学習を進められるため、仕事で忙しい方や主婦の方にもおすすめです。
費用は3〜5万円程度、標準学習時間は2〜4カ月程となっており、カウンセリングを学ぶのが初めての方でも、取り組みやすい資格です。
方法2. カウンセリングスクール
「通信講座では不安」という方や、「独学は苦手」という方は、スクールに通う方法もあります。中には、通学だけでなく通信で学べるスクールもあり、通信であれば自分の好きな時間に学習できます。
実際にカウンセラーとして活躍している講師の授業を受けられたり、実践が豊富に学べたりするなどがメリットです。
養成講座を受講する際は、入学金や受講料などがかかるため、心理学とカウンセリングの基礎から応用まで全て学ぶと、35〜50万円程かかります。養成スクールなどでトレーニングや実践を積んで実力をつければ、最終的にはカウンセラーとして独立することも可能です。
方法3. 独学
あまり費用をかけずに、カウンセラーのスキルを身につけたいという方には、独学で学習する方法もあります。
自分のペースで学習できるというメリットはあるものの、独学だけでは取得できない資格や、勉強を継続させられる自己管理能力が必要になるといったデメリットもあります。
また、知識を得られても、実践する経験を積めないため、結果的には効率が悪いというケースもあるでしょう。
カウンセラーについて初めて学習する方や、もっと詳しく学びたいという方は、通信講座やスクールで学ぶ方法がおすすめです。
副業や起業にはカウンセリング以外の能力も必要
副業あるいは起業をしてカウンセラーとして活躍する場合は、カウンセリングのスキル以外に、「経営力」や「集客力」も求められます。
1. 経営力
「経営力」は、事業を継続、発展させていくためのスキルです。
カウンセリングの原価や固定費などがほぼかからないため、利益が多くなりますが、その反面、収支の管理だけでなく税金などの経理なども自分で行う必要があり、確定申告や事務作業も多くなります。
そのため、カウンセリングの知識だけでなく、起業するためにさまざまな知識を習得する必要があります。
書籍で学ぶ、あるいはセミナーなどに参加するなど、起業に関する情報収集も大切なポイントです。
2. 集客力
カウンセラーとして独立すると、事業が軌道にのるまでの間は収入が不安定になり、自分でクライアントを集める力が必要になります。
会社などで働くカウンセラーとは異なり、カウンセラーとしての売上がそのまま収入になるからです。カウンセリングの経験が十分にあっても、集客力がなくては経営維持が難しくなるケースも珍しくありません。
「売り込まなくても自然に売れていく状態」にするには、マーケティング力はもちろん、知識やスキル、経験が必要になります。
マーケティング力を磨くには、副業カウンセラーとして活動するのもおすすめです。副業をはじめてから、本業の半分ほどの収入を得られるようになれば、カウンセラーとして独立しても、集客するのはそれほど困難ではないでしょう。
関連記事:カウンセラーとして独立開業!方法やメリット、資格の有無を解説
カウンセリング力を磨くことで人の役に立つカウンセラーになれる
カウンセリングには、傾聴力や分析力、言語化する能力、人への興味・関心、向上心や知識欲など、さまざまなスキルが必要になり、これらのスキルは、普段の生活や仕事ではなかなか身につきません。
また、カウンセラーとして活躍するためには、カウンセリングの知識だけでなく経験も重要となり、こういったスキルを身につけることで、人の役に立つカウンセリングができるようになります。
しかし、全てのスキルが自分に備わっていなくても、スクールに通ったり、通信講座を受講したり、自分で学習することでカウンセリング力は磨けます。
まずは自分に足りないものを把握し、学習を進めながら、人の役に立つカウンセラーを目指していきましょう。