公認心理師はコーチングやカウンセラーなど、心理系職種の開業や副業に役立つ資格のひとつです。しかし、設立されてから日が浅いために「公認心理師とは、どのような仕事なの?」「年収はどれくらい?」など疑問に思う方も多いでしょう。

仙道
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本記事では公認心理師の受験資格や、勤務場所ごとの年収を紹介します。臨床心理士・認定心理士との違いや、独学に役立つテキスト・アプリもあわせて解説。公認心理師について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください!

公認心理師とは?

公認心理師とは、2017年に制定された公認心理師法によって誕生した資格です。ここでは、公認心理師の概要や現職者の状況について見ていきましょう。

心理支援を専門とした国家資格

公認心理師は、心理支援を専門とした国家資格です。仕事内容については、厚生労働省で次のように定めています。

  • 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
  • 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
  • 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
  • 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供

引用:厚生労働省「公認心理師とは」

つまり、公認心理師のできることを簡潔にまとめると下表のとおりです。

公認心理師のできること内容
心理アセスメント行動観察や心理検査など
心理相談カウンセリングや心理療法など
心理コンサルテーション医師や教師、関係者などへの支援
心理教育メンタルヘルス研修会や予防教育の実施など

上記を実行するためには心理支援に関する知識や技術について継続的に学び、国家試験に合格する必要があります。

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受験資格は公認心理師の受験資格とは?社会人や主婦にもなれる?、試験の難易度は公認心理師試験の難易度はどれくらい?をそれぞれ参考にしてみてください!

現職者の年齢や性別

公認心理師の現職者は、下表のように年々増加しています。

登録者数
2019年24,056人
2020年41,556人
2021年54,248人
2022年69,875人

※いずれも3月末時点の人数

参考:一般財団法人日本心理研修センター「公認心理師の都道府県別登録者数」
また、2021年に13,688人が回答した厚生労働省の実態調査では、年齢別の割合も判明しています。

年齢人数割合
20代1,296人9.5%
30代4,200人30.7%
40代4,099人29.9%
50代2,684人19.6%
60代1,280人9.4%
70代119人0.9%
80代以上/不明回答10人0.1%

参考:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

公認心理師でもっとも多いのは30代~40代ですが、今後大学などのカリキュラムが整えば20代での資格保有者も増えてくるでしょう。

さらに、同調査では公認心理師のうち男性が26.2%、女性が73.0%となっています。このように女性の割合が多い傾向は、他の心理系職種と同様です。

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カウンセリングにおける男女の違いや強みについて知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください!

関連記事:女性カウンセラーと男性カウンセラーの違いは?強みと選ぶ時の注意点を解説

公認心理師と混同しやすい職種との違い

公認心理師と混同しやすい職種として、臨床心理士と認定心理士の2つが挙げられます。ここでは、それぞれの違いを見ていきましょう。

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臨床心理士などカウンセラーに有利な資格について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください!

関連記事:心理カウンセラーに必要な資格とは?種類や向いている人をまとめて解説

臨床心理士との違い

公認心理師は国家資格なのに対し、臨床心理士は民間資格です。このほか、下表のようにさまざまな点で違いがあります。

公認心理師臨床心理士
資格の種類国家資格民間資格
(公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定)
名称使用公認心理師法による名称独占※商標登録による実質的な名称独占
認定開始年2018年1988年
登録者数(2022年度末)69,875人40,749人
業務・心理アセスメント
・心理相談
・心理コンサルテーション
・心理教育
・臨床心理検査
・臨床心理面接
・臨床心理的地域支援
・臨床心理的研究/調査
試験内容筆記試験(マークシート)・筆記試験(マークシート/論述)
・口頭面接試験
費用・受験費用:28,700円
・登録手数料:7,200円
・申請書類の請求費用:1,500円
・受験費用:30,000円
・登録手数料:50,000円
・更新手数料:20,000円
資格更新なし5年ごと

※:資格を持っている人だけが名乗れる(例:栄養士や保育士など)⇔業務独占:資格を持っている人だけがその業務を実行できる(例:医師や看護師など)

参考:一般財団法人日本心理研修センター「公認心理師試験」

参考:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」

上表を見ると「結局、資格を取るならどっちがいいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。結論から言うと、早期に資格を取得したい場合は臨床心理士、将来性を求めるなら公認心理師がおすすめです。

認知度は臨床心理士のほうが高く、とくに医療現場では臨床心理士が求められるケースが多くなっています。一方で、公的機関の求人では応募の第一条件が公認心理師となるケースが増えてきているのも事実です。

もっとも汎用性が高いのは公認心理師と臨床心理士、両方の資格を取得しているケース。実際、約71%の公認心理師が臨床心理士の資格も保有しています。また、学校心理士や特別支援教育士を含めた心理専門職4資格を保有している方は約79%です。

参考:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

ただし、先ほどの表にもあるように、臨床心理士は受験費用や更新費用が高い傾向にあります。現職者の中には臨床心理士の資格を更新せず、公認心理師一択に絞るケースも増えつつあります。

心理系の資格を取得する際は、必要な準備期間やコストを踏まえて自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。

認定心理士との違い

認定心理士も臨床心理士と同様に、民間資格です。公認心理師との違いは、下表のようなものが挙げられます。

公認心理師認定心理士
資格の種類国家資格民間資格
(公益社団法人日本心理学会が認定)
名称使用公認心理師法による名称独占※
認定開始年2018年1990年
登録者数(2022年度末)69,875人70,839人
業務・心理アセスメント
・心理相談
・心理コンサルテーション
・心理教育
・心理的ケア
・カウンセリング
・療育
・環境整備 など
試験内容筆記試験(マークシート)なし
費用・受験費用:28,700円
・登録手数料:7,200円
・審査料:11,000円
・認定料:30,000円
資格更新なしなし

※:資格を持っている人だけが名乗れる(例:栄養士や保育士など)⇔業務独占:資格を持っている人だけがその業務を実行できる(例:医師や看護師など)

参考:一般財団法人日本心理研修センター「公認心理師試験」
参考:公益社団法人日本心理学会「認定心理士の資格を取りたい方」

認定心理士は4年制大学で心理学の単位を一定数修了していれば、誰でも取得できます。心理学の基礎を学べるため、ほかの心理系資格とあわせて取得するケースが多い点が特徴的です。

逆に言うと、修得できるのは基礎的な知識と技術のみ。つまり、考え方やコミュニケーションの仕方に役立つ一方で、スキルアップや収入に直結する資格ではありません。

ただし、放送大学による調査によると、就職活動にあたって認定心理士の保有が「有効だった」と回答する方は21%になっています。向上心があるなど採用担当者へ好印象を与えられる点は、心理系の職種へ就く際、有効に働くでしょう。

参考:放送大学「認定心理士」

公認心理師はどこで働ける?

ここでは厚生労働省の実態調査をもとに、公認心理師の勤務場所や仕事内容を紹介します。なお、公認心理師が活躍している主な分野は、次の6つです。

  • 保健医療
  • 福祉
  • 教育
  • 産業労働
  • 司法犯罪
  • その他(相談機関や大学など)

引用:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

公認心理師の約45%は複数の分野で働いており、その中でも保健医療や福祉、教育が大部分を占めます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

参考:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

①保健医療:約30%

公認心理師として携わる方がもっとも多いのが、保健医療分野です。主な職場と就業割合は、下表のようになっています。

職場就業割合
1位精神科病院約30%
2位一般病院約26%
3位精神科診療所約23%
その他保健所・一般診療所など約3%~約12%

一見すると精神疾患系の支援が多いように見えますが、実際に関わるクライアントは胎児期から終末期までさまざまです。つまり、人の一生に寄り添い、心身や環境の変化に合わせて多様な支援を実施します。

また、保健医療分野における公認心理師の仕事内容と各割合は、下表のとおりです。

主な仕事内容割合
心理支援92.0%
心理支援の管理・調整25.8%
心理教育や研究など6.7%
ほかの専門職に基づく業務※13.1%
その他0.8%

※:医療職や福祉職、教育職などとして働きながらダブルライセンスとして公認心理師を取得した層

9割以上が従事している心理支援では各種検査を用いた専門性の高いアセスメントや、他職種とのさらなる連携やアウトリーチが今後の課題とされています。

②教育:約29%

保健医療分野の次に公認心理師として携わる方が多いのが、教育分野です。主な職場と就業割合は、下表のようになっています。

職場就業割合
1位スクールカウンセラー約56%
2位教育委員会など約25%
3位大学などの学生相談室約22%
その他特別支援学校・フリースクールなど約2%~7%

もっとも多いのは、小中高等学校のスクールカウンセラー。1〜2校を担当する公認心理師が半数を占めるなか、5校以上に勤務する方も1割ほどいます。また、教育分野における公認心理師の仕事内容と各割合は、下表のとおりです。

主な仕事内容割合
心理支援85.9%
心理支援の管理・調整37.2%
心理教育や研究など8.3%
ほかの専門職に基づく業務13.5%
その他1.1%

保健医療分野と比較すると、心理支援の管理・調整や教育・研究といった仕事の割合が多くなっています。心理支援の対象は小学生が約61%でもっとも高く、発達障がいなどへの対応が中心です。

今後は公認心理師の視点にもとづいた教職員へのアドバイスや、児童期・思春期特有の問題(いじめや不登校など)に対する専門的な対応がより期待されています。

③福祉:約21%

公認心理師の勤務場所としてTOP3に入るのが、福祉分野です。主な職場と就業割合は、下表のようになっています。

職場就業割合
1位児童相談所約17%
2位児童発達支援センター約15%
3位障がい児通所支援事業所約11%
その他保育所・児童館など約1%~約10%

児童を対象とした機関・施設への勤務が多く、教育分野と同様に公認心理師には児童期・思春期特有の問題に対する対応が求められていることがわかります。ただし、高齢者福祉や女性福祉に従事している方もおり、勤務場所が幅広い領域にわたっているのも事実です。

また、福祉分野における公認心理師の仕事内容と各割合は、下表のようになっています。

主な仕事内容割合
心理支援82.0%
心理支援の管理・調整30.0%
心理教育や研究など3.6%
ほかの専門職に基づく業務24.2%
その他1.6%

保健医療分野や教育分野と大きく異なるのは、「ほかの専門職に基づく業務」の割合が多い点です。社会福祉士や精神保健福祉士などの福祉系資格を保有し、公認心理師の知識・スキルと合わせて勤務に活かしていることが分かっています。

今後は児童虐待や発達障がいなどに対する専門的なアセスメントのほか、家族に対する心理教育や助言にも大きな期待が寄せられています。

④産業・労働:約6%

従事する人の割合はグッと下がりますが、産業・労働分野も公認心理師が活躍できる領域のひとつです。主な職場と就業割合は、下表のようになっています。

職場就業割合
1位組織内の健康管理・相談室約50%
2位組織外の健康管理・相談室約34%
3位上記以外の就労支援機関(ハローワークなど)約11%
その他障がい者職業センター・生活支援センターなど約5%~約7%

職場のメンタルヘルス対策が重要視されるようになった背景もあり、組織内外の相談室へ勤務する公認心理師が増えています。また、産業・労働分野における公認心理師の仕事内容と各割合は、下表のとおりです。

主な仕事内容割合
心理支援84.6%
心理支援の管理・調整44.8%
心理教育や研究など7.0%
ほかの専門職に基づく業務12.5%
その他2.8%

就労者本人への心理支援はもちろん、上司や管理職者へのコンサルテーションが多い点も産業・労働分野の特徴。今後は上記に加え、職場復帰に関する相談・支援や治療と就労の両立支援なども期待されています。

⑤司法・犯罪:約5%

公認心理師として携わる方がもっとも少ないのが、司法・犯罪分野です。主な職場と就業割合は、下表のようになっています。

職場就業割合
1位法務省矯正局関係(少年院など)約38%
2位警察関係約18%
3位裁判所関係(家庭裁判所など)約17%
その他更生保護施設・被害者支援など約5%~10%

上記より、とくに自分の行いを振り返り見直す際に、公認心理師の力が求められることが分かります。また、司法・犯罪分野における公認心理師の仕事内容と各割合は、下表のとおりです。

主な仕事内容割合
心理支援71.8%
心理支援の管理・調整32.0%
心理教育や研究など10.9%
ほかの専門職に基づく業務19.8%
その他3.1%

産業・労働分野と同様に、心理支援の管理・調整に従事する公認心理師の割合が高い点が特徴的です。司法・犯罪分野の関係者へコンサルテーションし、間接的に加害者・被害者などを支援する形が多いといえるでしょう。

今後は再犯防止に向けた処遇や非行・犯罪の予防に関する活動など、「犯罪を未然に防ぐ」ことを重視したアプローチが期待されています。

⑥その他:約9%

公認心理師はこれまで紹介した5分野以外にも、下表のような機関・組織に従事する方もいます。

職場就業割合
1位大学・研究所など約41%
2位私設の心理相談機関など約34%
3位大学付属などの地域向け心理相談施設約20%
その他5分野に該当しないNPOなど約5%~約10%

また、当分野における公認心理師の仕事内容と各割合は、下表のとおりです。

主な仕事内容割合
心理支援68.1%
心理支援の管理・調整19.7%
心理教育や研究など38.2%
ほかの専門職に基づく業務12.8%
その他2.7%

大学などの勤務場所が多いため、仕事内容も心理教育や研究の割合が高くなっています。

ただし、私設心理相談機関に絞ると、心理支援の割合は98.2%に上昇。5分野には該当しないものの、複数の分野にわたる横断的な課題の解決に取り組んでいる公認心理師が多いようです。

今後はクライアント本人へのアプローチだけでなく、家族や関係者への心理的支援や疾病理解などを促すカウンセリングの拡充が期待されています。

公認心理師の年収はどれくらい?

公認心理師の年収は、どこで働くかによって異なります。ここでは、次の2つのパターンにおける公認心理師の年収を紹介します。

  • 公的機関で働く場合
  • 独立開業した場合
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公認心理師の資格を活かせるカウンセラーの年収や将来性について知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください!

関連記事:カウンセラーの需要が高まる理由は?将来性と魅力を徹底解説

公的機関で働く場合

公的機関で働く公認心理師の平均年収は、下表のとおりです。なお、ボーナスは計算外となっています。

300万円未満300万円以上600万円未満600万円以上1,200万円未満1,200万円以上無給※
保健医療33.1%26.7%1.9%0.7%0.4%
教育16.5%22.4%3.0%0.9%0.7%
福祉29.4%33.5%1.6%0.4%0.8%
産業・労働19.0%28.2%3.2%0.9%0.8%
司法・犯罪9.4%51.5%12.4%0.0%0.7%
その他15.0%23.6%11.2%0.7%2.4%

※無償のボランティアなど

参考:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

保健医療以外の分野では、年収300万円以上600万円未満がもっとも多い結果に。司法・犯罪分野やその他分野は、600万円以上1,200万円未満の割合も高くなっています。

分野によって年収に差が出ている要因としては、もともとの給与水準や勤務形態(常勤・非常勤)が影響していると推測されます。

公認心理師として公的機関に勤めたい場合は年収だけでなく、求められるスキルレベルやワークライフバランスなどを踏まえて勤務場所を選ぶとよいでしょう。

独立開業した場合

厚生労働省の実態調査では、経験年数が長くなるほど年収も高くなる傾向にあることがわかっています。そのため、ある程度のスキルを保有し稼ぐ仕組みづくりができれば、独立開業後に年収1,000万円以上も夢ではありません。

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開業カウンセラーの年収水準については、こちらの記事で解説しています。独立の手順やメリット・デメリットも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください!

関連記事:カウンセラーの開業成功の秘訣は?年収水準や注意点も解説!

 

公認心理師の将来性は?

公認心理師の歴史はまだ浅いものの、心理系で唯一の国家資格です。そのため、認知度が向上すれば、ますます需要が増えていくと推測されます。

また、多分野かつ横断的に専門性を活かして活躍できる点は、公認心理師ならではの強みです。たとえば、次のような多様な課題に対しても、公認心理師はさまざまな職種や機関と連携しながら支援できます。

  • 発達障がい(教育)
  • 自殺予防対策(産業・労働)
  • 被災者支援(福祉) など

引用:厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

今後もクライアント本人へのアプローチはもちろん、家族支援や環境整備など幅広い場面で公認心理師の知識やスキルを活かせるでしょう。

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公認心理師の資格が役立つカウンセラーは、全体的に需要が高まっています。理由や将来性について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください!

関連記事:カウンセラーの需要が高まる理由は?将来性と魅力を徹底解説

公認心理師の受験資格とは?社会人や主婦にもなれる?

公認心理師の資格を得るためには、国家試験に合格する必要があります。公認心理師の受験資格は区分A〜区分Fまでの7つがあり、誰でも受けられるわけではありません。

引用:厚生労働省「公認心理師の資格取得方法について」

以前は、実務経験と講習の受講によって受験資格を得られる区分G(いわゆるGルート)がありました。しかし、2022年の第5回公認心理師試験をもって、区分Gの募集は終了しています。

なお、D~Fは特例措置として設けられ、臨床心理士を志望して大学や大学院に通っている人向けの受験資格です。社会人や主婦が最短で公認心理師になるためには、放送大学などの通信制大学を利用したAルートが無難といえるでしょう。

または所定の科目を修了している場合は、E・Fルートが有力です。自分が該当するルートを手軽に調べたい場合は、日本遠隔カウンセリング協会(JTA)のオンライン判定サイト公認心理師受験資格チェッカーを利用してみてください。

ここでは各区分の詳細について、ゴール別に分けて紹介します。

  • 大学院で所定の科目を履修する
  • プログラム認定施設で実務経験を積む
  • 海外の大学・大学院等で所定の科目を履修する

それぞれの流れや履修科目数、最短年数などを見ていきましょう。

大学院で所定の科目を履修する

大学院で所定の科目を履修するルートは、下表の4つです。

区分A区分D1※1区分D2※2区分E※1
主な対象者・新入生
・編入生 など
・大学院生
・大学院の修了生
・大学院生
・大学院の修了生
・在学生
・卒業生
流れと履修科目数①4年制大学や専門学校:25科目
②大学院:10科目
①大学院:6科目(所定科目の6割)①大学院:10科目①4年制大学や専門学校:12科目
②大学院:10科目
受験資格を得るまでの最短年数計6年
(①4年、②2年)
残り年数による残り年数による①の残り年数による

※1:2017年9月14日時点

※2:※1に加え、2017年9月15日以後に所定の科目を履修すること

本ルートは高校生や他学部の学生はもちろん、社会人も対象になります。なお、履修が必要な科目は下表のとおりです。

4年制大学や専門学校の履修科目大学院の履修科目
1. 公認心理師の職責
2. 心理学概論
3. 臨床心理学概論
4. 心理学研究法
5. 心理学統計法
6. 心理学実験
7. 知覚・認知心理学
8. 学習・言語心理学
9. 感情・人格心理学
10. 神経・生理心理学
11. 社会・集団・家族心理学
12. 発達心理学
13. 障害者(児)心理学
14. 心理的アセスメント
15. 心理学的支援法
16. 健康・医療心理学
17. 福祉心理学
18. 教育・学校心理学
19. 司法・犯罪心理学
20. 産業・組織心理学
21. 人体の構造と機能及び疾病
22. 精神疾患とその治療
23. 関係行政論
24. 心理演習
25. 心理実習(80時間以上)
1.保健医療分野に関する理論と支援の展開
2. 福祉分野に関する理論と支援の展開
3. 教育分野に関する理論と支援の展開
4. 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
5. 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
6. 心理的アセスメントに関する理論と実践
7. 心理支援に関する理論と実践
8. 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践
9. 心の健康教育に関する理論と実践
10. 心理実践実習(450時間以上)

学ぶ範囲が多いのはもちろん、それぞれ長時間の実習が必要なため、公認心理師になるためには相応の覚悟が必要だといえます。

プログラム認定施設で実務経験を積む

プログラム認定施設で実務経験を積むルートは、下表の2つです。

区分B区分F※1
主な対象者・新入生
・卒業生
・就職中の方 など
・在学生
・卒業生
流れと履修科目数①4年制大学や専門学校:25科目
②実務:2年以上※2
①4年制大学や専門学校:12科目
②実務:2年以上※2
受験資格を得るまでの最短年数計7~8年
(①4年、②2年以上)
①の残り年数による

※1:2017年9月14日時点

※2:公認心理師カリキュラム等検討会では②のクリアには実質3年ほどかかると見込んでいる

区分BはAと似ていますが、大学卒業後に働きながら資格取得を目指せます。なお、実務経験を積める認定施設は、次の9つです。

参考:厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」

金銭的な理由などから大学院への進学が難しい場合は、実務経験を積みながら公認心理師を目指すのもひとつの方法です。実務を通じて、より実践的な知識・スキルも早期に学べるでしょう。

海外の大学・大学院等で所定の科目を履修する

公認心理師の受験資格を得るルートとして、もっともマイナーなのが下表にある区分Cです。

区分C
主な対象者・海外の大学や大学院で心理学を修めた方
・大学院の課程修了相当の比較を取得した方(カウンセラーやサイコロジストなど)
流れと履修科目数①海外の大学や大学院など:心理学を修了
②文部科学省や厚生労働省の個別認定
受験資格を得るまでの最短年数4~6年

国内の大学などよりも多くの講義や実習が必要なうえ、公的資格の取得難易度も高い傾向にあります。そのため、海外の大学・大学院の既卒者以外は、あまり選択肢に入ってこないルートといえるでしょう。

公認心理師試験の難易度はどれくらい?

公認心理師の国家試験は、2023年を含めると計6回実施されてきました。ここでは、試験の概要や合格率について見ていきましょう。

試験の概要

2023年5月14日に行われた第6回の試験概要は、下表のとおりです。

申込受付期間2023年2月27日(月)~2023年3月17日(金)
試験日2023年5月14日(日)
合格発表日2023年6月9日(金)
試験地東京都、大阪府
試験時間120分
出題形式筆記(マークシート)
合格ライン総得点の60%以上

参考:一般財団法人日本心理研修センター「公認心理師試験」

試験は年1回のため、受験を希望する方は申請漏れのないように注意しましょう。

合格率は50%前後

公認心理師国家試験の合格率は、50%前後です。第1回〜第5回における合格率は、下表のようになっています。

試験合格率
第1回(2018年9月実施分)79.6%
第1回(2018年12月実施分)64.5%
第2回(2019年8月)46.4%
第3回(2020年12月)53.4%
第4回(2021年9月58.6%
第5回(2022年7月)48.3%

参考:一般財団法人日本心理研修センター「公認心理師試験」

公認心理師とは?」でも紹介したように、登録者数はわずか4年で約3倍と急増しています。公認心理師の飽和状態を避けつつ、より優秀な人材を確保するという意味では、国家試験の難易度は今後さらに高くなる可能性も出てくるでしょう。

公認心理師の独学に役立つテキスト・アプリ5選

最後に、資格勉強で活用したいテキスト・アプリを5つ紹介します。

  • 「心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答」
  • 「公認心理師必携テキスト」
  • 「赤本 公認心理師国試対策2022」
  • 「公認心理師 国家試験 対策」
  • 「公認心理師国家試験 過去問クイズ」

それぞれ詳しく見ていきましょう。

「心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答」

「心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答」は、公認心理師の勉強で押さえておきたいポイントと一問一答をまとめた本です。第1回から第3回の国家試験で出題された内容を踏まえているため、学習中の要点整理や試験前の最終チェックに向いています。

口コミは下記のとおり、要点が上手にまとまっているからこそ、メリットだけでなくデメリットを感じている方もいるようです。

好意的な口コミの例批判的な口コミの例
・本の内容を丸暗記すると合格できそう
・図表が多いため、書くよりも見て覚えるタイプの人におすすめ
・基礎を知っているうえで問題を解くくらいがちょうどいい
・要点がまとまりすぎて、初心者にはわかりにくい
・流れで勉強したい人は、別の本も必要かも

公認心理師について初めて学習する方や、より詳細な情報を得たい方は後述のテキストと併用するとよいでしょう。

「公認心理師必携テキスト」

「公認心理師必携テキスト」は試験対策だけでなく、資格取得後の実務にも活かせる実用的な本です。オールカラーの図解付きのため、見やすい・わかりやすい構成になっています。

口コミは下記のとおり、教科書のように基礎を一から学ぶのに適していると感じた方が多いようです。

好意的な口コミの例批判的な口コミの例
・説明が多く、わかりやすい
・入門編として使う分にはいいかも
・解説では人物の写真やエピソードも添付されていて、興味がそそられる
・参考書というよりは教科書のようで、効率的な学習には不向き
・厚いわりに内容は薄い

「赤本 公認心理師国試対策2022」

「赤本 公認心理師国試対策2022」は、過去5回分の国家試験に河合塾の模試を加えた過去問集です。約850問もの問題が項目別に配置され、出題基準(ブループリント)も網羅しています。

口コミは下記のとおり、本格的に試験対策したいときに活用できると感じた方が多いようです。

好意的な口コミの例批判的な口コミの例
・基本的な試験対策に有効
・確認したい内容をすぐに見つけられて、使い勝手がよかった
・この本1冊で国家試験に合格できた
・ページ構成の関係で、問題を解いている途中で答えが見える部分もある
・専門用語が多く、初学者には向いていない

前述した要点整理のテキストと併用すると、より大きな効果が期待できるでしょう。

「公認心理師 国家試験 対策」

「公認心理師 国家試験 対策」は、第1回から第3回の試験問題を収録した受験対策アプリです。制限時間を設けられるため、実際の試験と同じような緊張感で問題を解く練習にもなります。

口コミは下記のとおり、簡易的なアプリのため手軽さが光る反面、別途テキストなどによる学習が必要だと感じる方が多いようです。

好意的な口コミの例批判的な口コミの例
・公認心理師関係のアプリの中で一番問題が多い
・ランダム出題がうれしい
・出題範囲をざっくり把握する際にも有効
・正誤に対する解説がないため、その部分は自分で学習する必要あり
・時折フリーズあり、改善してほしい

とくに、通学・通勤時の隙間時間を有効活用したい方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

「公認心理師国家試験 過去問クイズ」

「公認心理師国家試験 過去問クイズ」は、心理職支援団体MOSS(モス)が運営するWebアプリです。「今日のチャレンジ」としてランダム10問に取り組めるほか、年度別・項目別の過去問クイズに挑戦できます。

口コミは下記のとおり、クイズ形式の出題を楽しみながらコツコツを学べると感じている方が多いようです。

好意的な口コミの例批判的な口コミの例
・楽しく勉強できる
・スマホいじりたいときは、まずMOSSアプリを開くようにしている
・正しく答えているのに、不正解と表示されることがある

無料ながらも解説がきちんと表示されるため、手軽さと実用性の両方を求める方におすすめのアプリとなっています。

公認心理師は心理職で唯一無二の国家資格!

公認心理師は心理職で唯一の国家資格であり、登録者数・需要ともに年々増加している職種です。受験資格を得るには相応の年数と努力が必要ですが、取得できれば更新を必要とせず、生涯を通じて活用できます。

公認心理師の資格取得を目指す方は、便利なテキストやアプリなどを利用しながら受験対策を進めていきましょう。