副業を検討をしている方の中には、「確定申告はどうすれば良いのか」「そもそも確定申告は必要なのか?」と思っている方が多いです。
そこでこの記事では、副業で確定申告が必要な条件から確定申告の手続き方法、よくある質問まで詳しく解説していきます。副業の確定申告に関して悩んでいる全ての人にとって必見の内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
副業とは?定義と種類を解説
こちらでは最初に以下の2点について詳しく紹介します。
- そもそも副業の定義とは何か
- ひとくちに副業といってもどんな種類があるのか
検討している副業の仕方がどの種類に当てはまるのか、まずは確認しておきましょう。
副業の定義
そもそも副業とは、「本業以外の仕事で収入を得ること」です。本業以外にアルバイトをしたり、在宅でビジネスを始めたり、と形はさまざまですが収入があれば基本的には副業に該当します。
また、「本業以外の仕事で収入を得ること」に労働が伴っている必要はありません。例えば、ブログの運営や不動産の経営のように、収入が入る人自身が労働をしていなくても副業にあたります。
日本の法律において、現在(※)副業の禁止を規定したものはありませんが、会社の就業規則によっては副業を禁止している場合があります。副業を行うことで懲戒の対象になるかもしれませんので、事前に確認しておきましょう。
※2023年12月
副業とは
副業とは、一般的に「本業以外に小さな収入源を確保する働き方をすること」とされています。本業以外に単発で何らかの仕事を受注したり、知人が経営しているお店のお手伝いをすることが副業のイメージです。
副業は本業に比べて大きな責任が伴わないことが多く、すぐに辞めることができる点が大きなメリットです。本業に比べて仕事量・労力・必要時間も少ないので挑戦しやすいのもメリットと言えます。
複業とは
複業とは、「本業と同程度の仕事を本業以外にすること」を指します。そのため、仕事量や労力、必要な時間などが限りなく本業と近いものになります。
どちらも本業と同じように働くため、負担は増えますが、その分収入がかなり増えます。また、突然どちらかの仕事を解雇されてしまったときのリスクの分散ができるなど、さまざまなメリットがあります。さらに、本業と同程度の仕事を掛け持ちすることで、その分スキルアップも見込めます。
兼業とは
兼業とは、「本業以外に自分で事業を持つこと」を指します。複業と似ている部分がありますが、複業はどちらも会社に雇われていて、兼業は雇われながら自分の事業を経営しているというイメージになります。
兼業のメリットは、複業と同じく「リスクの分散」や「収入の増加」が大部分を占めています。複業にはないメリットとしては、自分のやりたいことに挑戦できるというものがあります。また、自分で仕事を探し、成長していかないといけない分、スキルアップの度合いも兼業のほうが高いと言えるでしょう。
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアは、オーストラリアの経営学者ピーター・ドラッカーが提唱しているキャリアの築き方の一つです。
パラレルキャリアの特徴は、「収入よりもスキルアップを目的としている」ことです。スキルアップのために、本業とは別の会社で働いたり、自分で事業を経営したりする場合がほとんどなので、上記の複業や兼業と似ています。
パラレルキャリアで積極的にスキルアップをしていくことで、自分で事業を確立できる可能性がありますし、本業に良い影響をもたらす可能性もあります。
副業の分類
副業をする場合、収入の額によっては「確定申告」をする必要があります。このときに、自分の収入がどの種類の収入にあたるのかを把握しておかなければなりません。
基本的に会社に所属せずに稼いだ収入は、ほとんどが「雑所得」に分類されます。フリマサービスや本の出版、ブログの運営等での所得は全て雑所得に該当します。
一方で、自分の事業を立ち上げて経営している場合には、その収入は「事業収入」に分類されるので注意が必要です。
上記の二つ以外にもいくつかの種類があり、代表的なものには以下があげられます。
- アルバイトのように「雇用契約」が生じている場合は、雑所得ではなく「給与所得」に該当する
- 株で得た所得は「譲渡所得」「配当所得」に該当する
- 不動産経営で得た所得は「不動産所得」に該当する
以上に該当する方は収入の記載をするときに気を付けてください。
副業の始め方は?
次は実際に、副業をどうすれば始めることができるのかや、その手順や副業を始める前に注意しておきたいことを紹介します。
場合によっては本業の会社の就業規則に違反してしまう場合もありますので、しっかりと把握しておきましょう。
1.本業の会社の就業規則を確認
先ほども紹介したように日本の法律では、副業は一切禁止されていませんが、会社側で副業を禁止している場合があります。このため、本業として働いている会社の就業規則を事前に確認して、副業が認められているかどうかを確かめておきましょう。
近頃はさまざまな会社で副業が解禁され始めましたが、会社によっては事前申請が必要だったり、特定の業種のみしか認めていないケースもありますので必ず確認してください。
2.副業の目的や目標を決める
次に副業のモチベーションとなるような「目的」や「目標」を決めておきましょう。
- 趣味に使うためのお金にする
- 旅行資金にする
- ローンの返済に充てる
- 老後のための貯金をするため
上記のような自分なりの目標を定めておくことで副業のモチベーションとすることができます。
副業は本業とは異なり「いつ辞めても問題が一切ない」ものです。そのため、何かあったときにモチベーションとなる目標がないとその時点でくじけて副業を辞めてしまうかもしれません。
また、どの副業を行うか決めていない場合は、目的や目標があることで、副業選びが行いやすくなるためおすすめです。
3.副業する時間を確保する
1日や1週間の中で副業に充てる時間は自分で決めておくことをおすすめします。
- 本業が始まる前/終わってから◯時間
- 土日のこの時間帯
上記のように具体的な時間を決めましょう。「なんとなく時間ができたときに副業をやる」などと、あいまいに決めてしまうと「今日はやらなくても良いかな」と怠けてしまい、長続きしない可能性もあります。
また、「本業が忙しすぎて副業に充てる時間がない」となってしまわないためにも、あらかじめ副業にあてる時間を決めておきましょう。
4.従事する副業を決める
副業にあてる時間を決めることができたら、実際にどのような副業を行うかを決めましょう。
副業の内容を決める前に、働き方の方向性を決めることをおすすめします。
- アルバイトのように「働いた時間」で報酬を得る時間労働型
- 記事執筆やプログラミングのように「仕事を達成した分だけ」報酬を得る成果報酬型
- ブログ運営やYouTube投稿のように収益が「労働時間や達成数とは関係ない」ビジネスオーナー型
状況のような型の中から、自分のライフスタイルとマッチした働き方を考えてみましょう。
5.家族から同意を得る
一人暮らしの方や独身の方は例外ですが、同居している家族がいる場合は、家族から同意は必ず得ましょう。副業を始めることでこれまで以上に自由な時間は減ってしまいます。
もし副業を始めたことで、「家族との時間が全然取れなくなってしまった」、「正直家族どころではなくなってしまった」なんてことになってしまっては、家族関係の悪化に繋がってしまいます。
副業を始めることでご家族に負担や迷惑をかけてしまう可能性があるということをしっかりと理解してから副業を始めましょう。
基本的に副業所得が20万円超えなら確定申告が必要
副業での所得が200,000円を超えてしまった場合は、確定申告が必要になります。副業を初めてする方は、確定申告もしたことない方がほとんどだと思われますので、ここでは確定申告について詳しく確認しておきましょう。
日本は「申告納税制度」という税制
収入を得ている人は、収入に対して一定のお金を納税しなければなりません。日本の場合は「申告納税制度」を採用しています。申告納税制度とは、各納税者が自分が支払うべき税額はどれぐらいなのかを計算し、税務署に申告しなければならないという仕組みです。
会社員の方は税額の計算から、申告まで全て会社が代わりにやってくれているので、確定申告をしたことがない場合も多いでしょうが、個人事業主や副業で200,000円以上の収益を得ている方は、自分で計算して納税しなければなりません。
副業の規模で申告義務が発生する
副業がある場合、本業の収入に上乗せして計算をし、税務署に申告しなければなりません。しかし、副業による収入が少ない場合はそれに発生する税金の額も多くありませんし、それに対していちいち確定申告をしなければならないのはかなり手間がかかります。
そのため、副業の収入の場合は、「年間での所得が200,000円」を超えない限り確定申告をする必要がありません。詳しい内容は以下で説明いたします。
副業の確定申告が不要になる場合
副業の場合は年間での所得が200,000円を超えない限りは確定申告が必要ありません。ただし、行っている副業によって以下のような細かいルールもあります。
- 副業がパート又はアルバイトであり、年間「収入」が200,000円以下
- 副業がパート又はアルバイト以外で、年間「所得」が200,000円以下
- 副業がパート又はアルバイト、とそれ以外の複数であって、その「収入」と「所得」の合計が200,000円以下
これらの内容はさらに詳しく解説します。
20万円ルールとは
先ほどの細かいルールで特に注意したい点が「収入」と「所得」の違いです。パートやアルバイトの場合は給料がそのまま「収入」となります。一方で個人事業的な労働形態をしている場合は、その収入から、事業に係る「経費」を引いた金額が「所得」となります。
副業での収入がある場合は、これらの合計額が200,000円を超えない限りは確定申告が不要となります。この確定申告のルールは、一般的に「200,000円ルール」と呼ばれています。
副業所得の合計が200,000円超なら確定申告が必要
副業を複数行っている場合は、収入と所得の合計金額が年間で200,000円を超えている場合、確定申告が必要となります。
また、収入と所得の合計金額が年間で200,000円以下の場合は確定申告が不要になりますが、これは「所得税」に関するものです。200,000円以下であっても、住民税の申告が必要になりますので気を付けてください。
20万円以下でも確定申告が必要なケース
上記の住民税の場合は必ず申告が必要になりますが、それ以外にも医療費控除やふるさと納税の適用を受ける場合は、年間所得が200,000円以下でも確定申告が必要です。
他にも特殊なケースですが、本業の所得が20,000,000円を超える場合は、会社での年末調整を行っていないため、確定申告を必ず行わなければなりません。
確定申告の手続き方法
「年間所得が200,000円を超えたら確定申告をしなければならない」と言われても、そもそもその確定申告のやり方を知らない方がほとんどのはずです。
ここでは、そんな確定申告の手続きの方法を詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1. 取引を記帳する:1月~12月
副業に係る収入や経費の額がわかるものを用意し、帳簿を作って記録をする必要があります。記録が必要な期間はその年の1月から12月までです。現在は確定申告用に利用できる会計ソフトやツールがさまざまな企業からリリースされているので、そちらを利用することで帳簿作成がかなり楽になります。
下記で紹介する青色申告は特に複雑ですので、会計ソフトやツールを利用することをおすすめします。
2. 確定申告に必要な書類を用意する:12月~2月
確定申告をするには、仕事の発注元からの報酬の支払調書や経費に係る領収書を添付書類として送付する必要があります。経費の支払いをクレジットカードで済ませた方は、利用明細をプリントし、どれが副業に関する支払いなのかを明記しておきましょう。
他にも以下のようなものが必要になります。
- マイナンバーカード又は通知カードのコピー
- 身分証明書(運転免許証、パスポート又は健康保険証のコピー等)
上記を忘れずに準備をしておきましょう。
3. 確定申告書を用意する:2月~3月
上記で紹介した必要書類が用意できたら、次は確定申告書を用意します。確定申告書はAとBの2種類があります。所得の内容によってAとBを使い分けることになりますが、Bはどのような所得にでも使えるので、迷ったらBを選択することをおすすめします。
場合によっては以下の書類が必要となりますので、確認しておきましょう。
- 確定申告書第三表:譲渡所得や雑所得がある場合
- 確定申告書第四表:事業が赤字でそれを翌年に繰り越す場合
4. 管轄する税務署に申告する:3月期限日までに
これらの必要書類を全て用意することができたら、3月の期限日までに管轄の税務署に直接届けるか郵送するかしましょう。確定申告を行う期間は原則「2月16日から3月15日まで」となっています。ただし、それぞれの日付が土日祝日に該当する場合は次の月曜日が期限日となります。
届ける以外にも「e-tax」を利用すれば確定申告書の作成から、これらの申告までを全てネット上で完了させることができます。
確定申告は白色申告より青色申告がおすすめ
確定申告には「白色申告」「青色申告」の2種類が存在します。手続きの複雑さや受けることのできる控除等に違いがあります。この二つの申告方法ですが、基本的には「青色申告」がおすすめです。
ここでは青色申告がおすすめである理由と、白色申告の解説を行います。
帳簿は複雑だがメリットが大きい「青色申告」
青色申告は、複式方式と呼ばれる帳簿方法を採用しています。これは事業に係る全ての収入、支出を正確に記録して、確定申告をするというものです。手続きが複雑ではありますが、その分情報が正確で、政府もこの方法を推奨しているため、いくつか優遇されている点があります。
手続きが複雑と解説しましたが、近頃は会計ソフトやツールがリリースされているので、比較的青色申告のハードルは下がってきています。
青色申告特別控除を受けることができる
青色申告で確定申告をすることで、青色申告特別控除を受けることができます。人によって異なりますが、100,000円~650,000円の控除を受けることが可能です。
青色申告特別控除を受けることで、数万円単位での節税を期待することができるので、ぜひとも青色申告を利用したいところです。
青色事業専従者給与を使うことができる
青色事業専従者給与とは、簡単に言えば「家族に支払う給与を経費として算出できるようになる」というものです。
- 15歳以上の生計を一にしている親族である
- 1年間のうち、6ヶ月を超える期間事業に従事している
以上の条件を満たすことで家族への給与を経費として算出できるようになります。家族で事業をしている方にとっては大きな節税となりますので、青色申告を利用してみてください。
純損失の繰越控除や繰戻還付を受けることができる
純損失の繰越控除とは、赤字になった分を翌3年間の黒字になった分から控除することができるというものです。また、繰戻還付とは「その年の赤字を過去の黒字と相殺して、過去に納めた税金と相殺後で再計算した税額との差額を返してもらえる」というものです。
事業を続けていく以上は、赤字になることもあるかもしれませんが、青色申告を利用することによってその赤字を節税に活用することができるようになります。
簡易的な帳簿だけでできる「白色申告」
手続きがやや複雑な青色申告とは対照的に、簡易的な帳簿だけで確定申告を済ませることができるのが「白色申告」です。手続きが簡易的であることは大きなメリットですが、その分青色申告で受けることができる控除等の適用は一切ありません。
そのため「手続きが簡単だから」という安易な理由で白色申告を選択するのは辞めたほうが良いでしょう。青色申告を行ってもそこまで控除が受けられない場合は、手間を考えると白色申告のほうがよい場合もあるので、控除や還付の金額を計算してから決めてください。
会社員の副業でよくある質問
ここでは、会社員の副業に関してよくある質問とその回答を紹介します。確定申告を初めて行う方が気になる内容をまとめたので、ぜひ目を通してみてください。
確定申告(青色申告)をしたら会社に副業がバレる?
副業によって本業以外の収入を得ている場合、確定申告をすることによって会社に副業をしていることがバレる確率は高いです。
大きな理由としては、住民税の額が増えることがあげられます。確定申告を行うと住民税の金額も自動的に更新されて増えます。住民税を給料から天引きしている場合は、会社に税額が変更になった通知が届くため、副業を疑われるのです。
副業を禁止している会社の場合はそれによるペナルティ、最悪の場合は解雇ということにもなりかねませんので、注意しておきましょう。
マイナンバーカードで会社に副業がバレる?
上記の通り、副業をすることで会社に副業がバレる可能性は高いですが、マイナンバーカードを副業先に提示しても、それが理由で副業がバレることはほとんどありません。
自治体の公務員には「守秘義務」があり、本来の目的外の情報は提供してはいけないことになっています。そのため、会社が副業の実態を調査するためにマイナンバーに関する問い合わせを自治体にしても、教えてくれないので何も情報を得ることはできません。
副業がバレたくないから確定申告をしなくてもよい?
確定申告は、副業をしている人が納税額を申告するために必ずしなければならないものです。そのため「会社に副業がバレたくないから」という理由で確定申告をしないのは脱税行為になってしまいます。
先ほど紹介した住民税から副業がバレる件は、防ぐ手段があります。住民税の納税方法を給料から天引きされる「特別徴収」から自分で収める「普通徴収」に変えれば、住民税の金額が会社に届かないため問題ありません。ただし、自治体によっては普通徴収を認めていない場合もあるので、その点に関しては事前に確認してください。
本業の勤務先の副業禁止のルールは絶対?
上記の通り、会社員の副業は法律では禁止されていませんが、各会社の「就業規則」によって禁止されている場合があります。副業が禁止されている会社で副業をしていることがバレてしまった場合、降格や減給、最悪の場合は解雇といったような懲戒処分を受けることになります。
そのため、どうしても副業をしたい場合は副業が認められている会社に転職するか、会社に副業解禁を訴えるしかないでしょう。
確定申告すると損をする?
確定申告をすることで、それに応じた税金の納付をする必要があります。「税金が増えるなんて損だ」と思うかもしれませんが、そもそも納税は国民の義務です。確定申告をしないで脱税がバレてしまったときに課されるペナルティのほうが単純に金額で言えば重いです。
納税額が増えると損をした気分になるかもしれませんが、そのために青色申告で少しでも節税対策を試みるなどを行い、節税をしていきましょう。
副業を始めたらしっかりと確定申告をしましょう
副業をすることで、最低でも住民税の申告をしなければなりません。手間もかかりますし、納税額が増えてしまうのは嫌かもしれませんが、納税は国民の義務なので確定申告は必ず行ってください。
また、副業を禁止している会社であったとしても「副業をしていることはバレないだろう」と考えてはいけません。上記の通り、副業をしていることは黙っていても会社の経理担当者によってバレる可能性が高いですし、最悪の場合はその会社を解雇される可能性もあります。
副業をする以上、確定申告は避けては通れない道です。面倒かもしれませんが副業をする際には必ず確定申告をするように徹底しましょう。