副業をしている方の中には、「副業をすると住民税はどうなるの?」「住民税を納めたら、会社に副業がバレる?」と、疑問や不安を抱く方が少なくありません。

そこでこの記事では、副業における住民税の扱いについて詳しく解説します。住民税の申告方法から、会社に知られずに納める方法まで解説していますので、副業をしている方、これから始める方はぜひ参考にしてください。

住民税とは?

住民税とは、地方自治体が提供する公共サービスを維持するために使われる税金です。例えば、教育や福祉、救急、ゴミ処理、公共施設といったものになります。

また、住民税と呼ばれることが多いですが、実際には都道府県が課税する「都道府県民税」と、市区町村が課税する「市町村民税」に分かれています。税額は所得に対して10%と、均等割分の5,000円としている自治体がほとんどです。

所得には必ず住民税がかかる

基本的に所得には必ず住民税がかかります。よく「副業の年収が200,000円以下なら納税しなくても良い」と勘違いされますが、この条件に当てはまるのは所得税です。

収入(所得)がある人が納める必要のある税金には、所得税と住民税があります。所得税は副業の所得が200,000円以下の場合、副業分の納税は必要ないですが、住民税は副業の所得額にかかわらず納税が必要です。

住民税の納税先は市区町村

住民税の納税先は現住所の市区町村です。住民税は市区町村の役所が管轄する「地方税」の一種のため、地方自治体に直接納税します。

対して、所得税は国に対して納税する国税であるため、管轄は税務署になります。

なお、住民税を納税する市区町村はその年の1月1日に住所があったところとなり、引っ越しをした場合でも同じです。例えば、その年の1月1日に東京都に住所があった場合、同じ年の8月に大阪市に引っ越したとしても納税先は東京都になります。

副業の住民税を納める方法

副業の住民税を納める方法は、副業の収入によって変わります。

  • 副業の収益が200,000円以下
  • 副業の収益が200,000円を超える

ここでは、上記2つのケースに分けてお伝えしていますので、当てはまるほうを確認してください。

副業の収益が20万円以下の方の場合

副業の収益が200,000円以下の方は、確定申告の必要がないため、住民税のみを地方自治体に申告することになります。

住民税の対象は、前年度の1月1日から12月31日の間の報酬額です。例えば、前年度の1月1日から12月31日の間の報酬額が2,000,000円なら、2,000,000円が住民税額の対象になります。

申告期限は確定申告と同じ2月16日〜3月15日です。この間に必要書類を持参して、1月1日時点で住所を置いていた地方自治体の役所で手続きをします。一般的に以下のような書類が必要です。

  • 申告書
  • 収入と経費が分かる書類
  • 所得控除の領収書や明細書
  • 本人確認書類
  • 印鑑

申告書は市町村の役所のホームページからダウンロードできる場合が多いので、Web上から用意することをおすすめします。

副業の収益が20万円を超える方の場合

副業の収益が200,000円を超える場合、確定申告が必要です。確定申告を行うと、その情報が地方自治体に送られるため、自分から住民税の申告をする必要はありません。

申告方法は税務署の窓口に書類提出に行くか、「e-Tax」による電子申告の方法があります。e-Taxであれば、税務署まで出向く必要はありません。確定申告が完了すると、税務署経由で市町村に情報が伝わり、住民税が自動的に決まります。

住民税を普通徴収で納税するには?

住民税の納税方法には「普通徴収」と「特別徴収」の2つがあります。

住民税の特別徴収とは

特別徴収とは、勤務先の給料から天引きして住民税を納める方式です。

国は特別徴収を積極的に推進するように通達しており、企業に勤める人の多くは特別徴収で納税しています。正社員だけでなく、パートやアルバイトの方も、基本的には特別徴収で徴収されています。

特別徴収は納税の手間が省けて便利ですが、副業をしている場合は、勤め先にバレることがあります。特別徴収は、住民税を給料から天引きして納める仕組みのため、副業分が上乗せされた住民税の金額が会社に知られるからです。

従業員の給料が増えていないのに、住民税の金額が増えていると、給料以外の収入があることがバレてしまいます。そのため、「副業をしているのでは?」と勘ぐられてしまうことがあるのです。

住民税の普通徴収とは

普通徴収とは、納税者自身で手続きをして住民税を納める方法です。特別徴収のように勤務先の給料から天引きされるのではなく、納付書を持参して銀行や郵便局、コンビニエンスストアなどで納税します。

普通徴収では勤務先に住民税の通知がされません。そのため、副業を勤務先に知られたくないという方は、普通徴収に切り替えることをおすすめします。

ただし、普通徴収の場合は、3カ月分の住民税を1度に納めないといけません。特別徴収は1カ月ごとに徴収されますが、普通徴収ですと年4回分(6月・8月・10月・1月)となるため、1回あたりに納める金額が大きくなります。

住民税を普通徴収にする方法

次に住民税を普通徴収にする方法を紹介します。「確定申告をする場合」と「確定申告をしない場合」に分けて解説していきますので、当てはまるほうを確認してください。

確定申告をする場合

確定申告をする場合は、確定申告書第2表の「住民税に関する事項」で「自分で納付(普通徴収)」を選択します。この選択をすることで特別徴収から、普通徴収へと納税方法が変更可能です。その後、納付書が送られてきますので以下のような方法で納付します。

  • 銀行
  • 郵便局
  • コンビニエンスストア
  • インターネットバンキングや
  • ATM
  • Pay-easy払い

なお、普通徴収に切り替えできたか不安な場合は、直接自治体に連絡して確認してください。また、確定申告時に変更しなかった場合、会社の経理に問い合わせても変更はできませんので気を付けてください。

確定申告をしない場合

確定申告をせずに住民税の徴収方法を変更したい場合は、市町村の住民税担当者に連絡してください。

ただし、「給与として支払われた副業の所得」は、原則として本業の会社の給与と合算され、住民税は本業の会社から特別徴収されることになります。

市町村によっては、副業の給与を普通徴収にできるかどうか対応が異なるため、それぞれ問い合わせてください。

住民税の計算方法をシミュレーション

ここからは、住民税の計算方法について解説します。どのくらいの金額を納付したら良いのかを、実際に金額を例に出しながらシミュレーションしていますので、ぜひ参考にしてください。

均等割の計算方法

まず均等割ですが、こちらは所得によって変わることのない一律の金額になります。税額は自治体によって違いますが約5,000円(市民税3,500円+県民税1,500円)というのが一般的です。

市区町村均等割の住民税額
東京都5,000円(市民税3,500円+県民税1,500円)
川崎市5,300円(市民税3,500円+県民税1,800円)
横浜市6,600円(市民税4,800円+県民税1,800円)
名古屋市5,300円(市民税3,300円+県民税2,000円)

均等割の住民税は収入が少ない人ですと免除となるケースもあります。しかし、ある程度の収入がある方では非課税にはならないと考えておいてください。

所得割の計算方法

次に所得割に関してですが、こちらは所得額に応じて税額が決まります。計算式は「(所得 ー 所得控除の額)×10.0%」です。例えば、所得が3,000,000円で所得控除の額が1,000,000円なら次のように計算します。

(3,000,000円-1,000,000円)×10.0%=200,000円

上記のケースの場合、所得割の金額は200,000円です。

住民税の税率は所得税とは異なり、一律10.0%です。所得税ですと所得額によって税率が高くなりますが、住民税では変化しません。場合によっては所得税より高くなるケースもありますので、確定申告をする際は所得控除を忘れずに記入しておきましょう。

会社に副業をバレにくくするポイント

ここでは、「副業が会社にバレるのを避けたい」という方に向け、バレる理由と対策方法を紹介します。

住民税から副業がバレる理由

何度かお伝えしていますが、住民税で会社に副業がバレるのは特別徴収になっている場合です。特別徴収ですと住民税が会社の給料から天引きになるため、収入が増えるとすぐに分かってしまいます。

例えば、会社の給料の住民税額が300,000円だったとします。そこに副業の住民税額の150,000円が加わり、合計450,000円になったとしましょう。こうなりますと、会社の経理担当者は「給料と住民税の金額が合わない。おかしいぞ?」と疑問を持ちます。

会社の経理担当者は、社員の給料を正確に支払うために、住民税額についてもミスがないか確認しています。このため、給料からの天引きとなる特別徴収の場合、副業がバレてしまう可能性が高いです。

住民税を普通徴収にすると副業がバレづらい

住民税によって会社に副業がバレるのを防止するなら、納税方法を普通徴収にしてください。普通徴収にすることで、住民税の決定通知が自宅に届くため、会社には知らされません。

ただし、繰り返しになりますが、副業収入を「給与」として受け取っている方は注意が必要です。この場合は原則として特別徴収になるため、会社に住民税の決定通知が送付されます。

普通徴収に変更する方法として以下の2つがありますので、切り替えを検討している方は参考にしてください。

  • 給与の支払元に「普通徴収への切替理由書」を依頼する
  • 役所の窓口で普通徴収にできないか相談する

関連記事:副業がバレない方法はある?バレる理由やタイミングも解説

副業の住民税を申告し忘れるとどうなる?

副業の住民税を申告し忘れると、さまざまなペナルティがあり、場合によっては大きなお金が必要になります。また、故意に申告をしなかった場合は、最悪の場合、脱税として社会的な信用を失うこともあります。

延滞税や重加算税がかかる場合がある

副業の住民税を申告し忘れると、「延滞税」や「重加算税」を納付しなければなりません。延滞税や重加算税がかかると、本来納めるべき住民税よりも大きな金額が発生してしまいます。

延滞税は税金を滞納した際のペナルティです。利率は本来納めるべき住民税に対して最大で年14.6%となります。延滞税は住民税を納めるべき期限の翌日から発生し、延滞日数が長くなるほど利率が高くなります。

また、重加算税は意図的に税額を少なく申告したと判断されたときに課されるものです。次の3つの種類があります。

  • 過少申告加算税(申告期限内に提出している納税額が実際より少なかった)
  • 無申告加算税(期限内に確定申告をしなかった)
  • 不納付加算税(源泉所得税の納付期限を過ぎてしまった)

会社から信用を失う

副業による住民税を滞納し続けると、最後は預金や給与の差し押さえになります。給与の差し押さえになると、副業していることだけでなく、脱税したことも会社にバレてしまうため、社会的信用を失ってしまうかもしれません。

住民税を滞納すると、すぐに差し押さえになるわけではないものの、滞納が長引くと市区町村から催促状が届き、最後に行き着く先が差し押さえになります。最悪の事態となる前に、毎年きちんと納めておくようにしてください。

副業であっても所得に応じた住民税を支払う義務がある

住民税は所得がある人であれば、誰しもが納める義務のある税金です。これは副業の収入でも変わりありません。

そのため、副業の収入がわずかでもあるのであれば、住民税を納める必要があります。正しい申告と納税を行い、納税漏れや滞納がないようにしていきましょう。