本記事では、副業で収入を得たい公務員の方に向けて、法的な可否や実態、公務員でもできる11の業種を解説します。
「バレた時の処分が不安」「そもそも公務員は副業して良いの?」という悩みの解決に役立つため、ぜひ参考にしてください。
目次
結論:公務員でも副業できる!条件と規定を見直そう
公務員といえば、副業は完全にNGなイメージですが、厳密に言うとそうではありません。
実は、公務員は副業を完全に「禁止」されているわけではなく、いくつかの条件をクリアしなければならないだけなのです。
そこでここからは、副業・兼業の規定を国家公務員と地方公務員に分けて見ていきましょう。
国家公務員の副業
国家公務員の副業は、国家公務員法によって以下の通り規定されています。
- 第103条(私企業からの隔離)
商業・工業又は金融業その他営利を目的とする私企業での兼業や運営を禁止
- 第104条(他の事業又は事務の関与)
非営利企業で収入を得る場合であっても、内閣総理大臣や現在勤務している所轄庁の長からの許可を得なければ、副業できない
参照:国家公務員法
地方公務員の副業
国家公務員と同様に、地方公務員の副業も「地方公務員法」によって定められています。
- 第38条(営利企業への従事等の制限)
任命権者の許可がない場合、国家公務員法と同じく「役員兼業」「自衛権業」、その他報酬が発生する兼業を制限
上記の法令は、副業で能力が分散することを抑止し、国家の奉仕者としての役目を遂行させることが目的です。
ただし、任命権者の許可プロセスは地方自治体に委ねられており、地方公務員が営利目的の仕事を兼任するケースはいくつか存在します。
参照:地方公務員法
公務員の副業の許可基準
法的な観点から言えば、非営利団体なら公務員でも副業は可能です。ただし、無断で仕事を始めて良いわけではなく、しっかりと基準も定められています。
ここでは具体的に、2019年3月28日に内閣官房内閣人事局が公開した「職員の兼業許可について」という通知を見てみましょう。
許可されるケース | 許可されないケース |
・時間に関する基準 週8時間もしくは1か月30時間を超えない、1日3時間を超えない ・兼業先に関する基準 行政機関である場合:許可 公益、福祉、医療法人である場合:活動実績を確認したうえで判断 ・上記ではない非営利団体 厳格な活動実績の確認を行ったうえで許可 ・報酬に関する基準 社会通念上において、それ相応と判断される水準を超えない金額である場合に許可 | ・兼業することによって、職務の遂行に悪影響が出ると判断された場合 ・在職している国の機関と、兼業先との間に利害関係があると判断された場合 ・兼業する事業において、経営上の責任者となってしまう場合 ・兼業することによって、国家公務員として信用を傷つけることになるか、官職全体での不名誉となる可能性があると判断される場合 |
引用元:国家公務員の兼業について(2019年)内閣官房内閣人事局
基準がやや多く複雑ですが、「自分がどんな副業をやるか」を決めてから逆算的にチェックすれば分かりやすいはずです。
公務員の副業で考えられる罰則・処分
公務員でも然るべき許可を得れば副業が行えますが、「手続きがめんどくさい」「許可してもらえるか不安」といった理由から、隠れて始めてしまう方も存在します。
一般企業の会社員が職務規定を無視しても、基本的には社内だけで収まりますが、公務員の場合は立派な法律違反。
「戒告」「減給」「停職」「免職」といった処分が状況に応じて適用されます。
「本業以外で収入を得たい」という気持ちは分かりますが、免職されては本末転倒です。必ず所定の手続きを経て、許可をもらってから副業を始めましょう。
公務員の副業規定は自治体によって緩和されつつある
原則として、公務員は副業自体が奨励されない職業でしたが、働き方の多様化が進む昨今、国の方針も少しずつ副業を受け入れ始めています。
- 未来投資戦略2018:「国家公務員について公益的活動等を行うための兼業に関して環境整備を進める」といった方針が発表されました。
- 地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について:2019年には左記資料を基に地方公務員の副業を推し進める流れが生まれています。
- 兵庫県神戸市や奈良県生駒市など、一部の地方自治体では、積極的に公務員が副業できるような体制づくりに乗り出しています。
上記の通り、公務員の副業は一昔前よりもずっと前向きに検討されつつあります。自治体によってはすでに体制構築に乗り出しているため、当記事の読者の中にも「副業に取り組む公務員さん」がいるかもしれませんね。
公務員におすすめの副業11選
ここからは、公務員が安全に取り組める副業を10種類解説します。
規定をクリアするための条件も掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
不動産投資
不動産投資は収入が安定している公務員と相性が良く、数ある副業の中でも高い人気を誇ります。
不動産投資ローンの審査において、自営業やサラリーマンより審査に通過しやすいからです。
ただし、公務員が不動産投資をするためには、以下3つの条件をクリアしなければなりません。
- 5棟以下、もしくは10室以下の規模であること
- 年間の家賃収入は500万円以下におさえること
- 管理会社に業務を委託すること
家賃収入や運営規模などの縛りはありますが、管理会社に任せて手放しで運営できる点は大きなメリットといえるでしょう。
太陽光電気の販売
太陽光発電で得た電気を電力会社に販売するのも、公務員に許されている副業です。具体的な規定は以下の通りであり、住宅用・産業用のいずれも問題なく取り組めます。
- 定格出力10kw未満(住宅用発電所):公務員でも許可なくスタートが可能
- 定格出力10kw超過(産業用発電所):許可を得れば始められる
加えて、FIT制度(固定価格買取制度)を用いれば固定価格で売電できるため、今最も人気がある副業の1つ。
ただし、発電所の初期コストと維持費用が高額になりがちな点には注意しましょう。
株式・FX・仮想通貨
不動産投資と違い、株式やFX、仮想通貨は少ない元手で手軽に始めやすい副業です。また、そもそも副業として捉えられておらず、自己資産の形成手段として無許可で始められます。
一方、元本保証がなく、資産の相場によっては自己資金そのものがゼロになるリスクもあるので、必ず損失リスクも加味した上で取り組みましょう。
小規模農業
家庭菜園といった趣味レベルの農業でも、野菜などを販売して買い手がつけば、充分副業として成り立ちます。
ちなみに、「30a以上の耕地面積があり、年間で50万円以上の売上がある」という規定を上回らなければ、小規模農業として無許可で初めても問題ありません。
家業の手伝い
実家が農家や酒屋さんを営んでいる場合は「繁忙期限定で手伝ってほしい」と親御さんから頼まれることもあるでしょう。
営利目的であったとしても、家業を手伝う場合は副業の許可が下りやすいため、実家が事業を営んでいる方はぜひ検討してみてください。
社会貢献活動
非営利目的の社会貢献活動は、公務員が気兼ねなくできる副業の一つ。具体的には、防災・防犯に貢献する活動や、生活支援・福祉関連も代表的です。
収入が得られるだけでなく、社会貢献している実感も味わえるので、他の副業とは一味違った充実感が得られるでしょう。
講師・講演活動
人前で話すのが得意な方は、講演活動を副業にしても良いでしょう。
実は、講演活動自体は非営利活動として認識されているため、公務員でも問題ないのです。
- 誰かに必要とされるノウハウや人生経験から得た話題が必要
- 聴衆の心に訴えかけられる話術が要される
さらに、講演用の資料作りや場所取りに時間を割いて、本業が疎かになっても本末転倒。知名度が上がる利点はあるものの、きちんと自己管理を徹底してくださいね。
執筆活動
ライターとしての副業は「表現の自由」に当てはまるため、公務員でも許可が得られやすい傾向です。
一方、業務で知り得た情報が分かる内容や、政府批判・プロパガンダに繋がる著書は問題になるので、知識のある第三者にチェックしてもらいましょう。
不用品の売買
フリマアプリやネットオークションを用いた「不用品売買」も、許可が不要な副業の1つにあげられます。
従来はフリーマーケットやリサイクルショップでの売却が基本だったので、その点を踏まえると現在は遥かに取り組みやすい環境といえるでしょう。
最悪の場合、問答無用で処分対象となるので、最大限注意してくださいね。
アンケートモニター
ポイントとして報酬が得られるアンケートモニターも、許可を取らずに取り組めます。
すきま時間を利用して簡単なアンケートに答えるだけなので、誰でも簡単に始められるでしょう。
コーチング
もし「人に教える」という行為自体が好きなら、コーチングを始めるのもおすすめです。
自分のノウハウがお金になる上に、設備投資などもほぼ必要ないので、利益率についてはトップクラスを誇ります。
【営利目的に該当する条件】
- 継続的に行っている
例1:月に1回の受注でも定期契約やHPの設営、クラウドソーシングでの集客を行っている場合は該当。
例2:たとえ低頻度でも数か月にわたり案件を得ていたら「営利」と見なされる可能性が濃厚 - 5,000円を超える報酬を得ている
国家公務員倫理法により、5,000円以上の報酬は贈与等報告が求められる
加えて、コーチングは本名での活動が多く、当然顔も公開することになります。したがって、チャレンジしたい場合はあくまでも非営利を前提とし、必ず職場の許可を得てから始めましょう。
公務員はグレーな副業4選
ここからは、処罰される可能性が濃厚な副業を4種類解説します。
チャレンジする際の注意点も掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
YouTuber(ユーチューバー)
YouTuberは、自分の好きなことで稼ぐチャンスがある職業として、ここ数年非常に高い人気を誇っています。
そして、公務員でもYouTubeに動画投稿すること自体は問題ありませんが、肝心の収益を得てしまうと罰則対象。すなわち、せっかく動画を作っても一銭のお金にもならないのです。
イラストレーター
絵が得意な方は、イラストレーターとして活動したくなるところですが、残念ながら公務員は営利目的でイラストを販売できません。
直接販売はもちろん、インターネット上などで販売する行為も処分対象となるため、あくまで趣味の範囲として、定期的に個展を開く程度に抑えましょう。
ブログ
空き時間に更新できるブログは、ライフスタイルに関係なく稼げる副業として人気です。
当然、趣味で運営するだけならなんら問題ありませんが、アフィリエイトなどで報酬を得る場合は罰則対象となります。
データ入力
特定の情報を打ち込む「データ入力」は、タイピングさえできれば誰でも挑戦できます。
しかし、公務員がチャレンジするには許可が必要となり、最終的に認めてもらえない可能性もゼロではありません。
公務員が副業をする時の注意点
公務員でも副業自体は可能な一方、法律で制限されていることから、決して安易に行って良いものではありません。
不意のペナルティを受けてしまわぬよう、以下で解説する注意点をしっかり頭に入れておいてください。
上長や任命権者に相談する
不要品販売といった許可が必要ない副業もありますが、公務員が副業する場合は原則として上長の許可が必要です。
「バレなければ大丈夫だろう」と安易に始めてしまうと、減給や免職といった処分を受けるリスクもあるため、まずは直属の上司や管理職に相談しましょう。
関連記事:会社に副業申請をする流れ!理由の書き方、NGケースを紹介
本業を最優先にする
公務員法において、副業が許可されるのは「本業に支障がない場合に限る」と明記されています。
そもそも公務員の収入が安定しているのは、収入の不安から本業が疎かにならないようにするための対策。したがって、「もっと稼ぎたい」という感情は理解できますが、私利私欲のために業務を怠ってはいけません。
副業の収入が20万円以上なら確定申告をする
公務員にとって「確定申告」は縁遠いものですが、副業で稼ぐ以上は覚えなければいけません。
もし、1年間に20万円以上の副収入を得た場合は、確定申告の義務が発生するため、税務署のホームページなどを確認し、予習しておくと良いでしょう。
関連記事:副業の確定申告はいくらから?やり方、よくある質問を徹底解説
公務員の副業は法律・規定を確認しましょう
本記事では、公務員副業の現状や危険度が高い業種、注意点などを解説してきました。
公務員は法律によって副業が制限されていますが、今回おすすめした11種の業種なら比較的安全に取り組めるでしょう。
ただし、許可がいらない副業でも、万が一に備えて上長へ相談するのがおすすめです。ぜひ本記事を参考に、万全の体制で臨んでください。