会社員として務めながら、副業をはじめる方が年々増えている中、副業で本業を超える収入を得ている方もいます。そのため、「思い切って起業をしてみようか」と考え始める方が少なくありません。
そこでこの記事では、副業から起業する際のメリット・デメリットを踏まえたうえで、起業するための具体的な方法を解説します。近い将来、起業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
副業から起業するメリット
副業から起業するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?まずは、具体的なメリットについて見ていきましょう。
収入アップが期待できる
例えば、サラリーマンが副業で起業する場合、大幅な収入アップを期待できます。
本業を続けながら副業で起業をする場合は、本業の収入に副業での収入が加わるため、さらに高収入を得ることもできるでしょう。本業を辞めて副業で起業することにはリスクもあるため、本業を続けながらであれば比較的リスクを抑えられます。
さらに、副業は自分の頑張りがそのまま収入につながるため、モチベーションも上がりやすいというメリットもあります。
起業のスキルやノウハウを実践で得られる
会社員として働いていると、毎月安定した給料があるため、経営の感覚は身につきにくいです。
しかし、副業では利益を出すために自ら営業をしたり、収支の計算などをしたりして仕事を続けていきます。税金や経費の計算、帳簿をつけるといった作業も必要です。
これらのノウハウは会社員として働いているだけではなかなか得られないため、副業で身につけた知識やスキルが起業の際に役立ちます。
自身のペースにあわせて事業を拡大できる
副業から起業をする場合、起業後の収入はある程度予測がつくため、事業拡大のペースを無理なく、自分で決められます。
また、本業を続けながらであれば安定した収入を確保できるので、急いで事業拡大を目指す必要もありません。
軌道に乗っているときや時間的な余裕があるときなど、自分自身のペースにあわせて事業拡大のタイミングを決められるのは魅力です。
ただし、事業の拡大にはリスクが伴いますので、十分なリサーチが必要です。
万が一うまくいかなくても途中で撤退しやすい
副業から起業する際、事前に十分な準備をして起業したとしても、思ったようにいかない場合があります。
また、景気の後退や新型コロナウイルス感染症といった思わぬ事態により、売り上げが下がってしまうなど想定外のリスクもあります。
しかしながら、そういった想定外のリスクに直面しても、本業を続けながらであれば収入を確保できるため、事業から撤退しやすいというメリットがあります。
本業を辞めて独立した場合、簡単には撤退できないため、本業を続けながらという安心感があればこそのメリットといえるでしょう。
副業から起業するデメリット
ここまで、副業から起業するメリットについて解説しましたが、事前に知っておきたいデメリットもあります。
オーバーワークになる恐れがある
本業を続けながら起業をする場合、どうしてもオーバーワークになってしまう可能性があります。本業が終わった後や休日など、副業に取り組む時間はどうしても限定的になります。
そんなとき、限られた時間で事業を軌道にのせようと、睡眠時間や食事などをついおろそかにしてしまいがちです。
また、副業がうまくいかないときの、精神的負荷も考えられます。副業で体調を崩してしまっては本末転倒ですので、オンオフの切り替えや仕事の効率化などで、十分な体調管理を心がける必要があります。
本業の会社にバレると問題になる場合がある
副業を禁止している会社で、副業での起業がバレてしまうと、なんらかの処分対象になる可能性があります。就業規則違反となり減給や最悪の場合、解雇のリスクもあります。
厚生労働省では2018年、「副業・兼業推進に関するガイドライン」を策定し、国をあげて副業を推奨していますが、就業規則は会社のルールであるため、無視するわけにはいきません。
副業をはじめる時や起業を考える際は、必ず事前に確認をしておきましょう。
資金調達の手段が少ない
副業から起業をする場合、資金調達が難しいケースが多いです。
なぜなら、副業から起業していることもあり、法人化している企業よりどうしても社会的信用が低いからです。特に金融機関からの融資は難しいと考えておきましょう。
そのため、副業で起業する際にまとまった資金が必要な場合は、あらかじめ自己資金を準備してから起業することをおすすめします。
サラリーマンが副業から起業する方法
サラリーマンが副業から起業するには3つの方法があります。ここからは、具体的にどのような方法なのかについて見ていきましょう。
- 方法1. 法人として副業から起業する
- 方法2. 個人事業主として副業から起業する
- 方法3. フランチャイズで副業から起業する
方法1. 法人として副業から起業する
まずは、副業を法人化して起業する方法があります。法人として起業する場合、登録免許税や定款印紙代などの手続きで最低でも25万円以上の費用が必要です。
また、社長一人であっても社会保険に加入する義務がありますし、従業員が増えた場合は従業員も社会保険に加入させなければなりません。
なお、法人化することで法人住民税が発生し、たとえ赤字経営になっても払う必要があります。そのため、起業資金や人件費、税金などの負担を想定して起業を考える必要があるでしょう。
しかし法人化することで社会的な信用度が高くなり、資金調達がしやすくなります。売り上げが伸びれば、「法人税」が適用されるため、節税にもつながります。
ただし、売り上げが伸びないうちは法人化しても節税につながるメリットが少ないため、慎重に検討することをおすすめします。
方法2. 個人事業主として副業から起業する
個人事業主として起業する場合は、開業届などの必要書類を税務署に提出するだけで手続きが済みます。
法人のように、起業時に費用が発生することもありませんし、一定の売上金額に到達するまでは法人税より所得税のほうが安く済みます。
そのため、開業資金が少ない人や副業の収入がそれほど多くない方には個人事業主がおすすめです。
ただしデメリットとして、法人よりも信用度が低く、金融機関からの資金融資には期待できないため、スタート時に大きな事業計画は難しいかもしれません。
最初は、個人事業主として自己資金の範囲で起業し、売り上げが思った以上に伸びてきたら税理士に相談して法人化を検討する方法がおすすめです。
関連記事:副業で青色申告をしたい!やり方やできない条件、メリットを解説
方法3. フランチャイズで副業から起業する
フランチャイズとは、本部となる親企業に加盟店がロイヤリティを払い、事業を行うビジネスのことです。
起業はしてみたいものの、自分ではアイデアが思い浮かばない方や、店舗を自分で運営してみたい方、起業資金が豊富にあるという方はフランチャイズという選択肢もあるでしょう。
また、親企業のブランド名をそのまま使用でき、すでにあるノウハウを教えてもらえるため事業を早い段階で軌道にのせることが可能です。
一方で、事業計画において、自由度が低いというデメリットがあります。本部のルールに従って事業を進める必要があるためです。
なお、加盟するフランチャイズによっては、はじめに加盟金が必要になるケースがあります。場合によっては、100万円~300万円とまとまった加盟金が発生する場合もあります。
さらに、店舗の運営に自分が出向く必要がある場合は、本業の傍らでは難しい場合もあります。従業員を雇うなら、その分人件費もかかります。
そのため、副業で行う場合は、常駐する必要がない「コインランドリー」などの事業が向いているといえます。
サラリーマンが副業で会社設立をするステップ
ここでは、会社設立の流れを6つのステップに分けて紹介します。
ステップ1:会社を設立するための準備をする
まずは、会社設立のための「商号」を決めます。商号とは会社名の名前のことです。会社の「顔」ともいえる重要な項目となります。
ただし、「不正競争防止法」では、他人の商号と同一または類似の商標を使用することが禁止されているため、慎重に考えましょう。
次に、印鑑を作成します。会社の実印、法人用の口座開設に使用する銀行印、角印(社判)も同時に作成します。会社の実印は法務局に印鑑届出書も提出しましょう。
ステップ2:定款を作っておく
会社設立時には、会社の基本原則が書かれた「定款」を作る必要があります。この定款には、「絶対的記載事項」という、必ず記載しなければならない事項があります。
「絶対的記載事項」は以下の5つです。
- 事業目的
- 商号
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称及び住所
上記の絶対的記載事項の記載がない場合は定款全体が無効になってしまうため、注意が必要です。定款を作成したら、会社の管轄法務局の公証役場で「定款の認証」を受けます。
ステップ3:資本金を支払う
資本金は、会社で売り上げが発生するまでの会社の運転資金のことです。会社設立に必要な資本金は金融機関に払い込みします。
この時点では、まだ会社は設立されておらず、会社の銀行口座は作成できないため、設立発起人の個人口座に振り込みます。
資本金は1円でも問題ありませんが、資本金に関する情報は会社のホームページなどで取引先など、多くの人の目に触れることになります。会社の信用力を上げるためにも、ある程度の資本金を用意するのが好ましいといえます。
ステップ4:登記書類を用意する
会社設立のためには、法務局にて「登記申請」を行う必要があります。登記申請のために必要な登記書類は以下のようなものです。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 印鑑届書
- 定款
- 発起人の決定書
- 就任承諾書
- 選定書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 出資の払込証明書
- 登記すべきことを記載した書面(または保存したCD-R)
会社によって用意する書類の種類が違うため、上記の書類の中から自身の会社にあわせて用意してください。
ステップ5:登記の申請を行う
書類が準備できたら管轄の法務局に申請しましょう。
管轄の法務局の窓口に直接、書類一式を提出して申請する場合は、その場で職員に書類のチェックをしてもらうこともできます。申請から10日程度で登記が完了し、会社成立日は「登記申請をした日」となります。
また、法務局に行く時間がない場合は、郵送で申請も可能です。郵送する場合は、必ず書留や配達記録郵便で送り、封筒の表に「登記申請書類在中」と記載しましょう。書類が管轄の法務局に到着した日が会社設立日になります。
また、オンラインで申請することも可能ですが、登記申請の受付時間は8時30分から17時15分までです。
17時15分を過ぎると翌日の受付になってしまい、会社設立日も翌日になってしまうため、会社設立日にこだわりがある方は注意が必要です。
ステップ6:会社設立後に税務署へ届け出る
次は、会社の納税地管轄の税務署へ届出を行います。会社で納税する税務署に、会社設立の2ヶ月以内に、法人設立届出書を提出します。
それ以外にも、都道府県税事務所・市町村役場にも届け出る必要があります。都道府県税事務所・市町村役場に届け出る届出書は自治体ごとに提出期限がことなるため注意が必要です。
サラリーマンが副業から起業する際によくある質問
最後に、サラリーマンが副業から起業する場合によくある質問を紹介します。起業に関する手続きなどで不安な方は、ぜひ参考にしてください。
副業から起業するのに良いタイミングはいつ?
サラリーマンが副業から起業を考えるべきタイミングは、確定申告が必要となる「年間所得が20万円を超えている」ことが一つの目安です。
副業の収入から経費を引いた金額(所得)が、20万円を超えると確定申告が必要となります。毎年安定して年間所得が20万円を大きく超えるようになっているなら、まずは個人事業主として開業届の提出を検討してみましょう。
このとき、「青色申告」を行うことで青色申告特別控除を受けられると、支払う税金を少なくできます。
青色申告をするためには開業届が必須となりますが、税金面でのメリットが大きいため、副業で毎年安定して大きく稼げるようになった場合は検討してみてください。
関連記事:副業に開業届は必要?判断基準と出し方、注意点を解説(No80の記事です)
副業から起業する際に必要な書類は何?
副業から起業する場合に必要な書類は、個人事業主として起業するか、法人として起業するかによって大きく変わります。
個人事業主の場合は、以下のような書類が必要です。個人事業主の場合は提出書類も少なく、手続きにそれほど手間がかかりません。
- 開業届
- マイナンバーカード、個人番号通知カードなど個人番号が分かるもの
- 本人確認書類(マイナンバーカードがある場合は不要)
- 印鑑
- 青色申告承認申請書(任意提出)
また、法人として起業する場合は、法務局に「登記申請」をする際に用意しなければならない書類があります。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 印鑑届書
- 定款
- 発起人の決定書
- 就任承諾書
- 選定書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 出資の払込証明書
- 登記すべきことを記載した書面(または保存したCD-R)
会社の種類によって提出する書類に違いがあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
会社設立にあたって節税するには?
個人事業主から法人化することで、さまざまな節税が可能です。
まず、個人事業主の場合は所得税が課されますが、所得税の税率は所得金額によって5%から45%まで7段階にわかれており、さらに住民税の課税もあります。
一方で、法人税の最高税率は23.4%と、所得税の最高税率よりも低くなっているため、所得金額によっては法人化したほうが節税メリットを受けられるケースがあります。
その他の節税対策として、「役員報酬を経費として計上する」こともあげられます。
個人事業主の場合、副業の収入はすべて個人所得として課税対象になります。一方、この収入を法人からの役員報酬とした場合「経費」として計上できるため、法人税を抑えられます。
また、役員報酬には所得税が課せられますが、事業所得ではなく給与所得控除が適用されるため、会社を設立して役員報酬の形で受け取ったほうが節税につながります。
本業の会社にバレないように起業するには?
副業での起業がバレるきっかけになるのが、住民税の額が前年と比べて高くなった場合です。
住民税の金額は、前年の所得が多いほど高くなるため、起業で所得が発生すると給与から天引きされる住民税が高くなってしまうのです。
本業にバレないための対策としては、確定申告時に「普通徴収」を選択し、本業の会社から天引きされないようにすることです。
ただし、普通徴収を選択できない自治体もありますし、普通徴収にすることで会社から不審に思われる場合があるため、注意が必要です。
また、安易に職場で「起業した」と話すことが、会社にバレるきっかけになる場合もあります。思った以上に社内に広まる可能性もあるため、同僚に話すのはやめておきましょう。
なお、対策をしたとしても、会社にバレてしまうリスクは完全には避けられません。
ステップに沿って副業から起業しましょう
副業の収入が思った以上に増えたときは、まず個人事業主を検討してみてください。開業届を出すことで青色申告ができるため、節税にもつながります。
会社設立時は資金が必要なうえに、社会保険への加入などさまざまなコストや事務作業が発生します。
本業を続けながらであれば負担が大きく増える可能性もあるため、あくまで本業がおろそかにならないように慎重に検討しましょう。