副業を検討している方の中には、「会社に副業申請を提出する必要があるのか」「許可の出やすい申請理由を知りたい」と考えている方がいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、副業許可申請書の書き方やサンプル、副業許可が出やすい理由について解説します。副業をはじめるにあたって申請方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
副業をはじめる際、本業の会社に申請する流れ
まず、副業をはじめる際に本業の会社へ申請する流れについて解説します。
本業の就業規則を事前に確認しておく
従業員が常時10人以上いる会社には、必ず就業規則という労働者が守るべきルールが制定されています。就業規則には働き方のみならず、副業の規則について記載されていることがあります。
仮に就業規則で副業が禁止されている場合は、残念ながら副業申請自体を受け付けていないでしょう。
一方、就業規則に副業が許可されているといった旨が記載されている場合はもちろん、申請方法についての記載がある場合は、申請を行うことで副業が許可される可能性があります。
副業許可申請書を記入して本業の会社へ提出する
就業規則を確認して、想定している副業と規定を見比べて問題がないと判断できたら、担当者に副業許可申請書を提出しましょう。
申請書のフォーマットは会社によって異なるため、就業規則やルールで定められているものを使用してください。
ただし、副業を許可している会社は増えているものの、副業に対する環境が整備されていない場合もあります。副業に関する社内制度が整っていない場合、許可が下りるまでの流れがあいまいで時間がかかったり、忘れ去られてしまったりというケースも考えられます。
社内ルールがあいまいな場合は、申請書を作成する前に上司などに口頭で相談してみましょう。
本業の会社で審査を受ける
勤め先に申請書を提出できたら、審査が終わるのを待ちましょう。会社によって審査の内容や厳しさは変わりますし、結論が下されるまでに時間がかかる可能性もあります。
例えば、社員の副業について慎重な姿勢をとる会社の場合、審査もそれなりの時間を使って丁寧に確認をするでしょう。
また、申請書に問題があった際は、書類の再提出を求められたり、許可が下りなかったりといった事態も考えられます。
はじめから副業を全面的に許可する姿勢をとっている会社の場合は、申請書の提出後、すぐに副業をスタートできる場合もあります。しかし、許可を出すことに慎重な会社に関しては少し時間を要する、もしくは却下されるといった事態に陥ることもあります。
副業申請が必要かどうか就業規則で副業規定を確認する
前提として、副業の申請が必要かどうかを、副業規定や就業規定で確認してあらかじめ把握しておく必要があります。
副業自体は就業規則で許可されていても、副業のジャンルによっては副業規定で許可されていない可能性もあるので注意してください。
ここからは、副業の規定で記載している内容ごとに解説します。
1.副業を完全に許可している場合
就業規則に副業を禁止する旨が記載されている場合から確認していきましょう。
「業務上知り得た情報を副業に活用しなければ届け出不要で副業は許可」または「会社の名前を出さなければ副業許可申請書の提出は必要ない」といった場合は、副業の申請を行う必要はありません。
しかし、副業が完全に許可されている場合でも申請書の提出が義務化されている場合は、必ず申請書の準備から提出、審査を得て副業に従事しましょう。
2.簡単な審査を受ければ副業を原則許可している場合
申請書を提出し、簡単な審査を受けるだけで副業を許可してもらえるケースです。このようなケースは就業規則に詳細が書かれていない場合もあるので、まずは上司または担当者に必ず確認するようにしましょう。
「原則許可」としている場合は、基本的には申請書の提出、もしくは簡単な手続きだけで許可が下りることがほとんどです。面倒に思うかもしれませんが、既定の手順を踏んで会社の許可を得ましょう。
3.厳密な審査を受ければ副業を条件付きで許可している場合
会社に申請する必要があり、さらに副業の内容について詳しく報告しなければいけないと就業規則に書かれているケースです。
このような文言が書かれている場合は、審査も厳しく行われる傾向にあります。また、このような記載がされている場合は、副業申請の書類についても、細かい指定があるケースが多いです。申請書のフォーマットや記載項目は会社によって異なります。
ルールに従い、会社が指定しているフォーマットを利用して申請書を作成しましょう。また、記載漏れなどがあると、申請が受理されない可能性もあるため、提出前に不備がないか丁寧に確認しておくことをおすすめします。
4.副業を完全に禁止している場合
就業規則にはっきりと「副業は禁止」と記載されているケースです。
就業規則は法律や憲法ではないため、最終的に副業をするのかしないのかの判断は労働者本人に委ねられます。ただし、副業を禁止としている企業で副業をしていることが発覚した場合、懲戒処分の対象となる可能性もあります。
万が一、禁止されていた副業を行ったことで懲戒解雇となってしまった場合でも、本業の業務に支障がないなどの理由により、裁判所によって覆されるケースはあります。
しかし、副業が完全に禁止されている場合は、安全に副業をはじめるためにも会社のルールが変わるまで待つのがおすすめです。
副業の申請書のテンプレート
基本的には、会社ごとにテンプレートは指定されているため、個人で準備する必要はありません。しかし、申請の準備にあたって、記載を求められることの多い項目を知っておきたいという方や、就業規則でテンプレートが指定されていないという方向けに紹介します。
民間企業向けの副業許可申請書のサンプル
こちらのテンプレートは、一般的な企業での副業許可申請書です。副業先の企業名や業務内容、頻度や勤務時間など、基本的な項目が押さえられています。
公務員の副業許可申請書のサンプル
- テンプレート1(https://www.pref.kyoto.jp/fukei/site/soumu_j/kunrei/documents/keimu241228.pdf)
- テンプレート2(https://www.tmd.ac.jp/cmn/medsomu/kengyou/104mihon.PDF)
こちらは、公務員用のサンプルです。
公務員は国に従事しているため、許可証の提出先は文部大臣です。会社員と比較すると、公務員は副業の制限が多く、業務内容によっては一切の副業が禁止されている場合もあります。
このため、副業を行う理由など、民間企業と比べて細かく記入する必要があり、審査が厳しいという点を忘れないようにしましょう。
副業の申請書に記載すべき項目と内容
副業の申請書に記載すべき項目について、詳しく解説します。これから副業をはじめるために、申請書を出す可能性が少しでもあるという方は、ぜひ参考にしてください。
副業先の会社名や業種などの情報
まずは、副業先の会社情報を記入しましょう。
業種によっては本業と競合すると判断され、許可が下りない可能性もあります。当然ながら、会社名や業種、業務内容などを偽るのはやめておきましょう。申請が下りないばかりか、最悪の場合懲戒処分を受ける危険性があります。
基本情報は正しく間違えのないように記入してください。また、フリーランスなど企業に属さないで副業をする場合は、取引先の企業名を記載する場合があるため、事前に記載方法を確認しておきましょう。
副業先での雇用形態や勤務体系など
パートやアルバイト、派遣社員や嘱託といった雇用形態や、勤務体系などの働き方について記入しましょう。雇用形態がわからない場合は、企業に雇用形態について確認してください。
また、アフィリエイトサイトを運営したり、クラウドソーシングサイトを利用したりするなど、企業で勤務せず自宅で働く場合は、雇用形態について記入する必要はありません。
副業をはじめる理由
なぜ、副業をはじめたいかについて記入します。
理由としてよくあげられるものに、「本業以外の収入源を確保したい」という内容がありますが、これをそのまま書くと、企業にネガティブなイメージを持たれてしまい、許可が下りない可能性があります。
そこで、収入を確保したい具体的な理由を記載することがおすすめです。例えば、「子どもの受験費用を稼ぎたい」「親の介護費用を稼ぐため」「資格受験のため」など、具体的に記載すれば認められやすいです。
また、その副業をすることで本業に対して貢献できるという旨を伝えることができれば、より許可が下りやすくなります。
社外で仕事をしながら学んだスキルや能力を使うことで、本業の業務効率や管理体制が向上するなど、副業をすることで会社側も得をするといった理由を考えられればなお良いでしょう。
誓約
副業許可の申請をすると、その仕事が以下の項目にあてはまるかどうかをチェックされます。
- 本業に支障が発生しないこと
- 会社と同業の会社ではないこと
- 会社の信頼や品位を落とさないこと
- 会社を利用した勤務や個人事業を行わないこと
- 業務上知り得た情報を外部に漏らさないこと
- 会社の顧客情報や社外秘となる情報、その他会社の内部事情を漏らさないこと
そして、これらの項目について、申請書を通して誓約する必要があります。誓約を破ってしまうと最悪の場合、損害賠償などに発展してしまう可能性もあるため注意しましょう。
本業の所属部署などの情報
最後に、自身が勤めている所属部署などの情報を記入します。自分の氏名(押印)、提出先の上司の氏名、申請日などを記入すれば完了です。
副業の申請をして許可が出やすい理由の例
ここからは、副業の許可が降りやすい申請理由について、例をあげながら解説します。実際に副業の許可証に理由を書いている方や、これから副業をはじめようと考えている方は、こちらを参考に副業をはじめる理由について考えてみてください。
正当な理由でお金が必要だと伝える
正当な理由とは、例えば子どもの教育費や養育費、受験費用や仕送りなどさまざまなものがあげられます。
その他、親の介護や資格受験費用など、正当な理由でお金を稼ぐ必要があるということを伝えましょう。
より具体的に、どうしてもお金が必要であるという旨を誠心誠意伝えることがポイントです。
本業へのメリットやシナジーを強調する
本業以外に別の仕事をすることにより、そこで得た経験やスキルを本業にも生かせるという点を伝えることで、副業の許可が下りやすくなります。
例えば、副業でエクセルのマクロを扱うため、マクロを勉強して資格まで取得したとします。その後、本業でも積極的にマクロを使ってエクセル作業を行うようになったとしたら、作業効率は上がっていくでしょう。
このように、本業の勤務時間外で身につけた技術によって、本業の業務効率が上がるのであれば、会社にとってもプラスになります。
本業への支障が出ないことを伝える
副業は本業に支障が出ないよう行うことが大前提であるため、本業に影響が出ない旨を説明することも大切です。副業を許可している会社の多くも、本業に悪影響が出ない前提のもとに社員の副業を認めています。
副業をする旨を伝えるときは、本業に支障が出ないということを約束し、その約束を絶対に守り通しましょう。
副業で徹夜になり、会社に遅刻するなどといったことは言語道断です。スケジュールの管理方法や、副業の仕事時間が本業に差し障らない点などを伝えるようにしましょう。
嘘は書かないようにする
当たり前のことですが、嘘は書かないようにしましょう。審査を乗り越えられたとしても、書類に嘘を書くということは、社会的な信用を失うことにもつながります。
無用なトラブルを避けるためにも、必要な情報を正直に会社に伝えるよう心がけましょう。
副業の申請をしても許可されないことが多いもの
ここからは、申請をしても許可が下りづらい副業について解説します。自分がはじめようと思っている副業があてはまらないかどうか、よく考えながら最後まで読んでみてください。
本業と競合するような副業
自身が勤務している会社と同じ業務を展開している会社への副業は、許可が下りづらいです。
また、本業での業務と同じような業務を個人事業主として請け負うことも、本業の競合と判断され許可が下りにくいでしょう。
具体例をあげると以下のものがあります。
- Webサービスを展開する会社に勤めていて、副業のために別のWebサービスを提供している会社に勤務する
- Webサイトの制作会社に勤めていて、副業のため同種の会社で副業を行う
- ある商品を仕入れて販売している会社に勤務していて、副業として別会社を設立し、同じ商品を仕入れて販売する
こうした副業は、副業と本業が競合すると判断されるため、基本的には許可が下りません。
社会的信用を損ねたり公序良俗に反する副業
社会的信用を損ねたり、公序良俗に反したりするような副業も許可が下りません。例をあげると以下の通りです。
- 風俗関連の仕事
- クレジットカード現金化を提供する会社
- ねずみ講やマルチ商法
上記の仕事以外にも、押し売りなど、節度のない販売方法を採用している会社も、許可が下りない可能性が高いです。
審査の段階で、申請者が働こうとしている会社の情報は全て調べられます。そこで、会社の信用を損ねるようなビジネスに手を出そうとしていると判断された場合、申請は下りないので注意しましょう。
本業への支障が大きい副業
副業は本業の就業時間外に業務を行うことになります。場合によっては夜遅くまで作業を行わなければいけない可能性もあるでしょう。
このような長時間労働や、休日の労働が常態化した場合、本業一本に専念していたときに比べて、体力的にも精神的にも消耗してしまいます。申請者にとっても会社側にとっても望ましい状況とはいえません。
また、仮に副業が成功したとしても、その分本業がおろそかになってしまうような事態も会社側は避けたいでしょう。
審査の結果、「この副業は従業員の体力やプライベートな時間を必要以上に奪うため、さまざまな面において本業に悪影響を及ぼす可能性がある」と判断されれば、副業の申請は却下されてしまうかもしれません。
副業をはじめる場合、本業に支障がないレベルで行うことが望ましいですし、上手にスケジュール管理をして本業に影響はないということを証明できるようにしましょう。
関連記事:サラリーマンにおすすめの副業は?人気ランキングも紹介
副業申請についてよくある質問
ここからは、副業申請についてよくある質問について解説します。今後副業をはじめる可能性がある方や検討している方、副業申請書を提出しようと考えている方はぜひ参考にしてください。
そもそも副業申請書は提出したほうがいいの?
副業申請書の提出をするべきかどうかは、会社の就業規則に従いましょう。
原則OKではあるものの、「申請書の提出が必須」という場合は、必ず許可書の提出をしてください。申請書を提出して審査を受ける必要がある場合も、当然許可書の提出を行います。
副業が完全OKな職場で、申請書の提出も必要ないと就業規則に明記されている場合は、提出せずとも問題ありません。しかし、副業をはじめる前に念のため上司や担当者に確認することをおすすめします。
会社によっては、申請書の提出以外の条件を設けている可能性もあるので、担当者や上司に確認して間違いのないようにしましょう。
副業申請せずに副業していることがバレるとどうなるの?
事前の申請さえしていれば副業を認めている会社の場合、厳重注意や許可書の提出を求められるだけで済むケースもあります。
しかし、業務内容によっては会社での立場が危うくなったり、重いペナルティが課されたりする可能性があります。
例えば、副業の勤務先が競合他社であったり、本業で知り得た情報を副業に使ってしまったりしたケースが考えられます。
そもそも会社が副業を禁止していた場合は、懲戒処分をいい渡されてしまう可能性があるということも忘れないようにしましょう。副業の仕事先が本業の競合他社でないか、もしくは会社が不利益を被らないかなどを確認するようにしてください。
申請して副業許可を得られた後に気をつけることは?
申請の結果、許可が下りたのであれば仕事内容や勤務時間にも問題がなかったということになります。そのまま副業をスタートして問題ありませんが、慣れてくると仕事量が増えたり、思いがけず激務になってしまったりすることがあるかもしれません。
そうなると本業にも支障が出てしまい、せっかく得られた副業許可が取り消しになってしまう可能性もゼロではありません。
許可が得られた後も、あくまで副業は副業であることを肝に銘じたうえで、極力本業に支障が出ないレベルで仕事をするようにしていきましょう。
就業規則を確認したうえで副業申請をしましょう
この記事を読んで、実際に副業の許可申請を提出しようと考えている方は多いと思います。申請書の書き方など、ぜひ参考にしてください。
許可を得た後は、くれぐれも会社に不利益を与えることのないよう、そして本業に支障が出ない範囲で副業するよう心がけましょう。
安心安全に副業を行っていくためにも、事前に当記事であらかじめ申請時のポイントや注意点を押さえておくことをおすすめします。