この記事では、コーチングとセルフコーチングを比較し、それぞれのやり方と重要な要素について紹介します。コーチングに興味のある方やコーチングの正しいやり方が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
コーチングとセルフコーチングの比較
まず、コーチングとセルフコーチングの特徴とメリットについて、「場所・時間」「金額」「人数」「効果」の観点から解説します。
コーチングの特徴とメリット
コーチングとは、専門知識のあるコーチと対話を重ねることで自ら気づき発見し、どのように行動したらよいか、意思決定を引き出していくものです。
場所・時間
コーチングは一人ではできないため、コーチと場所や時間について調整が必要です。最近ではオンラインでもコーチングを実施することも増えてきました。
金額
コーチへ支払うコーチング料がかかります。金額はそれぞれ異なり幅が広いため、相場といえるものはありません。
ただし、1時間あたり約10,000〜15,000円(税込)に設定されているところが多く見られます。経営者や経営幹部向けのコーチングは約50,000円(税込)など、内容や対象によっても異なります。
人数
1対1でコミュニケーションを取りながら進めるため、基本的にコーチと2人で行います。グループで行うこともありますが、一度に教育できる人数に制限があるため大人数では行いません。
効果
プロのコーチの対話技術により、自分の発想を超えた変化を期待できるため、比較的すぐに、効果が出やすいです。場所や時間、金額などのコストがかかってしまいますが、そのぶん効果が出やすいのがメリットです。
セルフコーチングの特徴とメリット
セルフコーチングとは、自分で自分に語りかけて対話を重ねることで、どう行動したらよいか選択肢を見つけ出すことです。つまり、自分で自分をコーチングするというのが特徴です。
場所と時間
セルフコーチングは自分で行うため、いつでもどこでもできます。
金額
自分で行うことなので、もちろんお金もかかりません。0円でできるため気軽に始められます。ただし、コーチング技術を身に付けるために勉強をする場合は、セミナー費用などが必要です。
人数
一人で行います。
効果
慣れるまでは、効果が出ない進め方をしてしまいがちです。しかし、セルフコーチングをマスターすると成長スピードが上がります。
セルフコーチングは、いつでもどこでも自分の都合で行えるのが、大きなメリットです。時間や場所、お金にとらわれないため今すぐでも始められます。
コーチングのやり方の手順
コーチングを実施する際、手順だけでなくその前準備となる3つの要素が大切です。
コーチングの実施に大切な3つの要素
コーチングの実施においては、以下3つの要素が非常に大切です。
- 自己基盤を整える
- クライアントから意思決定を引き出すマインド
- クライアントと信頼関係を構築する
例えば、アーティストがライブを成功させるためには、日々のボイストレーニングを欠かさないですよね。何事も準備や土台作りが重要なように、コーチングにも土台がなければ効果は上がりません。
現在、コーチングを行っているが効果を感じていない人や、これからコーチングを始める人は、この3つをまず確認してみましょう。
自己基盤を整える
1つ目の要素は、「自己基盤を整える」ことです。自分がどういった人間なのか分析し、自分自身をしっかり理解していなければ、到底クライアントから気づきや行動の選択肢を引き出すことなどできません。
もし、「これではだめだ」「自分ではできない」と自分を否定している状態にあるなら次の3つを通して、自己基盤を整えることから始めましょう。
- 自分自身を受容し、承認する
- 自分という人間に対して理解する
- 自分を他人に開示し、表す
クライアントから意思決定を引き出すマインド
2つ目の要素はマインド。コーチングのマインドとして、クライアントから意思決定を引き出せると信じることはとても大切です。
「これをしたら解決できる」「これが正解だ」とコーチの考えを正解として伝えることはありません。行き過ぎたアドバイスやサポートは、クライアントの自発的な行動や発想力向上を妨げてしまいます。コーチの考えを意見したり、期待する方向に導いたりすることはコーチングではないのです。
あくまでコーチングは問題の解決や目標の達成に大切なことを、クライアントから引き出すことです。クライアントを信じるマインドが軸になることを、常に心に留めておきましょう。
クライアントと信頼関係を構築する
3つ目の要素は、信頼関係の構築です。コーチングの成功には、コーチとクライアントの信頼関係がとても大切になります。
「このコーチは信頼できない」とクライアントが心を閉じてしまうと、いくらコーチが問いかけても答えは引き出せません。「このコーチなら本心を聞いてもらえる」と安心してクライアントが開示できる状態になって、初めてコーチングの効果が出ます。
コーチとして信頼してもらうためには、まずコーチ自身がクライアントのことを信じ、受け入れ、相手を変えようとしないことです。人それぞれ性格や価値観などは異なり、別の人間であるコーチが変えられるものではないからです。
クライアントを信じ、相手が自ら答えを見つけられるまで、根気よくサポートするというスタンスに徹することで信頼関係は深まります。
コーチングのやり方の基本的な4つのステップ
次にコーチングの手順について、基本的な4つのステップを説明します。
1. 現状を把握する
まずは現状の問題や、クライアントのゴールに対する進展についてヒアリングしましょう。ヒアリングすることで、クライアント自身の考えも整理されます。
またコーチの「聞く姿勢」が見えることで、安心感を得られたり不安が解消されたりすることもあります。信頼関係の構築にも繋がるため、コーチングの効果を高めるという意味でも重要です。
現状を把握することで、課題であるゴールまでのギャップも明確にできます。現状をしっかり把握するためには、ヒアリングして内容について掘り下げましょう。
ヒアリングをして返ってきた答えに対して、「具体的には?」「どのような結果を求めていますか?」といった質問を投げかけます。このとき、コーチとして話しやすい状態を作り、信頼関係を構築することを心がけましょう。
2. 目的を明確化する
次にコーチングを行う目的や、達成したい目的を明確化しましょう。達成したい目的とは、人間関係やスキル、能力、考え方などさまざまです。
「何が」「どこで」「何を」「いつまでに」「どのように」「なぜ」達成したいのか、5W1Hでヒアリングを進めます。
<例>
- 「何が今問題になっていますか?」
- 「どのような問題ですか?」
- 「いつから、どのようなときに起こる問題ですか?」
特に「なぜ」を掘り下げることが大切です。「やりたい」「進めたい」という思いには、必ず「なぜ」が隠れています。
3. 障壁になり得るものを確認し、リソースを明確化する
これまで現状を把握し、目的を明確にすることで何が課題なのか分かりました。次に課題の中で、現在の障壁となっていることを確認しましょう。
<例>
- 目的:毎日定時に帰宅し、プライベートの時間を満喫したい
- 障壁:仕事量が多い・仕事の効率が悪い
具体的な問題を確認することで、目的を達成するまでの道のりが見えます。目的達成のためには、障壁をなくすことに利用できるリソースが必要です。そのため次に、現在持っているリソースやクライアント自身も気づいていないリソースを明確化しましょう。
リソースとは経験・知識・人脈・金銭・価値観などを指します。「どんなリソースを持っている?」と聞いても、うまく答えられる方は少ないので、以下を参考にヒアリングしましょう。
- 「今までにうまくいったこと・うまくいかなかったことはある?」
- 「協力してくれる人はいる?」
- 「心に残っていることはある?」
マイナスに思えてしまう部分でも、角度を変えて見ることでリソースになります。クライアント自身も気づいていないリソースは、コーチが引き出しましょう。
4. 必要な行動を明確化して行動計画を作成する
目的を達成するためのリソースを用いて、必要な行動を明確にしましょう。課題に対する具体的な行動を明らかにし、行動計画を作成します。質の高い行動計画を作るためには、まずは大きな視点で考え、それから具体的な行動を考えていきましょう。
<例>
- 目的:「毎日定時に帰宅し、プライベートの時間を満喫したい」
- 課題:「障壁:仕事量が多い・仕事の効率が悪い」
→仕事の効率をよくする(大)
→仕事の優先順位を決める(中)
→仕事を全てリストアップする(小)
先にざっくりとした行動を考え、それを達成するための具体的な行動を考えることで現実的な計画ができます。
行動計画は、クライアントが自ら立てることが重要です。コーチが計画を立ててしまうと、他人にやらされていると感じてしまいます。モチベーションを維持するためにも、クライアントが自発的に具体的な行動に気づくことが大切です。
セルフコーチングのやり方の手順
次にセルフコーチングの手順について、説明します。セルフコーチングにおいても、3つの要素が土台として重要です。
セルフコーチングの実施に大切な3つの要素
セルフコーチングの実施においては、以下の3つの要素が重要です。
- 自己基盤を整える
- 定期的に自問自答する
- リラックスし集中できる環境を整える
コーチング同様に、セルフコーチングにおいても土台が重要です。セルフコーチングはコーチングと異なり、自分自身で進めます。自問自答でコーチングをするため、土台がしっかりしていないとぶれてしまい、うまくいきません。
そのためセルフコーチングの効果を高めるためにも、まずはふだんから土台をしっかり作りましょう。
コーチングと同様に自己基盤を整える
コーチング同様に、セルフコーチングにおいても自己基盤を整えることが大切です。長所や短所にとらわれず、自分自身について理解し認めましょう。コーチングと同じように、以下3点を通して自己基盤を整えます。
- 自分自身を受容し、承認する
- 自分という人間に対して理解する
- 自分を他人に開示し、表す
日本人は自己肯定感が低い人が多いため、まず「自分で自分を認める」ことが難しい方も多いでしょう。しかし自分を受け入れられていない状態でセルフコーチングを行うと、最大限の効果が得られません。
例えば「営業成績がトップだからよい」「仕事が遅いから悪い」と考えるのではなく、「営業成績がトップ」「仕事が遅い」という事実をまず受け入れましょう。よい・悪いは感情の動きであり、事実ではありません。
定期的に自問自答する
コーチングは、コーチと対話をして進めていきますよね。しかしセルフコーチングは、自問自答でコーチングをする手法です。効果的にセルフコーチングをするためには、ふだんから定期的に自問自答をすることが大切です。
<例>
- 「自分が求めている結果は何か?」
- 「なぜ自分はその結果を求めているのか?」
- 「自分は今、どのようなことができるのか?」
定期的に自問自答をすることで、セルフコーチングの際の自分との対話にも慣れていきます。また、自分に関する理解も深まるため、自己基盤を整えることにも繋がります。
リラックスし集中できる環境を整える
セルフコーチングは自分自身で進めるため、自分にとって実施しやすい環境を整えることが大切です。頭と心を使うため、リラックスし集中できる環境がおすすめです。人によってリラックスできる環境は異なるため、自室やカフェなど自分に合った場所を探してみてください。
またセルフコーチングを行っていく中で、ネガティブな気分から自信のある状態やリラックスできる状態に持っていくことも可能です。その境地に到達すると、どんな場所でもリラックスできるようになります。
セルフコーチングのやり方の基本的な4つのステップ
次にセルフコーチングの手順について、基本的な4つのステップを説明します。
1. 目標を設定する
セルフコーチングを行うときには、まず目標を設定しましょう。コーチングでクライアントの目標を達成させるように、セルフコーチングでは自分で考えて目標達成まで導きます。行動するために必要な目標を設定することで、モチベーションも高まるでしょう。
目標設定のために、まず「自分はどうなりたいのか」「自分はどうしたいのか」と自問自答をします。曖昧な内容でも紙などにリストアップし、その中で目標を明確に設定しましょう。目標がゴールになるため、具体的に決めることが大切です。
例:×「営業成績を上げたい」
◯「営業成績を10%上げて、トップになりたい」
数字などで表現すると、目標達成までの詳細な道のりが見えてくるでしょう。
目標を設定する中で注意することは、あまりにも大きすぎる、遠すぎる目標は設定しないようにすることです。目標までの道のりが遠いと、モチベーションをキープしづらくなってしまうためです。また期限を設定すると、焦ってしまうので、こちらもおすすめしません。
2. 現状を把握する
目標を設定したら、現状を把握するために現在の課題を明確にしましょう。現状と目標の間のギャップが、目標の障壁になっているものであり課題でもあります。現状把握から課題の原因まで把握することで、目標までの道のりを明確にイメージできるようになります。
<例>
目標:営業成績を10%上げたい
→現状:現在の売上は10,000,000円
→課題:売上を1,000,000円プラスすることが必要
→自問自答:なぜ1,000,000円アップできないのか?低単価の商品しか売れないから?高単価商品のメリットを伝えられていない?
現状を事実として把握することで、課題を客観的に見られます。なぜ課題になっているのかを自問自答することで、より詳細な原因を分析可能です。課題の原因まで把握することで、次のステップに活かせます。
3. 行動計画を立てる
課題の原因が分かったところで、次は行動計画を立てていきましょう。目標に向かってどのような行動をするか計画することで、目標への道のりを明確にできます。
まずは時間や期限を設定した具体的な内容で、行動計画を立てましょう。ただし、現実的でない期限にしてしまうと、行動を達成できなかった失敗経験になってしまいモチベーションが低くなってしまいます。現実的な期限で、実現できそうな計画を立てましょう。
またコーチングと同様に大きな観点から、達成するための小さな行動を考えます。
<例>
目標:営業成績を10%上げたい
→現状:現在の売上は10,000,000円
→課題:売上を1,000,000円プラスすることが必要
→行動:今月末までに高単価商品を1つ売れるようにする(大)
→今週中にプレゼン方法を変更(中)
→今日、高単価商品のメリットを洗い出す(小)
4. PDCAサイクルを継続的に回す
セルフコーチングでは、自ら進捗管理を行います。そのため自分で、PDCAサイクルを回しましょう。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4段階を行うことで、業務や作業を進めやすくするやり方です。Action(改善)が完了したら、Plan(計画)に戻って繰り返し、改善を促し、何度も実行を繰り返しましょう。
コーチングの効果はすぐに現われないため、継続する必要があります。目標達成にあたって、継続的に行動計画を立て実行し、Check(評価)とAction(改善)を繰り返してください。
コーチングで起業するときの手順
コーチングで起業したい、と考えている人も少なくないでしょう。そこで起業する際に必要な学びから、クライアント獲得まで具体的な手順を紹介します。
コーチングを学ぶ
コーチングで起業する前に、まずコーチングについて学びを深める必要があります。資格がなくても起業はできますが、あなたがコーチングのスキルを身に付けていなければビジネスとして成功できません。
コーチングについて勉強する方法は、主に以下の3つです。
- スクールで勉強する
- 研修やセミナーで勉強する
- 本で勉強する
スクールやセミナーは、受講するためにある程度のまとまった金額がかかります。「いきなり大金をかけるのは怖い」と思う人は、まず本で勉強することがおすすめです。本屋やAmazonなどで探せば、2,000円前後で分かりやすい本を見つけられます。
またスクールでは約100,000円(税込)前後、セミナーでは約10,000円(税込)前後の費用が必要ですが、プロのコーチングを体験できることがメリットです。スクールによっては資格の取得や、起業の情報交換、起業のサポートが受けられるため、金額に対する利益が大きいでしょう。
提供するコーチングメニューを決める
コーチングについて知識を深めたら、次に起業について詳細にイメージしましょう。ビジネスでコーチングをするためには、顧客に選んでもらわなければいけません。数多くいるコーチの中から選んでもらうためには、「あなただからこそできる」強みが必要です。
そこで「誰の」「どんな」悩みを解決し、どういった価値を提供できるのか、といった自分の強みを明確にし、独自の商品を作りましょう。どの分野のプロなのかを決めることで他のコーチとコーチングメニューに差をつけられます。
また起業前に、競合他社をリサーチすることも大切です。「どのようなターゲット」に「どういったサービス」を提供しているコーチが「何人」いるのかなどをリサーチし、市場の需要と供給を把握します。他のコーチの強みを知ることで、自分の強みと被ることなく参入できます。
見込み客のリストを作成する
コーチング起業において成功の鍵を握るのは、クライアントを獲得できるかどうかです。そのため見込み客となる、あなたのコーチングメニューとマッチしそうな人たちとどう出会うかが重要になります。まずは身近な人から始め、以下のように出会いを広げていくことがおすすめです。
- 友人・知人をリストアップ
- 友人・知人に紹介を依頼する
- 名刺交換会・異業種交流会などに参加する
- 見込み客になりそうなターゲット層が集まるセミナーに参加し、名刺交換をする
基本的には自らの人脈をフル活用し、クライアントを探しましょう。将来的にWebサイトやSNSなどインターネットを利用したマーケティングで見込み客を増やすと、顧客の獲得がより安定します。
クライアントを獲得するためのビジネススキルを習得する
コーチングスキルを身に付けても、集客できないことで失敗してしまう人は少なくありません。スキルを無駄にしないためにも、ビジネスの基本や集客方法を学ぶことが大切です。集客には以下のようなものがあるため、自分はどのツールで集客するかを明確にしましょう。
- Webサイトを作る
- SNSを活用する
- リスティング広告・SNS広告を打ち出す
ビジネスの基本や集客を学ばなければ、コーチングスキルはあるがお金を稼ぐことはできません。コーチング起業を成功させるためには、ビジネススキルが必要になります。
起業の基本は本などを用いて、独学で学ぶことも可能です。しかし独学で学ぶことで遠回りになってしまうリスクを考えると、セミナーなどに参加しプロから学ぶほうが近道でしょう。
コーチングはステップに分けて段階的に実施するのがおすすめ
本記事では、コーチングの正しいやり方やコーチングビジネスの手順について紹介しました。
- コーチングでは、クライアントの自発的な行動が重要
- セルフコーチングは自分の都合に合わせてできる
- コーチングビジネスでは、コーチングスキルだけでなくビジネススキルが大切
コーチングは正しいやり方で行うことで、効果を最大限に発揮できます。またコーチングビジネスは簡単なものではありませんが、起業までにしっかり準備することで軌道に乗せられます。
本記事を参考にあなたの強みを活かし、クライアントを幸せにできるようなコーチを目指してみてください。