コーチングの導入を検討している方の中には、テーマの必要性や決め方で悩む方が少なくありません。

そこでこの記事では、コーチングでのテーマ設定が必要とされる理由や、テーマを決める際の方法を解説します。

加えて、具体例やテーマを決める際の注意点も詳しくまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。

コーチングにテーマが必要といわれる理由

コーチングにおけるテーマとは、「コーチとクライアント(相談者)が具体的に話す話題」のことです。

目標を見失わずにゴールへと導くためには、あらかじめ「テーマ」を決めておくことが重要で

す。テーマを決めておくことで、クライアントが本当は何をしたいのかを知ることもできます。

例えば、テーマが「転職」だった場合で考えてみましょう。

クライアントが転職したいのは、「次にチャレンジしてみたい仕事があるから」なのか、「今の職場に不満があるから」なのかを、クライアント自身も気づかなかった自分の思いに気づかされるといった場合があります。

このように、テーマを設定しておけば、クライアントの目標に向かって的確にコーチングできるのです。

コーチングのテーマは2種類

コーチングでテーマを決める際は、大きく分けて以下2種類のテーマに分類します。

  • 継続的にコーチングで扱うテーマ
  • セッションごとにコーチングで扱うテーマ

1. 継続的にコーチングで扱うテーマ

コーチングは、一般的に3カ月から数年を目安に行われます。

継続的に扱うテーマでは、クライアントがコーチングを受ける目的を把握できるよう注意しておきましょう。

「コーチングを受けようと思ったきっかけは?」などと問いかけをすることで、クライアントの目的がはっきりしてくるはずです。

また、長期的なコーチングで設定するテーマでは、クライアントの「将来」に関する目標を定めることが多いです。

「将来的に他の仕事にチャレンジしたい」などのテーマを設けることで、全てのコーチングを受け終わった後、クライアント自身が将来的にどのようになっていたいのかを明確にできます。

基本的には、初回で決めたテーマが変わることはないため、決めたテーマを大きな枠として捉えて、その後のセッションを進めていくことになります。

2. セッションごとにコーチングで扱うテーマ

セッションごとに扱うテーマは主に、「現在」のことについてが多くなります。

例えば、継続的なテーマとして選んだ「将来的に他の仕事にチャレンジしたい」という大きなテーマを軸に、「今働いている職場での不満」などを各セッションごとでテーマとして使うことができるでしょう。

現在をテーマにすることで、今の自分を知ることができ、「これから先どう進むべきか」「大きなテーマにたどり着くために今どのような行動をするべきなのか」などを整理し、考えることが可能となります。

ただし、ここでのテーマ決めは必ずしも、「継続的に扱うテーマ」と関連づける必要はありません。

クライアントにとって、より重要と考えるテーマがあれば、そのテーマに沿ってコーチングを行っていきます。

コーチングで扱うテーマの具体例

それでは、コーチングでは具体的にどのようなテーマが選ばれているのでしょうか? 

ここからは、クライアントから出されることが多いテーマについて、具体例を紹介します。

テーマ例1. 現在の仕事について

仕事関連に関するコーチングは、特に人気のテーマです。個人だけでなく企業でも行っており、どちらも「ビジネスコーチング」と呼ばれています。

ビジネスコーチングでは、下記のような具体例がテーマとしてあげられることが多いです。

【個人の場合】

  • 仕事でスキルアップしたい
  • 転職をしたい
  • 好きなことを仕事にしたい

【企業の場合】

  • 社員の意欲を向上させたい
  • 職場の環境を良くしたい
  • 新しい事業を開拓したい

仕事や職場に関して悩んでいる方は多く、新しい事業の開拓やスキルアップなど、さまざまなテーマがあります。

ビジネスにおける知識や経験が必要ですが、これらを身につけておくことでクライアントの意向に寄り添いやすくなるでしょう。

テーマ例2. 自分のことについて

意外と取り扱われることが多いテーマが「自分のこと」、つまりクライアント自身のことについてです。

分かっているようで分かっていない自分自身のことに関するコーチングをする際には、以下のような例があります。

  • 自分が何をしたいのか分からない
  • 自分の性格を変えたい
  • 自分自身を好きになれるようにしたい
  • 人生設計をしたい
  • ダイエットをしたい

上記の他に、「他人に相談するのは恥ずかしい」「家族には相談しづらい」といった内容をテーマにあげる方も多いです。

これらのテーマでコーチングをする場合、クライアントの過去や現在、未来について詳しくヒアリングすることが重要となります。

クライアントの過去に何かしらの原因があり、それによりコーチングを希望する場合もあるため、クライアントに寄り添いながらコーチングを進めていきましょう。

テーマ例3. 人間関係について

人間関係をテーマにしたコーチングも、多くの方が希望するコーチングのテーマです。

  • コミュニケーション能力を向上させたい
  • 家族や友人との時間を増やしたい
  • 思っていることを上手に言葉にしたい
  • 家族の関係を良くしたい
  • 子供のことが分からない

このようなテーマの場合、コーチングによって、相手ではなく自分の考えを変えることができ、人間関係をより良くできる可能性が高くなります。

クライアントが「相手とどういった関係性を築いていくのが理想なのか」を問いかけ、自分の価値観や相手の価値観を理解できるよう注意してコーチングをしましょう。

テーマ例4. 恋愛について

恋愛についてのコーチングも、比較的多く取り扱われるテーマです。例として、以下のようなものがあります。

  • 恋愛の仕方が分からない
  • 彼氏が欲しい
  • パートナーとの関係を改善する方法を知りたい
  • 結婚相手を見つけたい

恋愛関係でどのようにすればいいのか分からない方や、現在のパートナーとの関係性に関する悩みを持つ方が多いコーチングテーマです。

パートナーとの関係を具体的にどのように築きたいのか、恋愛が自分自身にとってどのような存在なのかを明確にしてあげられるようなコーチングを心がける必要があります。

<中見出し>

テーマ例5. ライフスタイルについて

ライフスタイルについてのコーチングは、クライアントの日々の生活についてのテーマが多くなります。

  • 空いている時間を有効活用したい
  • 食生活の改善をしたい
  • 家の中を綺麗にしたい
  • 忙しい中でも自分の時間を作りたい

ライフスタイルをテーマにすると、クライアントの生活自体を見つめなおすきっかけができ、生活環境を充実させることにつながります。

ただし注意点として、クライアントが自ら生活環境を整理できるよう促すことが必要です。

テーマ例6. 勉強について

学生だけでなく、社会人になっても「何かを学びたい」と考えている人は多くいます。

  • 勉強する時間を作りたい
  • 資格を取得したい
  • 勉強することを習慣づけたい
  • 今、何を学ぶべきなのかを知りたい

これから「何かの知識を習得したい」「資格を取りたい」など、具体的な目標がある方は、「仕事をしながらどうやって勉強すればいいのか」など、時間の作り方や続けていく方法などを知りたいと考えています。

そのため、クライアントが勉強を続けていけるよう、具体的な「ゴール」や「目標」を決めて設定するなど、クライアント自身が継続できる方法をコーチングしながら模索していきましょう。

コーチングのテーマを決める方法

コーチングでのテーマ決めは、コーチが決めるのではなく、「クライアント本人が決めるもの」と考えておきましょう。

ここでは、テーマを決める方法について解説します。

テーマの大きさや正しさに囚われないことが大切

テーマ設定の際、「こんなテーマでいいのだろうか」と悩むクライアントがいます。

人それぞれ悩みの大小は違うため、テーマを決める際にクライアントがテーマの大小や、正しいかどうかに囚われないよう、クライアントの意向に沿ってテーマを決めていきましょう。

どんな些細なことでも今、頭に浮かんでいることは、クライアント自身にとってはとても重要である場合もあります。

嬉しかったことや、今思っていることを吐き出してもらうようにすることで、クライアントが望んでいるコーチングが可能となります。

緊急ではないが重要なことをテーマにする

テーマを決める際に最も適しているのが、「緊急ではないが重要なこと」です。例として、以下のようなものがあります。

  • 自分の将来について考えたい
  • 家族との時間を増やしたい
  • 仕事のスキルをアップしたい
  • 自主的に動ける部下を育成したい

無視はできない重要なテーマであるものの、「すぐに解決しなければならない」という緊急性は低いため、後回しにされがちなテーマが多くなります。

このように「重要ではないけれど気になっていること」をコーチングのテーマにすると、クライアントがなかなか手をつけられなかった問題を、思ったより早く解決できる可能性があります。

コーチングの目的を考える

テーマ決めの際は、クライアントが「そもそもコーチングを受ける目的は何なのか」をしっかり考えられるように導きましょう。

クライアントが目標を見失っていると、コーチングをしていても、クライアントの思い描いた結果につながらない可能性があります。

クライアントは、何か目的があってコーチングを受けたいと考えているはずですので、本来の目的から外れないように、しっかりとヒアリングをしていきましょう。

実際にコーチングをする際の流れ

ここからは、実際にコーチングをしていくにあたり、具体的なコーチングの進め方について解説します。

自己紹介して雑談する

まずは、お互いに自己紹介をするところから始めます。その後、お互いのことを知ってもらうために、雑談をする時間を設けることが大切です。

なぜなら、コーチングをする際に最も重要とされるのが、信頼関係を築くことだからです。

雑談を通してお互いを知り、クライアントとの信頼関係を築くことで、クライアントは思っていることを素直に伝えられるようになります。

信頼関係を築けていない場合、クライアントが本音を話せなくなってしまい、コーチングをうまく進められなくなってしまうでしょう。

ただし、雑談では知りえた情報の守秘義務や、何かトラブルが起きた時の対処方法などもあわせて伝えておくと良いです。

テーマを決める

次に、テーマを決めていきます。クライアントがすでにテーマを決めている場合は、そのテーマを採用します。

まだ、何をテーマにすればいいか分からない場合は、雑談などを通して出てきたクライアントの不安や悩みの中から決めるのも良いでしょう。

テーマはクライアントが話したいこと、希望することが対象となるため、テーマにおける大小や正解不正解などを考えずに、クライアントが自由に決められるよう導きます。

本来の目的と相違がないよう、テーマの候補をいくつかクライアントに提案してもらい、その中から一緒に、意向に沿ったものを決めていくようにしてください。

目標を設定する

テーマが決まったら、目標を設定します。目標を設定しておくと、どのように考えればいいのかや、どういった行動を起こせばいいのかなどを明確にできます。

例えば、「目標を達成した後に得たいものは何ですか?」や、「理想の自分はどんな自分ですか?」と質問をし、コーチングを受けた結果どうなりたいのかを、クライアント自身で考えて目標を立てられるようにしていきましょう。

目標の設定をせずに先に進めてしまうと、セッションの途中で「もともと、何がしたかったのか」を見失うことにもなりかねないため注意してください。

現状を把握する

目標を設定した後は、「その目標に向かってどんなことをするのがいいのか」「今目標としているところのどのあたりにいるのか」などを把握するようにしましょう。

現状把握することで、何をすればいいのかが明確になりやすく、何ができていて何ができていないのかを把握できます。

また、現状を把握する際は、リソースの確認をしておきましょう。リソースとは、財産や資産のことです。コーチングで使われるリソースは、クライアントが持っている知識や考え方、経験や人脈などを指し、目標達成のために必要とされるもの全てをいいます。

リソースはクライアント自身で気づいていない部分もあるため、コーチングをしていく中で、クライアントが気づけるよう促していくことも重要です。

プロセスを設定する

続いて、目標に至るプロセス(物事を進める手順)を設定します。クライアントが現状の状態から目標の状態になれるよう、より効率よく考え、効果的に行動ができるようなプロセスを設定していきましょう。

そして、目標を達成するためのプロセスをどのように考え、どのように行動するかをクライアントが自分で決めるためのサポートをしていきます。

最初のアクションを決定する

これまでの流れを基盤とし、最初のアクションを決定します。決めた目標と、把握した現状の差を埋めていけるように、一つずつアクションを決めていきましょう。

アクションを具体的に決定しておくと、はじめの一歩を踏み出しやすくなり、行動に移しやすくなります。

具体的には、「いつ?」「どこで?」「だれが?」「何を?」「どのように?」を使ってアクションの決定を促します。そうすることでクライアントが最初に取るべき行動が、分かりやすくなります。

ただし、あくまでもクライアント本人が答えを導き出せる問いかけをしていきましょう。

関連記事:コーチングの正しいやり方とは?4つの基本ステップと大切な要素を解説

コーチングのテーマを決める際の注意点

コーチングのテーマを決める際は、以下のように注意しておきたい点がいくつかあります。

  • テーマにこだわりすぎなくても良い
  • コーチングのセッション中にテーマが変わることもある
  • コーチとの対話によってテーマが引き出される

テーマにこだわりすぎなくても良い

テーマの重要性について前述しましたが、テーマにこだわらなくとも、セッションを進めていく中で、クライアント自身も予想していなかった「気づき」が見つかるケースも多々あります。

例えば、「今日こんなことがあって嬉しかった」という日常的な会話から、テーマを決めていく場合もあります。

テーマを決めることは重要ですが、テーマにこだわりすぎてしまうと、クライアントがセッションのたびに「テーマ決め」に対する負担を感じてしまうことにもなりかねません。

テーマにこだわりすぎず、今日あったことや今思っていることなどを、日常会話をしていく中で導き出せるよう話を進めていくことも大切です。

コーチングのセッション中にテーマが変わることもある

もともと決めていたテーマに沿ってコーチングを進めていても、クライアントの話を聞いていくうちに、「本当に重要だと感じていることが他にある」と考えられた場合、コーチから「テーマを変更しませんか?」を提案する場合もあります。

テーマが変わりそうな時は、無理に話を進めず、気づいたことをコーチから提案してみましょう。テーマに縛られることなく、セッションをしていく中でテーマ変えも検討していくといいでしょう。

コーチとの対話によってテーマが引き出される

セッションを始める際、テーマがすぐに決まる場合とそうではない場合があります。

そんな時は、クライアントと雑談をしていきましょう。その中で、コーチが気づいたことをクライアントに投げかけると、テーマが見つかるかもしれません。

セッションを進めていく中で、クライアントが気にかかっていることや思っていることをうまく引き出せれば、クライアントが満足できるテーマを導き出せるようになります。

セッションにあわせて柔軟にテーマを決めましょう

コーチングを行う際、テーマがあることで目標に向かうためのプロセスを立てやすくなるのと同時に、効率的に進めることが可能となるため、テーマの必要性は大きいと考えられます。

しかしながら、テーマを決めること自体が負担になってコーチングを受けられなくなるケースや、セッションを「無駄な時間だった」と思わせてしまうようなことがあってはいけません。

そのため、コーチングをする際はセッションごとにクライアントの気持ちをうまく引き出しながら、柔軟にテーマを決めていくように心がけましょう。